既に削除されていますが、日本年金機構さんのツイートが物議をかもしています。
個人的はそこまで目くじら立てる程ではないと思うのですけれども、面白そうだったので理由について考えてみました。
お硬い組織がちょっと軽いツイートをすると親近感が湧いて好感度上がったりすることがあります。
心理学で言うところのゲインロス効果というものですが、日本年金機構さんには効果が無かったようです。
やらかしちゃった年金機構さんのツイートとは対象的に、好印象で受け入れられたツイートとして昨年末の海上自衛隊さんの挨拶があります。
ゲインロス効果とは
獲得-損失効果とも言います。
人が他者から対人的評価(褒められたり貶されたり)を受けた場合、最初の評価→あとの評価というように変化が生じると、評価の一貫性に影響を与えること。
「クラスの不良が捨て猫を拾うと『実は優しい!』」
と認識が変化するアレです。要はギャップ萌えです。
ステレオタイプな評価を崩すには効果的
ゲインロス効果は、ステレオタイプな評価を崩すには効果的です。
ただし、相手の受け取り方が分からない(顔色が見えない)状態では、正直使いどころが難しいです。
昨年末の海上自衛隊さんの場合、普段任務の状況が見えない自衛隊に親近感を沸かせ、ちょっとしたユーモアもあり好感を持つ人が多かったようです。
私達一般国民は守ってもらっている立場ですから「こちらこそありがとうございます」と素直に思えます。
レーダー照射問題の最中というタイミングも巧かったと思います。
一方の日本年金機構さんのツイートは、ターゲットが「若者(新社会人)」ということもあり、若者言葉(既に古い気もしますが)が使われています。
一般的に若者言葉は「軽い」印象を与えます。
話し言葉であり、書き言葉ではありませんから公的機関が広報に用いる言葉遣いとしては不適切と受け取られるのは仕方のないことです。
そもそも印象が良くない
言葉遣い以前に、日本年金機構さんの一般的な印象が良くないことがゲインロス効果が見込めなかった要因かもしれません。
つまり、ステレオタイプとしての印象(お硬いお役所機構)というのではなく日本年金機構としての個別の印象によるネガティブハロー効果です。
ハロー効果
無数の情報を迅速に判断するために使われるもので、先入観や偏見(認知バイアス)の一種です。
ポジティブハロー効果
「東大卒=頭脳明晰、高収入」、「帰国子女=語学が堪能」といった、一部の情報だけでポジティブな判断を下し、全体に拡大解釈することを言います。
ネガティブハロー効果
ポジティブハロー効果とは逆に、「派遣社員=低収入、不安定」や、先に上げた「若者言葉=軽い」といった、一部の情報だけでネアティブな判断を下し、全体に拡大解釈することを言います。
これらは、人類が今日まで生き延びてくる間、一瞬の判断が生死を分ける時代に獲得された能力といわれています。
日本年金機構さんの数々の不祥事
日本年金機構さんは社会保険庁改革関連法の制定を受けて2010年1月1日に発足した組織です。
社会保険庁時代の杜撰な年金記録の管理による「消えた年金問題」は今でも記憶に新しい事件です。
更に、日本年金機構さんは設立以来、わずか9年で6件の不祥事が発覚しています。
ゲインロス効果の土台となるステレオタイプの先入観ではなく、ネガティブハロー効果による先入観で判断されやすい状況だったと言えます。
加えて日本人は「お金に関することで巫山戯るのを好まない」気風であることも大きかったでしょう。
オフザケ、軽い言葉から杜撰な管理を連想した人たちが多く拒否感を示したのではないかと思われます。
ゲインロス効果は使い方によっては強い武器になります。
ですが、客観的に自分(組織)がどう見られているかを認識出来ていないと逆効果になります。
親近感を持ってもらおうと思っても、単におちゃらければ良いというわけでは無いということのようです。