Huaweiの従業員は人民軍に協力的な話

Huaweiは民間企業であり、中国政府に管理されていない、という主旨の発言をHuawei幹部がしたことこがあります。
ですが、Huaweiは社内に中国共産党組織(党委)を設置していると認めています。
党委は中国国内の民間企業のおよそ70%が社内に置いており、共産党員を社内に常駐させています。*1
建前として「業務活動は指導しない」ということになっていますが、経営幹部が党委を兼ねていることも多く、企業に対してかなりの影響力を持っていると思われます。
党委を通じて当局の「支配」が民間企業に及んでいると見られています。

中国の言う「民間企業」と日本で言う「民間企業」の認識にはどうやらかなり差異があるようです。


さて、そんなHuaweiですが、複数の従業員が人民軍と共同研究を行っていたことが分かりました。


実際に見つかった論文の研究内容は、AIや無線通信などの分野で10年以上前から続いていたそうです。
具体的な内容は「動画コメントから感情を読み取る」「衛星画像から地理座標を収集・分析する」などです。


ブルームバーグの報道ではこれらを 「ファーウェイのスタッフが軍事・安全保障への応用研究でいかに人民軍に協力しているのかを示す公表済み研究の一部にすぎない」 としています。

見つかった論文は全部で10件でした。Huaweiの従業員は18万人ほどです。
軍事・安全保障に関わる研究であれば本来機密扱いになるはずですから、見えないところでもっとたくさんの研究プロジェクトが動いていてもおかしくないという意味です。

Huaweiはあくまで会社としてではなく「従業員が個人的に参加した」と主張していますが、論文の冒頭にはHuaweiのロゴが入っていたそうですし、著者はわざわざ論文内で従業員という身分を明かしています。


軍と民間企業が共同研究を行うこと自体はさして珍しくありません。
ですから、本来であれば共同研究(これだけ)で何が言えるわけではありません。

が、名指しで「スパイ企業」呼ばわりされている上に、Huaweiは軍との繋がりを度々否定していました。
従業員の個人的研究であり、会社として個人活動を認知していない、という立場だったとしても現状ではマイナスイメージです。

「会社としては軍に協力しない。でも、従業員が個人でやったことなら会社は関与しない」となると、どうとでも言い逃れできますしね。
それに研究プロジェクトに参加した従業員を通じて、Huaweiの技術や企業機密が軍に漏れても関与しない、と言っているようにも受け取れます。


個人活動とは言え、軍と共同研究を行う、更に個人活動で書いた論文にHuaweiのロゴを使用する、Huaweiの従業員の立場を明記(利用)……あくまで主観ですけれど、こういうモラルの人であれば「(Huawei曰く)個人研究に必要なデータを収集するバックドアを仕掛ける」くらいの事はするのではないか、という疑いが捨てきれません。


*1:2017年頃から外資系企業にも党委設置の圧力が強くなってきており、習さんは設置率99%を目指しているとか。
サムスンノキアの中国事業所は党委を設置している。