徴用工問題、仲裁委員会の話

選挙での票集めだ、という言説も一部でありますが、決められた手順を着実に守りながら進んでいることは確かです。
このタイミングを選んだのは、G20前に進展させたかったことと、選挙が念頭にあるのはもちろんでしょう。
でも、やるべきことを粛々と進めているのは事実として認識しましょう。

(1)二国間協議(韓国政府応じず)
  ↓
(2)請求権協定による仲裁委員会要請(←今ココ)
  ↓
(3)第三国による仲裁委員会発足
  ↓
(4)仲裁委員会による決定
  ↓
(5)(場合によっては)国際司法裁判所へ提訴


ざっくりとこのような流れになっています。


請求権協定による仲裁委員会

正確に言うと「財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定」という長い名前です。「日韓請求権並びに経済協力協定」 と略されます。
1965年の日韓基本条約(日本国と大韓民国との間の基本関係に関する条約)の付随協約の一つです。

仲裁委員会については第三条に規定されています。

第三条 両国はこの協定の解釈及び実施に関する紛争は外交で解決し、解決しない場合は仲裁委員会の決定に服する
・第三条
 1.この協定の解釈及び実施に関する両締約国の紛争は、まず、外交上の経路を通じて解決するものとする。
 2.1の規定により解決することができなかつた紛争は、いずれか一方の締約国の政府が他方の締約国の政府から紛争の仲裁を要請する公文を受領した日から三十日の期間内に各締約国政府が任命する各一人の仲裁委員と、こうして選定された二人の仲裁委員が当該期間の後の三十日の期間内に合意する第三の仲裁委員又は当該期間内にその二人の仲裁委員が合意する第三国の政府が指名する第三の仲裁委員との三人の仲裁委員からなる仲裁委員会に決定のため付託するものとする。ただし、第三の仲裁委員は、両締約国のうちいずれかの国民であつてはならない。
 3.いずれか一方の締約国の政府が該当期間内に仲裁委員を任命しなかったとき、又は第三の仲裁委員若しくは第三国について当該期間内に合意されなかったときは、仲裁委員会は、両締約国政府のそれぞれが三十日の期間内に選定する国の政府が指名する各一人の仲裁委員とそれらの政府が協議により決定する第三国の政府が指定する第三の仲裁委員をもって構成されるものとする。
 4.両締約国政府は、この条の規定に基づく仲裁委員会の決定に服するものとする。


仲裁委員にも段階があります。
長々と分かりにくく書いてありますが、要するに日本と韓国が一ヶ月以内に仲裁委員を一人ずつ選んで、その二人が更に一ヶ月以内に第三国に依頼して仲裁委員会を立ち上げてもらうという流れです。
仲裁委員会の決定には強制力があります。


韓国側は政府の介入を避け、紛争であることから耳目をそらし続けていますが、日本が公文で通知されすれば、韓国の了承がなくてもこのフェーズに進めます。

G20サミットが6月28日から開かれますから、韓国側はその前には仲裁員を一名選定しなくてはいけません。
これをもって「進展」と見なせば首脳会談の可能性があります。


韓国は動かず?

時事通信さんの記事によると「韓国政府は(仲裁要請にも)動かないだろう」との見方を示す専門家の意見が紹介されています。

韓国には日韓基本条約そのものを「無効」とする考え方があります。併合時代を違法とする考えの延長で出てきたものです。
そうなると当然、請求権協定による仲裁委員会の要請に応じる義務もないわけです。


朝日新聞さんの報道で、韓国外交部の関係者が日本側に「仲裁手続に入ると国民感情を刺激して、両国関係が制御不能状態になるだろう」と伝えたそうです。(韓国メディアが引用しているのですが、ソース記事が分かりません)


ここまで話が進んで何もしない方が制御不能になる、というかもはや制御する気が無いとしか思えません。