韓国さん、徴用工基金を勝手に設立する法案を発議?の話

徴用工問題の解決策として韓国側が提示していた共同拠出による基金設立ですが、日本側が拒否し続けているにも関わらず韓国議会で勝手に発議されるようです。


ソウル経済の記事からです。

【単独】「韓日極限対立を解こう」...「2+2」強制徴用基金法案推進


韓日両国政府と企業が共同で出て、日本強制徴用被害者の資金を調達する「2+2」案が推進される。新しい教義案で両国対話の扉を付ける*1という趣旨で、現政権が先に進めていた「1+1(日韓企業)」案に両国政府を追加した。

ホン・イルピョ(洪日杓;홍일표)自由韓国党議員は、このような内容を盛り込んだ「日帝下強制徴用被害者基金法案」を30日代表発議する。この法案の主要な内容の一つは、日帝強制徴用被害者の損害賠償財源を用意するための両国政府・企業の協力など外交的努力を国家的責務と規定 するものである。損害賠償基金の財源は、両国政府と民間企業が出した出資金や寄付金で造成する。また、基金の管理・運用などの事項を審議する「強制徴用被害者基金運用委員会」を行政安全部長官属に設置するようにした。

ホン議員は「法案発議は、両国間の問題解決のきっかけを作る一方、高齢の被害者に損害賠償金を迅速に支払うためのもの」とし「国内企業を通じた資金調達は、自主的参加が原則」と説明した。ただ、「1965年の韓日請求権協定に基づいて恩恵を受けた国内企業が出すことを期待している」と付け加えた。


ソウル経済「[단독]"한일 극한대치 풀자"..'2+2' 강제징용 기금 법안 추진(【単独】「韓日極限対立を解こう」...「2+2」強制徴用基金法案推進)」より


具体的に盛り込まれている内容をまとめると以下です。

  • 日韓両政府・企業の協力など、外交的努力を国家の責務と規定
  • 迅速に賠償金を支給するため、基金を設立
  • 基金の財源は日韓両政府・企業による拠出金と寄付により賄う
  • 行政安全部長官の下に基金の運用管理委員会を設置する


最もらしく言っていますが、何にも変わっていません。
むしろ日本政府を加え「国家的責務」とすることで、韓国の国際条約違反状態を公式に日本に不問とさせるわけですから、悪化していると言えます。


更にこの法案を、日韓請求権協定に定められた仲裁に応じる義務を回避するアリバイに利用する考えもあるかもしれません。
仲裁委員は、請求権協定の第三条に定められた「外交上の経路を通じて解決するもの」が不可能な場合に設置されます。
日本は既に韓国に仲裁委員の設置を公式に要請していますが、韓国は応じていません。

今回の法案は「外交的努力を国家責務」とすることで、この仲裁委員設置を回避するための証拠作りに見えます。
「韓国は外交的努力を続けています。法案まで整備しています。応じていないのは日本です」演出のための舞台装置の一つです。


時系列で見れば破綻していますが、「現時点」という近視眼的視点に立てば、法案が成立した瞬間に韓国としては名分が立つことになります。

あくまで韓国でしか通じない理屈でしょうね。
日本がこの韓国の都合に合わせてやる必要も理解を示す必要も全くありませんが、なんでこんな発想になるのかを考えるには「後出しジャンケン」をイメージしてみてください。

日本が「パー」韓国が「グー」を出していたとしたら、日本の「パー」を見てから韓国は「チョキ」に変えてきます。そして「勝った」と言います。
その前に「パー」と「グー」で勝負が付いていたことや、後出しを指摘しても意に介しません。


「現時点(あるいは「結果」)」を踏まえて遡及的に過去の状態を判断すれば、法案の「外交的努力」で請求権協定の「外交を通じた解決が困難」な状態を打ち消すわけです。

それ以前に外交的解決に向けた動きが無いことや、日本側の仲裁委員設置要請に応じていなかったことは意に介しません。


ただの詭弁に見えますが、普通に遡及法が存在し、当たり前に適用され、元・国家元首が一瞬で犯罪者に落とされる社会では、時系列的な流れによる解釈より現在のこの瞬間にいかに自分にとって「都合の良い」解釈が出来るかが重要になります。

そのため「その時どうだったか」は置き去りにして判断します。
有利な条件を整えてから、その条件を加味して「その時」を判断します。


しかし、外交的努力というのであれば、まずは国同士の約束をきちんと守る努力をしていただきたいです。


*1:「作業を始める」ことの比喩的慣用表現。ここでは「両国対話の開始を促す」というような意味合いが適切かと。