「慰安婦」を扱ったミュージカルに「1人抗議デモ」の話

1月23日から韓国で「黎明の瞳」というミュージカルが公演されています。同名タイトルの小説を原作(金聖鍾;キム・ソンジョン)にしたもので、1991〜92年にはドラマ化され放映されていたそうです。

主人公の女性は1943年に強制連行されて従軍慰安婦にさせられます。
これについて「歴史的事実と乖離がある」として人権ニュース代表のチェ・ドクヒョさんが1人デモを行ったそうです。
この人は反日像真実究明共同対策委員会(共対委)の中心メンバーでもあります。


ペンアンドマイクの記事からです。

[単独]「誤った歴史教育」世宗文化会館前「1人デモ」...ミュージカル<黎明の瞳>公演に抗議


大韓民国国民の『文化宮殿』でミュージカルを介して誤った歴史教育が行われています」

白髪にキャスケットを深々とかぶった人が路上の往来市民に向かって声を高めた。2日、ソウル世宗文化会館前で「1人デモ」に出た韓国の人権ニュース代表チェ・ドクヒョ氏がその声の主である。向かいでは「高宗即位40年称慶記念碑」の前の特設ステージを中心に「文在寅下野汎国民闘争本部」(汎闘本)主催の集会が開かれていた。

(中略)

この日、チェ・ドクヒョ代表が世宗文化会館の前で「1人デモ」を行った理由は、去る1月23日から公演中のミュージカル <黎明の瞳> に抗議の意を示すためである。

(中略)

世宗文化会館の前で「1人デモ」に出たチェ・ドクヒョ代表はミュージカル「黎明の瞳」に登場する「ユン・ヨオク」は同名小説の中の架空の人物で、歴史上実在した「日本軍慰安婦」とは乖離がある内容で描写され「強制連行」も事実ではない、と主張した。

(中略)

チェ代表は「歴史教育は論文や本によって行われなければならない」とし大韓民国では、映画・ドラマ・ミュージカルを通じて誤った歴史教育が行われている」とした。彼はまた「歴史を『文化商品』を通じて学ぶことは、大韓民国の国民と学生に歴史歪曲を植え付けている」とし、すでにドラマで制作されたことがある同名の小説を原作にしたミュージカル「黎明の瞳」の内容は、実際の歴史ではないというのが彼の主張だ。

彼が「1人デモ」のために持参してきたプラカードには、実際の「日本軍慰安婦」として活動したことがある故・金学順さんが「ハンギョレ新聞」とインタビューした内容が掲載された同新聞の1991年8月15日の記事内容が要約されて書かれていた。

当時「ハンギョレ新聞」は、記事で故・金学順さんについて「1924年満州吉林省で生まれた金さんは父親が生後100日に亡くなった後、生活が苦しくなった母によって14歳のときに平壌妓生券番に売られた。3年間の券番生活を終えたキムさんが最初の就職を知って券番の継父に連れられて行ったところ、北中国鉄壁鎮の日本軍300人の小隊の前だった」と記している。

チェ代表は同名の小説とミュージカルが描写するように、当時の朝鮮の少女が強制的に連行され「慰安婦」になったということは「歴史的事実」ではなく、主に「朝鮮人継父」などによって「朝鮮人ポン引き」に売られ、「日本軍慰安婦生活」を始めることになるのが当時の「慰安婦」少女が経た一般的な道筋だったと説明した。

チェ代表が用意した別のプラカードには「慰安婦(少女像)ビジネス」という見出しの下に「日本軍慰安婦」関連団体が「日本軍慰安婦」関連の像を一体当り8500万ウォン*1(釜山の場合)など、全国的に124個設置しており、同じ像を海外に輸出しているなどの内容が盛り込まれていた。「共同対策委員会」側の主張によると、「日本軍慰安婦」関連商品がライセンスを得て製作・販売されており、その収益の一部は「日本軍慰安婦」関連支援団体と関係していると把握されているという。

(中略)

一方、(株)スキカンパニーが制作しジェネピックエンターテイメントが主催・主管しているミュージカル「黎明の瞳」は2月27日まで世宗文化会館世宗劇場で公演される。(中略)

VIP席とナビ席は14万ウォン*2、R席12万ウォン*3、S席9万ウォン*4、A席5万ウォン*5で入場券が販売されており、世宗有料会員(世宗文化会館の会員)は10%割引された価格でチケットを購入することができる。

(後略)

ペンアンドマイク「[단독] “잘못된 역사 교육” 세종문화회관 앞 ‘1인 시위’...뮤지컬 〈여명의 눈동자〉 공연에 항의([単独]「誤った歴史教育」世宗文化会館前「1人デモ」...ミュージカル<黎明の瞳>公演に抗議)より一部抜粋


イ・ウヨンさんが始めた水曜集会反対集会は1月29日で9回目を迎えたそうです。
まあ、路上に出るのは1人でも、バックには団体が付いていますけどね。
「1人デモ(原文は「集会」)」と言えば記事タイトルとしてインパクトがあるようで、最近はトレンドみたいです。


私はどうも「この映画は実際にあったことです」的なキャッチコピーのものがニガテです。だって、面白くなかったって言えなくなるんですもの。

実際に起こった出来事を扱ったというだけで一定の評価をしないと、その出来事(事件)の持つ「テーマ性」みたいなものまで否定するかのような風潮があるような気がするんですよね。
そのくせ、実際の出来事を一方的(主人公目線)、瞬間的に切り取って、エンタメとして成立させるために「盛ってる」わけです。
作り手が見せたいものだけを切り取ったものは、それはもう「実際にあったこと」ではないと思うのです。なのでニガテです。
単なる「娯楽」として受け取ることにしています。


難しいのはフィクションの中に「歴史的事実」を混ぜ込んでくるものです。
今回の「黎明の瞳」もそうですけれど、「慰安婦」という存在が居たことは事実です。

そして、日本の歴史小説などもそうですけれど、フィクションの中に「事実」が混ぜ込まれているもののほうが良作が多いですよねぇ…。多分、説得力が増すんでしょう。


*1:約760万円

*2:約12,500円

*3:約10,700円

*4:約8,000円

*5:約4,400円