米国大使館で奇襲デモを行った大学生に「執行猶予」判決が出た話

昨年、米国大使館に侵入して奇襲デモを行った大学生の裁判の一審で執行猶予判決が出ました。
事件としては全く別物なのですが、時期や奇襲デモという内容から、どうしても日本領事館奇襲デモの判決と絡めて見てしまいます。
事件経緯、報道内容、判決など、覚書の意味で記録しておきます。

メディアも日本領事館のときと合わせて聯合ニュースにしていますが、記事を書いた記者は別の人です。そのためか、記事のトーンというか視点というか熱量というか…が若干違う気がします。


聯合ニュースの記事からです。

「米国大使館」大学生たち一審執行猶予...「業務妨害認め」


韓米防衛分担金引き上げに反対し、駐韓米国大使館に奇襲侵入した疑いで起訴された大学生の進歩連合(大進連)所属の会員が一審で懲役刑の執行猶予を言い渡された。

ソウル中央地裁刑事18単独ヤン・ウンサン部長判事は29日、業務妨害などの疑いで裁判にかけられた大進連会員のキム某氏など4名にそれぞれ懲役1年、執行猶予2念を宣告した。社会奉仕令も下した。

(中略)

裁判所は量刑について「被害者が処罰を望んでおらず、表現の自由やデモの自由は保証されるが、他人の権利侵害が許可されてはいない点、予めはしごを準備し大使館の機能と安寧を侵害したことなどを斟酌した」と説明した。

これらは昨年10月の午後2時50分頃、はしごに乗ってソウル市中区貞洞(チョンドン)の米大使館の塀を乗り越え、庭に侵入した後、「米軍支援金5倍増額要求したハリス*1はこの血を去れ」と書かれたプラカードを掲げてデモを行った容疑を受けている。

(攻略)

聯合ニュース「'미국 대사관 월담' 대학생들 1심 집유…"업무방해 인정"(「米国大使館」大学生たち一審執行猶予...「業務妨害認め」)より一部抜粋


キム某、と匿名報道になっていますが、別ソースではキム・ユジュン(김유진)さん29歳、女性と分かっています。先日の4月15日の総選挙で民衆党から比例代表として立候補しています。(ちなみに、民衆党はこの選挙で全ての議席を失った)


米大使館も日本領事館も、報道ではどちらも「大学生」による奇襲デモとなっているのですが、執行猶予と宣告猶予という差があります。
簡単に言ってしまうと、執行猶予は前科が付き、宣告猶予は前科が付きません。
この差は恐らく、業務妨害が成立したか否かでしょう。


ただ、記事のトーンの違いは何というか…米大使館の件が執行猶予になったのは「被害者側が罰を望んでいないから」で、日本領事館の件が宣告猶予になったのは「大学生たちが正しいことをしたから」と言っているように感じてしまうんですよねぇ…考えすぎでしょうか?

日本領事館奇襲デモの裁判の方では裁判官が「国民の共感を得た(から宣告猶予)」と受け取れる発言をした、という報道がありましたが、今回はそういうの無いですしね。


そういえば、ペン・アンド・マイクでこの裁判官の「国民共感」発言は実際には無かった(?)という記事が出ています。
少なくとも、発言主とされる部長判事は問い合わせに対して「そのような話をした記憶がない」と答えたそうで、記者の「作文」疑惑を提起しています。
現在、裁判記録の情報開示請求を行っているらしいので、何かあれば続報が出てくるかもしれません。


*1:在韓米大使