「平和経済」とは何なのか、な話

5日にムンさんが「平和経済が実現されれば一気に日本経済に追いつくことができる」と述べました。
発言の中で「平和経済」が何を意味するのか、具体的な部分は触れられていません。


中央日報が過去のムンさんの発言から「平和経済」に関する部分を一部抜粋しています。また、「趙甲濟(チェ・ガプジェ)ドットコム」ではバンダービルドさんも>「ムン大統領の『平和の経済』論の解説」という記事を挙げています。


中央日報による「平和経済」の解説

中央日報記事によると、ムンさんが「平和経済」と同様の概念を最初に提示したのは2015年8月16日に記者会見で「韓半島経済地図構想」を発表したときだそうです。


これによると、韓国経済成長の原動力を「南北経済共同体」を介して確保するというのが「平和経済」の一番核になる理念のようです。

記事ではムンさんの過去の発言から「平和経済」とその理念に沿った発言と思われる部分が紹介されてます。

「分断に閉じ込められている私たちの経済領域を北朝鮮に、大陸に拡大することこそ光復100年を迎える大韓民国の最初の夢」
「南北統一がない場合でも、最初に経済共同体を成した場合、国民所得5万ドル時代に向かっていくことができる」
(2015年8月16日 韓半島経済地図構想)


「完全な非核化と韓半島に平和が定着してこそ、本格的な経済協力が行われることができる。平和経済、経済共同体の夢を実現したとき、私達の経済は新たに飛躍することができる」
(2018年8月15日 光復節祝辞)


「新韓半島体制は理念と陣営の時代を終えた、新しい経済協力体制」
朝鮮半島で『平和の経済』の時代を開いていく」
(2019年3月1日 3.1節祝辞)


「韓国経済は、外国人投資企業に広く開かれている」
「特に韓半島の平和経済は、世界で最も魅力的な市場になるだろう。平和経済の無限の可能性に注目していただきたい」
(2019年3月 外国人投資企業との対話)


「平和が経済発展につながり、経済が平和をさらに強固にする。韓半島の平和経済時代は、すべての利益になる」
韓半島はもちろん、北東アジアと世界経済の新たな成長動力となると確信している」
(2019年6月 G20首脳会議)


平和、大いに結構。
ですが、平和イデオロギーというものは、極めて観念的なものであり、非現実的・理想主義的なものです。

人間は想像し得ることの殆どを実現させる能力があります。ただしそれは、「具体的な想像を伴うもの」であることが大前提です。
具体的な想像は、目標を実現させる上で何をすべきか、という現状把握が出来ているからこそ可能なことです。


理想主義者は現実と理想のギャップを直視できません。
そのため理想主義者が語る理想には全く具体性がありません。
ムンさんの語る「平和経済」の話を聞いて、具体的な「未来の朝鮮半島像」や「平和経済」構築の手順が思い浮かぶでしょうか?


バンダーさんによる「平和経済」の解説

ムンジェイン大統領の普段の信念と所信が反映された新造語で、あえて文字通りに解釈すれば「平和があふれる経済」あるいは「平和が川のように流れる経済」ぐらいになりそうだ。

と定義した上で、抽象的な「平和経済」という言葉ですが、経済というからには数値化可能な部分があるので、計量化して具体的に言い換えてみようという、面白い試みをしています。


  • 元の抽象的な文言

    남북 간의 경제협력으로 평화경제가 실현된다면 우리는 단숨에 일본의 우위를 따라잡을 수 있다.
    (南北間の経済協力に平和経済が実現すれば、私たちは、一気に日本の優位性に追いつくことができる)


  • 経済規模を数値化

    平和経済論は「南北」という言葉で始まる。数値化可能である。経済関連なので、経済分野尺度の一つである GDPの順位」 を適用すると無理がない。「南北」は 「GDP12位」と「GDP100位圏外(140位レベル?)」 というもので、それぞれ定量化される。


  • 期間を数値化

    中間には「一気」という表現が出てくる。(中略)ここでの「一気」は期間単位に換算してみることが出来る。経済を論ずるときの期間の単位は通常「年間」であるので、ここでの「一気」を数年であると考えられる。(中略)「一気」という表現が持つ本来の意味を考慮すると、いくら長くとっても10年以上とみるには無理がある。(中略)約5年程度の期間に該当するものとして無理がないように見える。


  • 「平和経済」を言い換えると…

GDP12位の韓国とGDP100位圏外の北朝鮮が経済協力して平和が川のように流れる経済が実現されれば、5年後にはGDP3位の日本と並んでいる。


  • もうちょっと具体的にしてみると…

5年後にGDP3位の日本と並んでいるためには、それ以前に4位、5位、6位を当然凌駕しなければならない。

  • つまり最終的には…

GDP12位の韓国とGDP100位圏外の北朝鮮が経済協力して平和が川のように流れる経済が実現されれば、2年後にはGDP6位のフランスを超え、3年後にはGDP5位の英国を凌駕し、4年後にはGDP4位のドイツを上回ることになり、5年後にはGDP3位の日本と並んでいる。


どうでしょう。
期間の設定が適切かどうかは異論があるかもしれませんが、実現可能性は極めて低いだろうと感じられます。

平和、大いに結構。
ですが、これが理想主義者が見ようとしない現実と理想のギャップです。
このギャップを埋めるために理想主義者は常に「現実」の方を否定し犠牲にしようとします。