「日韓請求権協定を尊重するための日韓弁護士共同宣言」の話

23日に、ソウルと東京で日韓の法律家たちが共同宣言を発表しました。
「日韓請求権協定を尊重するため」のものだそうです。

異例の動きと言って良いと思います。逆はよく聞くのですけれどね。


保守系ネットメディア、ペン&マイクの記事からです。

あまりにも長いので端折りました。それでも長いので先に要約しておきますね。

  • 韓8人、日16人参加、徴用工判決は1965年の日韓請求権協定を根底から破壊

  • 国際問題としては完全かつ最終的に解決されたものであり、最高裁が認めた慰謝料もこれに含まれる

  • 日・米・韓の関係は韓国の安全保障に直結している

  • 盧武鉉政権時代に6000億ウォンの血税を投じて補償したのに、まるでそんなことが無かったかのように振る舞っている

[単独]韓日法律家共同声明、ソウルと東京で同時発表…「韓日請求協定を尊重せよ」(氏名全文)


韓国と日本の法律家たちが23日午前11時、ソウルと東京で1965年に締結された韓日(韓日)請求権協定の尊重を促す韓日法律家共同声明を発表し、記者会見を開催した。韓国側は挨拶で高永宙(コ・ヨンジュ)弁護士ら8人が参加し、日本側からは西岡力麗澤大学客員教授をはじめ16人の法律家が共同声明に意を共にした。

彼らは「昨年10月30日に宣告された韓国の『徴用工』慰謝料請求を認めた韓国最高裁判所判決は1965年の韓日請求権(以下、「請求権協定」)を根底から破壊するものであり、韓日関係の悪化をもたらした最大の要因」とし「この声明は、このような現象を懸念して韓日請求権協定を尊重した問題解決を両国政府及び司法関係者に要求するものにほかならない」と共同声明発表の趣旨を明らかにした。

これらはまた「従来、韓国最高裁判決を支持する立場の声明が数回あったが、該当の判決を批判する立場で両国の法律家が一致団結することができるようになった点は、韓・日の友好関係を再構築するという点で重要な一歩になる画期的な意味を持つ」と韓・日両国の法律家による共同声明発表が成功したことに対する歓迎の意思を示した。

共同声明では、韓国最高裁判決をはじめ、いわゆる「徴用工」の問題を扱うにあたって韓国側に見られる問題点が指摘された。

彼らは「第二次世界大戦中、韓国人労務者の損害などに関する請求権は1965年の韓日請求権協定で国際問題としては完全かつ最終的に解決されたものであり、韓国最高裁判決が認めた慰謝料請求権もこれと異なるものではない」として「(昨年10月)の韓国最高裁判決のクォン・スンイル、チョ・ジェヨン判事の反対意見と基本的に同じものだ」と指摘した。続いて彼らは「この国際協定(「請求権協定」)は、両国と両国民の間の請求権に関する問題が『完全かつ最終的に解決された』ことを明示的に確認している」とし、韓国政府と司法当局に対して日本製鉄などの資産差し押さえと売却関連の強制執行を停止し、「請求権協定」の精神に基づいて問題を解決しなければならないという点を明確にした。

共同声明を発表した後に参加した弁護士の発言が続いた。高永宙(コ・ヨンジュ)弁護士は北韓の対南統一戦術の一つである「冠のひも戦術」に言及して「韓・米、韓・日関係はすべて私たちの安全保障にとって重要であるため、韓日量国民が互いにいがみ合って過ごしてはならず、そうでなければ大韓民国の安保が危うくなる」と強調した。石東炫(ソク・ドンヒョン)弁護士は「いわゆる徴用労働者の判決により、韓日間の関係が極度の破綻関係にあるのは、どう見ても望ましくないこと」と指摘した。

高永宙(コ・ヨンジュ)弁護士は「『請求権協定』を見ると、賠償請求権と補償請求権を分けずに、すべての請求権がこの協定により、完全かつ最終的に解決されたという点を、この協定が確認しているので(昨年10月に最高裁判決が言うように)補償請求権は該当しないというのは恣意的な解釈だ」と主張した。

(中略)

朴仁煥(パク・インファン)弁護士は「盧武鉉政権時代の2005年には、民・官合同で強制動員被害者調査および支援委員会を作って、10年間で6000億ウォンの血税をかけ慰安婦を含む「徴用」被害者であることを主張する人々に補償金を配ったが、今となってはまるでそんなことなど無かったかのように、根本的な韓日関係をひっくり返してしまおうとするのに問題があると思う」と主張した。

(後略)>

ペン&マイク「문[단독] 韓日 법률가 공동성명, 서울과 도쿄에서 동시 발표...“韓日청구권협정 존중하라”(성명 全文)([単独]韓日法律家共同声明、ソウルと東京で同時発表…「韓日請求協定を尊重せよ」(氏名全文))」より


2018年10月30日の判決についておさらいしておきます。

13人の大法官(裁判官)が11対2で「賠償責任あり」という判決を下しました。
記事内で言及されているクォン・スンイルさんとチョ・ジェヨンさんはこのとき「賠償責任なし」と判断した裁判官です。


2人の論拠は「請求権協定の範囲内のため請求権講師できず賠償責任なし」というものです。日本政府の認識と一致しています。


残り11人は「賠償責任あり」の判決ですが、論拠は3つに分かれています。

多数派の7人は「徴用被害者の慰謝料請求権は請求権協定の範囲外のため賠償責任あり」というものです。

法律上、賠償金というと財産や利益などに対する損害賠償となります。
慰謝料は、精神的苦痛への損害賠償となります。
つまり、請求権協定でカバーできるのは「賠償金」のみで「慰謝料」は対象外、という判断ということです。

これは請求権協定を恣意的に解釈していると受け取れるものです。

更に、この7名は前提として「日本政府による韓半島に対する不法な植民地支配および侵略戦争の遂行と直結した日本企業の反人道的な不法行為を前提とする強制動員被害者」=「徴用工」という、特定の歴史観による図式の上にこの論拠を組み立てています。

不法行為に基づく損害賠償請求」という考えが根底にあるように思います。


3人は、結論こそ同じですが論拠は異なります。
「請求権協定の範囲内だが、個人の請求権は請求権協定だけで消滅すると見ることは出来ない。日本で訴訟はできないが、韓国国内で日本企業相手には訴訟を起こすことはできる」というものです。

請求権協定の範囲内と認めた上で、それでも賠償責任がある、というこの判断が個人的には一番理解に苦しみます。


最後の1人の論拠は「2012年5月24日に宣告された差戻判決で大法院が原告らの損害賠償請求権が請求権協定に含まれないと判断したため、再上告審でも同じ判断をする」というものです。

覊束力(きそくりょく)(手続き拘束力)といって、同じ裁判の場合、過去の判断と一貫性を持たせなければいけないので、それに拘束される、という判断です。


最初の7人は明らかに請求権協定を無視(恣意的解釈)した判決を出しています。

次の3人は、一見支持しているかに見えて、よく分からない理屈を持ち出して無視しています。

最後の1人は、論拠にしている2012年の判断の時点で請求権協定が無視されています。

よって、「賠償責任あり」と判断した全員が、その論拠の部分で日韓請求権協定を何らかの形で無視していることになります。