権利の行使は相手の権利を侵害しない形でないと意味がない、という話

当たり前の話ですが、大使館や領事館などの在外公館の敷地はその国(本国)の領土として扱われます。
韓国内の米国大使館は米国の領土です。現地雇用の大使館職員でもない限り、韓国人の立ち入りは違法となります。

当たり前の話ですが、デモの権利は認められています。
ですが、その権利の行使において、他者の権利を侵害したり、法を犯すことは権利行使の範囲を逸脱しています。


2日前(18日)、韓国大学生進歩連合所属の大学生30名余りが駐韓米国大使館にハシゴを使って侵入し、1時間にわたり座り込みをする、という事態が発生しました。
14ヶ月ぶり2度目の侵入事件発生に、米国務省は「強い懸念(strong concern)」を表明しています。
侵入した学生のうち19名が警察に連行され、内9名には拘束礼状が申請されました。実際に拘束礼状が発行されたのは7名だそうです。


学生たちは警察の取り調べに対して黙秘をしているそうですが、侵入した際に、在韓米軍駐留費の増額(防衛分担金引き上げ)に反対する主旨のプラカードを掲げていました。


その程度であればデモで事足りるはずですが、これも一種のパフォーマンスだと思います。
「『大使館不法侵入』という強硬手段に出るほど我々は怒っているのだ」ということをアピールしたいのでしょう。


学生たちが所属している大学進歩連合は会見を開き、学生たちの釈放を要求しています。
彼らの行動を「大韓民国の国民の一人として、米国の過剰な防衛費分担要求に反対したもの」としています。
つまり「愛国的行動」です。


「大使を糾弾する私たち大学生の正しい行動は、処罰ではなく、むしろ血税強奪を防ぎ、財政主権を守ろうとした正しい行動と励まさなければならない」のだそうです。

言い換えると、道徳的に正しい「愛国行動」は、それを遂行するために法を犯したとしても他人の権利を侵害したとしても許容されるべきで、むしろ「よくやった!」と称賛されるに値するという主張にも取れます。


大使館侵入ではありませんが、過去にはリッパード大使(当時)が切りつけられる事件が発生しています。

今年の7月にはソウルの日本大使館への不法侵入、釜山の日本領事館前での焼身自殺など、「力づくで自分の主張を示そう」とする傾向が強いように感じます。
矛先が不特定多数に向いていないだけで「主張を暴力的に訴える」という根底にあるやり口はテロと変わらないように思えます。

その原動力が彼らの言う「愛国」なのだったら、ホント碌なもんじゃありません。