集合体恐怖症と新型Mac Proの話

集合体恐怖症(Tryphobia;トライフォビア)とは、無数の穴や突起物、反復パターンの集合体に嫌悪感を抱くことを言います。
2000年代に入ってからインターネット上で広がったもので、学術的な裏付けのあるものではありませんでした。
心理学の面からアプローチがあったのはつい最近で、イギリスの大学の心理学者が信憑性について研究を初めました。


集合体恐怖症は病気ではなく自然な嫌悪感

軽度の嫌悪感からパニック発作にいたるまで程度の差はそれぞれですが、成人の15%(男性:11%、女性:18%)は何らかの反応を示すという査読研究が発表されています。

かく言う私も、軽度ですが集合体恐怖症のきらいがあります。
例えば、チーズに空いた穴とか、取り除いたスイカの種とか…パっと見では平気なのですが、「穴」や「集合体」に意識が向くとゾワッとなります。
酷いときは軽く吐き気が出たり。


初めに気がついたのは、以前の職場でちょっと大規模な掃除をしていたときのこと。
片付けていた机は業務の都合上、大量のホッチキスを「外す」必要がある作業机でした。
机上に置かれた固定電話機を何気にひっくり返してみると、スピーカー部分*1の磁石周辺に隙間なくみっしりと「ホッチキスの芯」がまとわりついていました。

あのときの気持ち悪さはなんとも表現できません。
それ以来、ちょっと敏感になったような気がします。
具体的にはこんな画像(閲覧注意)が苦手です。

不思議なもので、嫌悪感を抱くならじっくり見なければ良いのですが、なぜか観察してしまうのです。
後述するように、危険を回避するために注意がそちらに向いてしまうのかもしれません。


仮説は2つ

1つ目の仮説は2013年にイギリスのエセックス大学の心理学者2名が発表した論文の説です。

実験参加者286名が直感的な嫌悪感を抱いた画像を分析した結果、境目がくっきりしている縞・斑点・穴などが隙間なく連続的に配置されたパターンという特徴が浮かび上がってきました。
このような模様の配置は、有毒動物に多くみられることから、集合体恐怖症は有毒なものを避ける能力の名残ではないかという推測がされています。


2つ目の仮説は、同じくイギリスのケント大学の研究チームが発表したものです。

有機体に空いた穴や小さいブツブツは感染症を連想させます。
嫌悪感は感染症や病原体を回避するのに役立つことが分かっていますから、こうした画像に対する反応は病気を回避する反応と考えられるというものです。


どちらの説も共通しているのは、集合体恐怖症は病気ではなく、防衛反応の名残であり、それが嫌悪感として現れているというものです。
理性では、害のない「チーズに空いた穴」と分かっていても、危機回避信号は理性より伝達が素早いので「危険」という警告が先に発せられるためということです。

先に述べたように、気持ち悪いと思ってもついつい観察してしまうのは、直感が「危険」と警告した後に理性が「無害」と伝えてくるので、見極めようと再度じっくり見て、また直感が「危険」、理性が「無害」という「危険」と「無害」を行ったり来たりするせいかもしれません。


新型Mac Proのデザイン

で、今回プレスリリースで発表された新型Mac Proのデザインです。

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引きで見た時に嫌な予感がしました。
アップで見て、やっぱりダメでした。

意識を逸らそうとすればするほど、「穴」に注意が向いてしまいます。
ただのメッシュなら平気なのに、「穴」が二重になっていて「何かが詰まってるように見える」のがダメです。
上の蓮のリンク画像ほどではありませんが、心臓がドキドキして落ち着かないです。多分、恋じゃありません。

ネット上でも別の理由(おろし金みたい…など)であまりデザインの評判がよろしく無いようですし、見直してもらえませんかねぇ…。
このままだと、Appleのサイトを見る度に気を強く持って望まないといけなくなりそうです。


*1:本体にスピーカーボタンが付いている一般事務用のもの