ヒグマの異常な捕食行動の話

スペインとフランスのちょうど国境に位置するピレネー山脈で、ヒグマが馬を殺す「異常な」捕食行動が確認されています。
ヒグマの体格は300-500kgと個体差が大きいのですが、内陸のクマは300kg程度であることが多いようです。
仮に500kgまで大型化したとしても、自分とほぼ同じ重量の馬は通常であれば捕食対象になりません。


この地方に生息していたヒグマは狩猟による個体数の減少が深刻で、1995年には5頭にまで減少しました。
そのため、1996年からスロベニアから輸入したヒグマを「放獣」する形で数を維持しており、現在49頭が生息しています。


フランス側では、昨年の9月に新たに2頭のヒグマが放獣されるにあたって、現地の羊農家が抗議デモを行っていることが報道されていました。
羊がヒグマに襲われるからです。
暖冬により、クマが冬眠しないことをあって被害が深刻なようです。

「クマが居なくなっても誰も困らない」とする現地の人々と、「クマと共生を」と理解を求める政府との間で強い摩擦が生じています。
生活に直結する問題である現地住民と、動物保護倫理という大局的な観点で地元に犠牲を強いる(ように見える)中央との温度差が大きいようです。


今回、馬を捕食する異常行動を見せた固体は「Goiat(ゴイアット)」と名付けられた推定13〜4歳の固体だと考えられています。
放獣されたヒグマはGPS装置を付けていて、家畜が襲われた場所でGoiatの信号が探知されています。

この固体は2016年にスロベニアから連れて来られ、昨年から既に「駆除」の検討がされていたそうです。
今の所は駆除には消極的で、驚かせたり怖がらせたりすることで人の生活圏に近づかないよう牽制する方向で動いているようです。


人間の都合で勝手に連れてきて、人間の都合で勝手に駆除するって、なんとも勝手な話です。
自然動物の保護活動って一体誰のために行っているのか、何のために行っているのか、改めて考えさせられます。

ともあれ、牽制作戦が上手く行くことを願います。