1965年の日韓基本条約の中には、文化財に関する日韓文化財・文化協定*1が含まれています。
徴用工、慰安婦と同じく、残念ながらこれにもケチが付いています。
聯合ニュースの記事からです。
14年続いた韓日文化財返還交渉の結果と課題は
(前略) 韓日関係史を研究するリュ・ミナ国民大教授が国立外交院*2を介して発行した192ページ分量の本「韓日会談における文化財返還交渉」は、14年間継続した韓日文化財交渉の成果と課題を忠実に論じた著作である。 著書は、韓日文化財交渉で争点となった事案を3つ挙げる。 最初は違法性である。日本が遺物を不法に持って言った場合、「返還」が可能だが、寄贈や購入の形で入手したものを返還という表現を使うことは難しいかもしれない。 (中略) 著者は、日本が打ち出した主な交渉戦略は韓国側の反応を探るものだったと分析する。著者は「日本は返還対象リストをまず受け取って、その中で日本に損害がないものを返す方式を採用した」とし「このような態度は日韓会談が終わるまで続いた」と強調している。 (中略) 例え結果は満足そうでも、文化財返還交渉は多くの面で意義があることが著者の判断である。著者は「日本で韓国に文化財が返ってきた前例を残したという点で重要である」とし「帝国主義を標榜して植民地を支配した国は、これまでも多くの文化財を返していない」と強調している。 (中略) ただし、日本が自分たちの口に合う文化財だけ返して、北韓を排除したまま会談を行った点は限界として指摘する。
聯合ニュース「14년 이어진 한일 문화재 반환 협상 의미는(14年続いた韓日文化財返還交渉の結果と課題は)より一部抜粋
上の画像は記事本文に添付されていたものです。
日韓文化財・文化協定の資料ですが、これを読めば日本側の認識がそもそも「返還」ではないことが分かります。
4.船舶問題及び文化財 (1)船舶問題 日韓双方の法律上の主張には隔たりがありまた事実関係の確認も極めて困難なので政治的な解決を図ることが適当であると考える (2)文化財問題 日韓側としては文化財を出土国に返還しなければならないという国際法上の●則や慣例はなく従って日本にある韓国文化財を「返還」する義務はないと考えている。しかしながら●●義務という関係をはなれ両国間の文化交流促進の一環としてある程度の固有文化財の「贈与」を考慮する用意がある ※一部不鮮明で読み取れなかった箇所は「●」に置き換えています。
ハッキリ書いてありますね、 「返還する義務はない」「贈与を考慮する」 って。
ですから、リュ・ミナ教授が主張するような「日本で韓国に文化財が返ってきた前例を残した」という意義はありません。
「宗主国が植民地から持ち出した文化財を『返還』した」という図式を描いて「意義がある」としているのでしょうが、そうではなく「半島から内地へ移管されていた文化財を『贈与』する」です。
同じように聞こえるかもしれませんが、そもそも半島は「植民地」ではないので全然違います。
※「贈与」か「返還」かの認識は統一されておらず、最終的に「引き渡し」という文言を使っている。
このとき「引き渡し」された文化財は356件1,321点(陶磁器97点、考古資料334件、石像美術品3点、図書163部852冊、逓信関連品35点で、韓国領域に由来し、韓国国内に同種のものが多くないものが対象となったとされる。
リュ・ミナ教授とは、国民大学の日本学科研究というところに所属している教授です。最終学歴は早稲田卒。
この研究所、自称「世界的日本学研究所」だそうです。
主な研究内容は「共生研究」……「近代以降の朝鮮半島と日本の関係の歴史的展開過程を細かく追跡分析し、これを基に望ましい朝鮮半島と日本の共生のためのビジョンを未来像を追求」(公式サイトより)するのが目的としています。
「望ましい」とは誰にとって望ましいものでしょうか。
個人的には「韓国と共生するためには、日本は『このように』ならないといけない」を研究するところかな、という印象ですが。
いずれにせよ、これも請求権協定と同じく「完全かつ最終的に解決」したことです。
韓国は売買契約などの正当な手段で渡った文化財についても返還を求めています。それどころか存在しない文化財は「日本に奪われた」が通説としてまかり通っています。*3
個人や団体が所有しているものを自由意思で「寄贈」することはあっても、韓国側の「返還」要求を応じる義務はありません。