中国軍用機の日本と韓国への対応の違いの話

29日に中国軍用機が日本の防空識別圏(JADIZ)に事前通告無しで侵入しました。
日本メディアでは共同通信くらしか報じていないので、あまり大きな話題になっていないのかもしれません。
もちろん、防空識別圏は領空とは違いますので、入ること自体に国際法上の問題はありません。

ただ今回はJADIZに侵入する前後に韓国の防空識別圏(KADIZ)にも侵入しており、その際スクランブル発進した韓国軍からの無線交信には応じ、KADIZ侵入を通知しています。
日本と韓国とで対応を変えている点が今までと違います。

韓国メディアによると中国側が無線に応じるのは異例で初めてのことだとか。


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今回JADIZに侵入したのはY-9系列の偵察機です。対馬の東側(本土側)を掠めて日本海へ抜けています。
(昨年8月にも同型機が防空識別圏に入っており、このときは対馬の西側=韓国側を抜けてる)


この件を韓国メディアの日本語版でハンギョレ中央日報が報じています。
中国軍偵察機の飛行ルートについての詳細も報じられていますが、注目したいのはそこではなく、それぞれの報道が「中国側が無線に応じたのはなぜか」をどのように分析しているかなので、該当部分以外は省きます。


まず、ハンギョレです。

(前略)

今回、中国軍用機がKADIZ内に進入する前、軍当局間のホットラインで飛行経路や目的を通知した背景に関心が集まっている。今月21日、5年ぶりに国防戦略対話が北京で再開され、事実上国防交流協力が正常化されたことと関連があるものと見られる。

(後略)


次に中央日報です。

(前略)

中国の今回のKADIZ進入で注目されるのは通知をしたという点だ。今年に入って20回以上もKADIZを進入している中国は今回初めて軍当局の警告通信に応答した。合同参謀本部の関係者は「中国がKADIZ進入後に(KADIZ進入事実を)通知したことはあるが、KADIZ進入の動きを見せながらわが軍の通信に(進入)応答をしたのは初めて」とし「自発的な事前通報とは見なしがたく、識別過程で進入前に(通知を)した」と伝えた。

キム・ヒョンチョル元空軍参謀次長は「中国が偵察機1機を飛ばしてKADIZ、JADIZ、CADIZと移動しながらわが軍の通信に応じたのは、周辺国の対応状況を点検するという意味と解釈される」と述べた。一方、中国軍用機はJADIZに進入する際、日本政府に事前通報しなかったと、共同通信は報じた。


ハンギョレはどちらかというと中国と韓国の関係が良くなったから配慮されたというように見ているようです。

一方の中央日報は「中国が周辺国の反応を見ようとした」という元・軍関係者の言葉を引用しつつ、日本へは通知されていない事実を伝えています。
(これが「日本に通知しなかったのは筋が通らないんじゃないの?」と言いたいのか、「韓国を尊重し、日本を軽視している」と言いたいのかは分かりませんが…。)


個人的には中央日報の元・軍関係者さんの「反応を見た」という解釈の方が納得がいきます。

GSOMIAは11月23日に失効するので、まだ有効期間内です。韓国に通知した内容が日本に情報共有されるのか、あるいは、情報共有された形跡があるか、あたりが見たかったのではないかと思います。

仮に情報共有された(された形跡があった)場合、23日以降に再度似たようなことをやって反応の違いを見る、くらいのことはやりそうな気がします。
(というか、私が中国の立場ならやります)


ハンギョレの解釈について納得がいかないのは、今の所、中国が韓国に配慮する必要性が見えないからです。
現在の韓国は、中国が何をしなくても勝手に日米から遠ざかっていこうとしていますからね。

米中貿易摩擦の最中ですから、中国がより多くの「仲間(と書いて「配下」と読む)が欲しいのは間違いないと思うのですけれど。