昨年くらいからでしょうか、韓国経済が危ないという報道が何度か出ています。
かと思えば、ジム・ロジャーズさんは「韓国買い」を楽観的に薦めます。
どちらがオオカミ少年なのでしょうか?
実は今が正念場かもしれないよ、というのをチャートを使って見ていこうと思います。
今回は主に、韓国経済の貿易依存率と為替のお話です。
(ちなみにジム・ロジャーズさんは「買うのが早すぎる」「買え買え言って、自分はさっさと売っていた」ことで有名です)
先にお断りしておきますが、私は普段ウォンもKOSPI(韓国総合株価指数)もどちらもチャートをチェックしていません。
韓国は貿易依存国
今更言うまでもないと思いますが、韓国はGDPに占める輸出の割合が多い国です。
2018年の統計では名目GDP 1兆6,194億ドルのうち6,055億ドルが輸出によるものです。
その率、およそ 37% です。
これを輸入額(5,352億ドル)も含めた貿易依存度*3で見ると、70.3% にまで跳ね上がります。
※この試算は私の手元にある2018年のデータを元に算出したものです。 Global Noteさんによると2017年の韓国の貿易依存度は67.6%です。 ちなみに、同データによる日本の貿易依存度は27.3%です。 韓国を「貿易依存型」、日本を「内需型」と呼ぶのはこの数値の差によります。
「貿易依存度が高い」ということは何を意味しているのかですが、簡単に言ってしまうと自国の産業だけで自給自足ができません。
日本だってもちろんそうなのですが、ちょっとレベルが違うんです。
それが現れているのが上で出した貿易依存率です。
例えば、韓国の場合、主力産業は半導体です。
ですが半導体を製造するための精密機械や、洗浄に必須のフッ素化合物は日本からの輸入で賄っています。国内産業として育っていません。
半導体製品を輸出するには材料や資材を日本から輸入する必要があり、国内の主力産業の貿易依存率が高いということです。
これを日本に置き換えて考えてみると、主力産業である自動車の部品や自動車を組み立てるための機器を全て輸入しているようなもの、というと分かりやすいでしょうか。
実際は殆どの部品は国内の下請け工場で作られています。
材料となる鉄鉱石などは輸入ですが、それを国内の製鉄会社が加工して製品とし、更に下請け業が自動車の部品へと加工しています。
間で発生するマージンを国内の製造業が取れるようになっています。
一方、精密機械もフッ素化合物も輸入する韓国は、利益を得られるのは半導体メーカーだけです。
国内で創出される利益が最大化されない構造的な弱さを抱えているということです。
貿易依存率が高いとなにが問題になるのか
国内産業が育たない、利益が最大化されない、ということも問題ですが、ここでは為替による影響にポイントを当ててみようと思います。
なぜなら、為替は貿易に直接的に影響を与えうるファクターだからです。
現在最強の通貨はドル(米ドル)です。
ドルは基軸通貨と呼ばれ、各国通貨の価値の基準になります。
全ての通貨はドルに対しての価値が量られ、それを元に相対取引が行われています。
つまり、ドルを介さない直接取引(例えば、ユーロ対円など)は行なえない、ということです。
更に、貿易を行う際の取引通貨としての役割も担います。
※米ドル以外にも決済通貨として利用可能なものがあります。 これらは広義の意味でハードカレンシーと呼ばれ、代表的なものとして、ユーロ/ポンド/円/スイスフラン/カナダドルなどがこれに当たります。 明確な基準は定められていませんが、国際銀行での取引が可能なこと、一定数の流通量があることなど、国際的に信用度が高い通貨がこれに当たります。
ウォンがドルに対して価値が上下した場合の影響は次のようなものです。
例えば、韓国国内で1000ウォンの製品を海外に輸出するとします。
為替レートが1ドル1000ウォンのときは1ドルになります。
これがウォン高/ドル安に動いて、1ドル800ウォンになると1000ウォンの製品は1ドル25セントになります。(実質値上がり)
逆に、ウォン安/ドル高に動いて、1ドル1500ウォンになると1000ウォンの製品は約67セントです。(実質値下がり)
ウォン高/ドル安のときは、同じ製品でもドルでの価格が高くなるので、国際的な競争力が低下します。
これは製品輸出だけでなく、橋やダムなどの建設受託にも響きます。もちろん造船もです。
逆に輸入は有利になるのですが、先に見たように韓国のGDPに占める輸出の割合はとても大きいです。
ウォン安/ドル高になると、輸出は有利になりますが輸入に頼る材料費は高騰し、更に売上単価は低くなるので企業の収益としては落ち込みます。
巨大な内需型経済の日本より、為替の影響はより深刻と言えます。
ウォンの下落は当然の動きだった。でも本当に怖いのはこの先。
次にチャートを見てみます。
これは日足です。ローソク足(箱グラフ)1つで1日分の値動きを表しています。
赤が陽線(上昇)で緑が陰線(下降)です。
4月24日の大きな上昇(右から3本目)を「マイナス成長率の発表によるショック」という報道をよく見かけますが、実はテクニカル的には教科書通りの動きであり、上に行くのが当然の曲面です。
ちょっとだけ説明します。(細かなテクニカルルールは省きます。興味のある人は調べてみてください)
まず、青い水平ライン(上側)ですが、これより価格が上にあるときは上方向が優位です。
ピンクの「!」が出たところで斜めラインが確定します。
これは上昇トレンドラインと言って、チャートが上に上がる時の踏み台になります。
ドル/ウォンを取引している人たちは、この「!」のあたりにチャートが来た時に既に目線を上に切り替えていたはずです。
そして考えることは「ラインに近づくまで待つ」です。
次いで赤の「●!」の大きな陽線を見てチャートが反発したと確認します。
※一度ラインを割り込んでいますが、青の破線+実線のラインが割られるまで、上優位です。
「●!」は木曜日なので、週末に新規ポジションを取ることを避けて翌週月曜日の「↑」のローソク足が、前日の高値を超えた辺りが、鉄板のエントリーポイントになります。
※更に慎重派は黒の破線を抜けてから追随します。
次に月足です。これはグラフ一つが一月の動きを表します。
青い斜めのラインを抜けているのが分かるでしょうか。
ここを抜けると、次は緑のラインまで斜めのラインがありません。
この緑のラインは1997年12月と2009年3月の高値を結んで作られています。
それぞれ、何があったかご記憶でしょうか?
1997年というのはアジア通貨危機の年です。
7月にタイで始まり、韓国は11月にIMFに救済を申し入れています。
このカチ上げはその影響です。
12月の足が大きな上ヒゲを付けながら止まったのは12月24日にIMFと合意がなされ、更に翌年の1998年に落ち付いている(ボラは大きいですが)のは、日米欧が韓国が抱えていた民間短期債務の返済繰り延べ(借金返済の期日延長)に合意したことでデフォルトを回避できる見通しが立ったためです。
次の2009年の高値は韓国通貨危機の年です。
2007年のサブプライムローン問題に端を発した世界同時不況と、2008年のリーマンショックの影響で、2008年から2009年にかけてウォンは大幅下落しました。
これが止まったのは米国・中国・日本がスワップにより外貨を融通し、それによる為替介入を行った(無理やり止めた)ためです。
現在、韓国はドルベースの通貨スワップがない
現在、テクニカル的には再びアジア通貨危機・韓国通貨危機の際の高値ラインを目指そうとしています。
そしてファンダメンタルズもそれを後押している状態です。
そんな中、たびたび報道されていますのでご承知とは思いますが、韓国は現在ドルベースの通貨スワップ協定を結んでいません。
2015年まで日本と結んでいましたが現在は失効しています。
そんな状態で、このラインが抜かれると大変なことになります。
2009年3月の高値まで、目立つ抵抗線が無いのです。ノンストップで吹っ飛ぶかもしれません。
ウォン安/ドル高に振れるということは、ウォンが売られ、ドルが買われる状態であり、ドル不足になります。
他の通貨とのスワップでは役に立ちません。
必要なのはドルです。
この緑のラインは強く意識されているはずなので、当然投機筋にも狙われます。
一気に抜ければ、損切り注文を巻き込んでパニックになるかもしれません。
※「仕掛け」と呼ばれる大量建玉による強襲を掛けてくるので、個人投資家などは静観が最も賢い選択。
韓国政府は為替介入を余儀なくされるでしょうが、そのときに撃てる弾(ドル)が一体どれだけあるのでしょう。