ゲーム「依存症」は要治療の話

WHO(世界保健機構)の総会で、俗に言う「ゲーム依存症」を「ゲーム障害」として疾病認定され、同機構が指定する疾病の国際統計分類の第11回改正版(ICD-11)に正式に追加されることになりました。

草案は昨年の6月に作成され、「ゲーム障害(Gaming disorder)」は既にその段階で精神疾病として認定推奨されていました。
今月25日の総会で加盟国の採択により、この草案が支持されたことで正式に認定され、2022年1月1日に発効されることになります。
※ICDの改正は「草案→加盟国採択→発効」の流れを取ります。


ゲーム依存の定義

「依存症」というとアルコール依存症ギャンブル依存症を連想しますので、最近のソーシャルゲームに代表されるような「課金ガチャ」への重課金を想像しますが、定義はそれだけに留まりません。


ICD-11の説明をザックリ意訳すると、

  1. ゲームが他の日常活動よりも優先される
  2. 悪影響が出たとしても止められない、またはよりエスカレートする
  3. 個人生活、家族生活、社会生活など、ありとあらゆる部分に重大な影響を与える


こんな感じになります。
更に、この行動パターンは「連続的、または一時的でありかつ再発的」…つまり持続性があり、少なくとも12ヶ月(重度の場合は期間が短縮される可能性あり)は症状が継続していることが条件として挙げられます。

ということは、発売を待ちわびていた新作タイトルを、クリアするまでブッ通しでプレイし続ける、という程度では認められないということです。
常時その状態ならともかく、年に1本2本あるかないか、ならドラマにハマって徹夜でイッキ観してしまうようなのと変わりませんからね。


韓国では反発も

韓国では文化体育観光部という政府機関がゲーム産業を主管しています。
そこが「科学的検証もなく下された決定だ」としてゲーム依存症を疾病とすることに反対の立場のようです。(参考記事
2022年に発効されたとしても、韓国国内で適用するかは「社会的合意が必要」としています。


日本では科学的な研究調査が開始

「ゲーム依存症」が科学的根拠が薄い、というのは確かにそうです。
世界中で何百万人ものゲーマーが居るのに、その中でゲーム障害と診断される率は極めて低いです。
こうした状態にも関わらず、今回正式に認定されたのは「このような状態が存在する」という注意喚起の意味と、適切な援助が受けられる環境作りのため、とWHOのポツニャフ博士がCNNのインタビューで述べています。

乱暴な言い方をすると、
「ゲーム障害を証明する科学的データ、臨床データは存在しない。
 しかし、ゲームにのめり込み過ぎて社会生活を崩壊させ苦しんでいる人たちが極稀にだが居るのは事実だ。
 そういった人たちを援助するためには、まず『ゲーム障害』という疾病を作ってしまった方が手っとり早い」

ということです。


「ゲーム障害」が正式に認定されたことを受けて日本ではCESA、日本オンラインゲーム協会、モバイル・コンテンツ・フォーラム日本eスポーツ連合の4団体が共同で調査を行うことを発表しました。(参考記事

外部の専門家による研究会へ調査研究を委託することで公正中立を維持するとのことです。
これにより、科学的な調査研究に基づいた対策を通じて、健全なゲーム産業の発展に取り組むと表明しています。

WHOがやらなかった科学的根拠の裏付けを自分たちでやるってことですね。