オキシトシンとは「愛情ホルモン」と呼ばれるもので、陣痛促進剤としても使用されます。
検索エンジンで調べてみると、「ストレスを消し多幸感を与えてくる」とか「美肌&ダイエットに効く」とか、良い面がアピールされていますが、実はマイナス面もあります。
それは、自分が所属するグループへの優先度が増す、というものです。
オキシトシンの働き
オキシトシンは、脳の視床下部で生成されるホルモンです。
これが大量に血中に放出されると、心臓などの器官が沈静化します。
オキシトシンは親子の絆や信頼、愛情といった感情、グループ人s機などの社会行動にも関わってきます。
ちなみに、犬と触れ合うことでも分泌されると言われています。
グループ認識などの社会的行動
エノスセントリック(自民族中心主義)という考え方があります。
文字通り、自分の所属する民族を第一に考えるもので、オキシトシンによってこの傾向が増す、という研究結果があります。
オキシトシンが与える影響を調べる実験
オキシトシンが人の行動に対してどのような影響を与えるかを確認するため、アムステルダム大学のDe Dreu教授らのチームは、オランダ人男性(280名)を60〜70人ずつのグループに分け、ある実験を行いました。
5種類ある実験は、いずれも同じグループの仲間(同じオランダ人)に対する場合と、他のグループ(アラブ人やドイツ人に対する場合)とで優遇や偏見を明らかにする目的で考案されたものです。
実験にはモラルジレンマというモデルが使われました。
例えば、こんな問題です。
「列車が5人に向かって走ってきます。 何もしなければ5人とも死にます。
でも、あなたが目の前のスイッチを押せば、列車は向きを変えて、その先で1人が死ぬだけで済みます。 あなたはスイッチを押しますか?」
どちらを選ぶにしても、誰かを殺すことになります。
そのためモラルジレンマと呼ばれます。
今回の実験で特徴的なのは、このときターゲットに標準的な名前を割り当てたことです。
オランダ風(Dirk、Peter)やアラブ風(Ahmed、Youssef)ドイツ風(Markus、Helmut)などです。
結果、オキシトシンを吸引したグループはグループ外(オランダ風以外の名前)のメンバーを犠牲にする傾向が大きくなったという実験結果が得られました。
「愛情ホルモン」と聞くと「分け隔てなく」「大らかな」というイメージを勝手に持ってしまっていましたが、逆に偏向性が増すようです。
よくよく考えてみれば当然ですね、母親は我が子を何に変えても守ろうとするものです。
それに大きな影響を与えるのがオキシトシンなのですから。
オキシトシンは、他にも自分のキライな人が何かに成功した場合には嫉妬をかきたて、キライな人に自分が勝った場合には得意な気持ちにさせる、という効果もあるそうです。