中国国営企業のメモリ事業の話

中国では数年前から半導体国産化を目指して力を入れていました。
清華大学習近平さんの出身大学)が出資・運営する清華紫光グループは、過去に東芝のメモリ部門の買収や米国マイクロンの買収などを提案していましたが、日本政府、米国政府の介入で失敗しています。
一から国内で技術者を育成するには時間が掛かります。
米中貿易摩擦が激化する中、半導体の早期国産化の重要性は高まっているわけですが、最新技術の確保すら覚束ない状態で、なかなか思うようにいっていないようです。


現在、清華紫光グループの子会社である長江メモリ(YMTC)が主にNAND型フラッシュメモリ*1のみを生産しており、DRAMメモリ*2生産能力はありません。
ですが、中央日報さんの韓国語記事で、そのYMTCが64層3D NAND型フラッシュメモリ*3を予定通り年内に量産すると発表したことに触れて、DRAMに比べて難度の高いNAND型量産能力を公言」「DRAM量産に大きな困難はないと見ている」 というように報じています。

なんどのたかいなんどがた…

確か、予定通り年内量産の発表があったのは5月だったかと思うのですが…この時期にわざわざ「DRAM生産能力」に絡めて報道したのはなぜなんでしょう。
邪推すると、日本からの輸出規制で韓国企業が苦戦しているスキを突かれる、と言いたいのかもしれません。


ちなみに、YMTCは既に一部の顧客にはサンプル品を提供しているそうです。
更には2020年には128層の生産を計画しているとか。


ところで、この記事では「YMTCの技術力ならDRAMが作れるかもしれない」的な見方がされていますが、中国企業ですので役割分担が結構しっかりしているみたいです。
半導体の担当は福建晉華(JHICC)という企業でしたが、台湾企業の聯華電子(UMC)から技術移転を受ける際、マイクロンのDRAM技術を盗み出したとして訴えられています。
これによって工場の立ち上げが出来す、DRAM開発が事実上頓挫している状態です。


更にもう一つ、CXMTという企業は特殊用途のDRAM開発を担当しています。こちらは外国企業の特許侵害の可能性が高く、国際法で定められた知的財産権の取得という壁に阻まれています。


これで分かることは、DRAMメモリを専門に担当していた2社が相次いで「外国企業の技術」に依存しなければならないのが中国の現状ということです。
侮るわけではありませんが…。

64層3D NAND型フラッシュメモリの量産は確かに高い技術力を持っていることの証左であることは間違いありません。
でもそれとDRAM開発技術を混同して考えるのは少し違うかな、という感じです。

中国は「中国製造2025」を推進しており、2025年には国内市場の半導体内製化率を70%に引き上げる目標を掲げています。
2018年の時点でまだ内製率は15.5%です。2013年の時点では12.6%でした。
5年で2.9%しか増えていません。単純計算年率0.58%増です。
このままのペースだと2025年にはまだ20%に届きません。

出来るならとっくにやっているでしょう。


*1:一般的なUSBフラッシュメモリ、SDカード、SSDなどの形式。

*2:PCなどに使用される半導体メモリ。

*3:メモリセルの積層数が64層あり、1つのメモリセルに3bitの情報を記録する。