「情」を示すために「恨」を振りかざす話

外交評論家の岡本行夫さんがコロナで先月24日に亡くなっていたことが報道されましたが、韓国でも一部で取り上げられています。

というのも、岡本さんは韓国では慰安婦=性奴隷」を否定していた極右論者とされているためです。「正論」などにも寄稿されていましたし、言い方は悪いですけれど、韓国からしたら「嫌な奴」だったろうな、と思います。


イーデイリーの記事からです。

慰安婦性奴隷なかった」と主張した日外交評論家岡本、コロナで死亡


日本で評論家として活動していた岡本行夫首相補佐官が新型コロナウィルス感染症(コロナ19)で死亡した事実が一足遅れて知らされた。

共同通信によると、岡本元補佐官は先月24日、コロナ19にかかって治療を受けている間に死亡した。死亡の事実が10日余り後に知らされたのは、遺族が公開することを憚ったためである。

日本外務省北米1課長などを経て、1991年に退任した故人は1996〜1998年の橋本龍太郎、2003〜2004年の小泉純一郎内閣でそれぞれ首相補佐官を務めた。橋本内閣では、沖縄担当で米軍普天間基地飛行場の移設問題を差配し、小泉内閣では戦後のイラク復興支援業務を担当した。

首相補佐官を辞め外交評論家として活動した故人は、2015年には戦後70周年談話を作成するための安倍晋三首相の私的諮問機関である「21世紀構想懇談会」にも参加した。

この懇談会が安倍首相に提出した報告書で、韓半島植民支配に対する謝罪の必要性を取り上げていない批判 を受けた。

彼は昨年、メディアのインタビューで日本軍慰安婦被害者問題について「韓国が主張する性奴隷というシステムは存在しなかった」と主張するなど、日本右翼史観に即して歴史的事実を否定する発言に専念して議論を起こしたりした。右翼性向媒体である産経新聞発行雑誌「正論」の執筆メンバーとしても活動した。

(中略)

米国で知日派として知られるアーミテージ前国務副長官は「岡本は日米関係の巨人だった。彼は国のために最善だと思ったことを常に行った。だから、私から見ると彼は真の愛国者であった。哀悼の意を捧げる」と伝えた。

イーデイリー「"위안부 성노예 없었다" 주장한 日외교평론가 오카모토, 코로나로 사망(「慰安婦性奴隷なかった」と主張した日外交評論家岡本、コロナで死亡)」より一部抜粋


この記事は比較的落ち着いた内容だと思います。韓国メディアの側からすれば、自国に関する岡本さんの過去の発言に触れないわけにはいきませんから。

むしろ記事自体より、そこに付いたコメントの方が暴力的です。

「誰かが死んで厳しいことを言いたくないが、이본*1になら、それもちょっと分かってください...あいつらは人ではないので...」

「コロナが良いこともするね!」

「コロナが汚れたゴミ1つ処理したんだな 次は安倍という戦争狂の番になってほしい」


ひとつ目のコメントが、記事を読んだ時点で一番「いいね」の数が多かったものです。

私はこうした発想は、人間が根源的に持っている排他欲求の顕れではないかと思っているのですが…非常に動物的な感性だと感じます。

人間と動物の決定的な違いは前頭葉の発達です。前頭葉によって本能的な衝動を抑える高次元の働きが理性です。
そうして見ると、人間とは「理性により感情をコントロールできる生き物」と定義できます。


韓国人は自らのことを「情(정)に厚い」と言います。
慰安婦に対する「情(정)」が岡本さんの訃報に際して「恨(한)」として吹き出したのがこれらのコメントなのでしょう。

「相手が日本なら何を言っても良い。あいつらは人ではないから」…これが「情に厚い」ことであるのなら、私は薄情な人間と言われても構いません。
私には彼らの言う「情」も「恨」も、ただの衝動的・感情的な言動のように感じられます。


*1:多分、「일본(日本)」の誤字。