ムン・ヒサンさんの「国民募金」案の話

天皇謝罪発言」で有名なムン・ヒサンさんが早稲田大学で講演を行い、徴用工問題解決に向けて私案を披露しました。
日韓の企業や国民から寄付を集めて補償に充てようという案で、関連法案をまとめて国会に提出することも検討されているそうです。

日本はもちろん、受け入れません。基金を設立することが既に賠償と同義となるからです。
ですが、韓国の市民団体も、その内容にはお怒りのようです。


ノーカットニュースの記事からです。

ムン・ヒサン議長「1+1+国民募金(α)」の中身に怒った市民団体たち...「容認できず」


ムン・ヒサン議長の強制徴用が提案した1+1+国民募金(α)の中身について市民社会団体が強く反発している。

先にムン・ヒサン国会議長は5日、日本の早稲田大学で開かれた特別講演で強制動員問題の解決策として資金を作って被害者に慰謝料を支給する単一の法案(1+1+国民募金(α)案)を推進すると明らかにした。

ムン議長はそこで慰謝料基金の財源を▲韓日企業の寄付▲韓日国民の民間寄付▲解散した和解治癒財団*1の余剰金60億ウォン▲韓国政府出資金によって設けようと提案した。

ムン議長のこのような提案に強制動員被害者団体と慰安婦被害者団体の両方は強く反発している。日本の謝罪が先に行われていないのに、補償案をすることができないという趣旨だ。

(中略)

正義記憶連帯(正義連)はこの日、声明を出し「民意を代弁する責任がある国会議長が加害国政府の立場を考慮して和解治癒財団の残り資金も含めた資金調達案を提案したのは、到底容認できない」とし「ムン・ヒサン国会議長の発言を強く糾弾し、即刻謝罪を要求する」と批判した。

続いて正義連は「NHKによると、ムン議長の提案について日本政府は『日本企業のコスト負担を前提とするものであり受け入れることができない』という立場が支配的だ」とし「ムン議長が言及した両国の和解と協力の障害は、他の何者でもない、日本政府による戦争犯罪の事実の否定と法的責任の否定」とした。

(後略)

ノーカットニュース「문희상 의장 '1+1+국민성금(α)'안에 뿔난 시민단체들…"용납 못해"(ムン・ヒサン議長「1+1+国民募金(α)」の中身に怒った市民団体たち...「容認できず」)より


日本の謝罪を受ける前に基金が設立されたら、日本に免責を与えることになる、という見方をあるようです。
免責もなにも…既に解決済みですけどね。


ムン・ヒサンさんが何故このような案を出してきたのか分かりませんが、年末までに目処を付けたいようです。

ファイナンシャルニュースの記事からです。

ムン・ヒサン議長「年末までに強制徴用関連法案を処理しなければ」


日本を訪問中のムン・ヒサン国会議長が6日、韓日首脳会談開催を通じ、韓日軍事情報保護協定(GSOMIA)とホワイトリスト(輸出審査優遇国)の一括復元し、強制徴用問題の立法的解決と、金大中・小渕宣言*2(1998年)まで再確認しなければならないと主張した。特に前日、強制徴用問題の解決策として提示した、いわゆるムン・ヒサン案(案)を含む韓国国会レベルでの関連立法を今年の年末までに処理しなければならないと強調した。強制徴用賠償判決の原告側(被害者)が、被告側の日本企業の韓国内資産を現金化する前にこの問題を解決しなければならないというものである。

ムン議長はこの日午前、東京のホテルで開かれた特派員団との懇談会で、過去の韓日関係の節目に記録された金大中・小渕宣言を引き継ぐ「ムン・ジェイン・安倍宣言」を要求し「今年中に韓国で徴用問題の解決のための法律が立法され、両首脳が首脳会談の意思を示さなければならない」と述べた。

(中略)

日本政府のスポークスマンである菅義偉官房長官は、同日開かれた定例記者会見で、前日にムン議長が出した徴用問題の解決策について「韓国の国会で模索されていることは知っている。他国立法府の議論について、政府としてコメントすることは見合わせたい」と語った。このような態度は、6月に韓国政府が韓国と日本両国企業の出資金で財源を造成し、被害者に慰謝料を支給する案(1+1案)を提案した時に即座に拒否の意思を表明していたことと対比される。


ファイナンシャルニュース「문희상 의장 "연말까지 강제징용 관련 입법 처리해야"(ムン・ヒサン議長「年末までに強制徴用関連法案を処理しなければ」)より


この人、知っているんじゃないでしょうか?差し押さえられている日本企業の資産は買い手が付かない=現金化出来ない可能性があることを。


差し押さえられているのは、主に韓国国内の傘下の子会社(合弁会社)の株式なのですが、未公開株式です。未公開株式は競売に掛けることで現金化します。
この手の株式には制約が付いていることが多く、競売に掛けられた場合、買い手を会社自身が「株主として認めない」と拒否できる権限があったりします。
リスクが高いので買い手が付かない可能性があるんですね。


韓国でも似たような制度なのであれば、現金化の動きで困るのはむしろ韓国側です。
差し押さえ資産の現金化に失敗すれば、国内世論の怒りは韓国政府の対応への不満という形にもなりかねません。
だから早く、何らかの着地点が欲しいのかもしれません。

とは言え、基金設立という土台部分で事実上の賠償ですから、日本が「うん」と言うわけありません。


日本に韓国の国内法は関係ない

しかし不思議なのが、なぜ日本が韓国国内で立法された法案に対して従わなければならない、という発想になるのかです。
年末までに法案が通ったとして、それを受けてなぜ日本が動かないといけないんでしょう?
韓国国内法をもって日本政府に何かを強いるのは内政干渉以外のなにものでもありません。

菅さんが「他国立法府の議論について、政府としてコメントすることは見合わせたい」と言ったのも、内政干渉にあたるからです。
記事では「6月と態度が違う」と言って(期待して?)いますが、6月の提案は韓国議会での議論ではなく、韓国政府から日本政府に宛てられた提案であったためです。状況がまるで違います。


真正性が迷子

もう一つ不思議なのが真正性のある対応に拘る韓国さんが、当事者(自称・被害者)たちの声を無視して法案を通したとして、それで真正性のある対応と見なされるのでしょうか?

そこが満たされないと、いつまでも終わらないんじゃなかったでしたっけ?
つまり解決する気はないってことですか?

そこのところハッキリしてもらわないと困りますよね、やっぱり。


*1:慰安婦財団のこと

*2:日韓共同宣言