「史上最もコストのかかる政府の隠蔽」疑惑の話

コロナウィルスが中国の研究施設から流出したのではないか、疑惑の話です。コレを指してナショナルレビューが「史上最もコストのかかる政府の隠蔽(Costliest Government Coverup of All Time)」という記事を書いています。

ウィルスが人工的に作られた説とはまた違います。ウィルス人造疑惑は専門家たちの間で否定的な見解です。1000ヶ所以上の変異が見つかっており、一々手を加えていったと考えるのは現実的ではないからです。


しかし、研究施設からの流出となると話は別です。
武漢にはレベル4(BSL-4)のウィルス研究所があります。国際的な生物研究の安全基準を中国で初めて満たした施設です。しかし、ここで行われていたコウモリを使った研究は、レベル2(BSL-2)以下の安全基準で行われているという警告は以前からあったようで、2018年に米国当局は安全プロトコル不足を把握していたことが示されています。

情報筋は中国がWHOをオウム(中国の代弁者)として「武漢の水産市場発生説」を広く流布して調査を偽装しウィルスの起源を誤魔化している、と見ているようです。
まあ、日本で最初に発症した中国籍の人たちも、武漢の水産マーケットには近づいていないらしいので、あそこが発生源というのは疑わしい話ではあります。

ただ、米国がこれで中国を「攻撃」したとしても、それは口実でしかないと思います。疫学的にはウィルスの起源を特定することは重要でしょうから、全くの無意味とは言いませんけれども、目的は最初から中国を攻撃、あるいは抑圧することでしょう。


A) コロナウィルスは中国の研究所施設から漏洩した。
B) 中国の初期対応の拙さが事態を深刻化した。


AとBはいずれも「中国の責任」を追求するものでありますが、考え方は大きく違います。
Bは事実ですから、日本はBの態度はしっかり取るべきです。でもAからは距離を取っていおいた方が今は無難かもしれません。


というのも、Aは米国がよく使う手だからです。例えば、イラク攻撃の口実となった「大量破壊兵器がある」説、これを最初に米国が唱え、英国が賛同しイラク戦争は勃発しました。でも結局、「大量破壊兵器」は存在しませんでした。
この過ちの責任は誰も取っていませんし、誰も気にしません。口実なんて、その程度のものです。


なので、今回のコロナウィルスが中国の研究施設から漏洩したかどうか、本当のところはどうでも良いんです。米国が「そうすること」にして、それを口実に中国抑圧をしたいだけなので。
台頭する中国を煙たがる諸国家が乗ってくれば大きな動きになるでしょうし、そこには社会正義などという甘っちょろいものは存在しません。純粋な力勝負です。

こうした動きに対抗できるように、中国はASEAN諸国やアフリカにチャイナマネーをバラ撒いて舎弟にし、更に一帯一路政策で中央アジア取り込み、欧州切り崩し&取り込みを図って、米英 vs 中国、アジア、アフリカ、欧州連合の構図にしたかったんでしょうが、現状、充分な準備が整っているようには見えません。


とはいえ、歴史的に中国は離間の計に代表されるような搦手が得意技です。水面下でどこまで進んでいるかわかりません。

今回の件で製造業の中国依存がまたも大きな問題になりました。中国依存を解消する、国際社会のルールを維持する、という意味では中国抑圧は日本にもメリットがあります。
中国が勝つとルールが変わってしまいますからね、米国に負けてもらうと困ります。

しかし、自力で自国防衛(武力・経済ともに)できず、中国の影響がより大きい日本が、現時点で米・中どちらかに両手を挙げて賛同するのはリスクが大き過ぎるように思えます。