カトリック教会が既婚男性の司祭を認める話

ローマ・カトリック教会には司教、司祭、助祭などの階級がありますが、現在、全て独身男性に限られています。
実は歴史的には多くの聖職者が既婚者だったという記録あるのですけれど、11世紀頃に行われた宗教改革(グレゴリウス改革)を経て12正規に開かれた公会議以降、聖職者の独身制が徹底されるようになりました。

ところが、26日にバチカンで開かれた司教会議で「適切な訓練を受け、教会のコミュニティで認められた人」に限って既婚男性が儀式を行うことを認める…つまり実質、既婚男性の司祭を認めるという採択が出ました。

約900年続いた伝統を変える採択の裏には、カトリック教会による性的虐待スキャンダルがあるのではないでしょうか。


カトリック教会による性的虐待スキャンダル

最初は2002年に米国メディア*1が大々的に報道したことにより明るみに出ました。
事件が起こっていた大半の場所は、孤児院や神学校など、外部の目が届きにくい閉ざされた空間でした。(ただし、被害者の大半は児童ではなく、成人した神学生や施設関係者)


米国では性的虐待が発覚した聖職者の再任が禁止されましたが、そうした人たちが発展途上国で聖職に就き、同様の事件を起こしていることが分かり、教会上層部の対応が問題視されるようになりました。

他にも、フランスでは修道女を「性奴隷」としていた事例や、前教皇枢機卿時代に虐待事件をもみ消したという疑惑など、スキャンダルは続いています。

昨年には米国ペンシルベニア州の6つの教区の調査が行われ、1000ページを超える報告書が提出されました。
その中で「1000人以上の未成年者の被害者」のほか、「300人以上の神父による確実性の高い疑惑」などが指摘されています。

ある教区では神父による強姦の結果、妊娠した少女が中絶させられています。(カトリックにとって中絶は罪)

その神父の上司が書いた手紙に

「あなたの人生において今はとても大変な時期です。私はあなたの混乱を理解し、あなたと共に悲しんでいる」

という記述がありましたが、これは被害者の少女に宛てられたものではなく、加害者の神父に宛てられた手紙でした。


日本ではキリスト教徒の絶対数が少ないこともあり、あまり知られていないかもしれません。
呑気に30数年ぶりの教皇来日について報道されてますが、世界的に教会の権威は地に墜ちた状態です。


協会側は、度重なるスキャンダルに効果的な対策が取れないまま、次々と新たなスキャンダルが発覚している状態です。

発想の逆転、というと失礼な言い方になるかもしれませんが、最初からパートナーが居る人、性的衝動を溜め込む必要がない人を司祭として認めることを一つの対策として採用したのでしょう。
もちろん、既婚者が性犯罪を犯さないという保障はありません。が、何らかの抑止力は働くかもしれません。

少なくとも教会側としては、900年守り続けた伝統を放棄してでも対策を講じる覚悟を示した格好は付いただろうと思います。


*1:ボストン・グローブ紙による調査報道。