チェンマイ・イニシアティブ改訂発効の話

チェンマイ・イニシアティブ(CMIM)の改定契約が発効されました。
CMIMとは、ASEAN日中韓の計13カ国が参加する通貨スワップネットワークで、金融危機時にメンバー国が保有する外貨準備(ドル)を、分担金に応じて引き出すことが出来ます。

金融セーフティネットとしては、二国間通貨スワップIMFの間に位置します。


で、これについて聯合ニュースが「韓国は危機時に384億ドル引き出し可(ホクホク)」と記事にしているのですが、韓国の引き出し上限は前から変わっていません。

というか、記事をそのまま読むと「危なくなったら、韓国は384億ドル引き出せる」と読めるのですが、このように読んでしまうと大間違いです。
「危なくなった」程度の危機レベルで韓国が引き出せるのは最大115.2億ドル(30%水準)です。384億ドル丸々引き出せる時には、IMF事態に陥っています。(もちろん、これは韓国だけではなく全てのメンバー国が同じ)


聯合ニュースの記事からです。

韓国の危機の時、384億ドルの引き出し。通貨スワップチェンマイ改定協定発効


韓国銀行は23日、域内の多国間通貨スワップの「チェンマイ・イニシアティブのマルチ化」(CMIM)改定協定が発効した。

CMIMはアセアン(ASEAN東南アジア諸国連合)と韓・中・日3カ国に外国為替金融危機が発生したり、危機の兆しが見られたりしたときの緊急流動性資金を支援する域内の金融安定協定で、2010年3月に発足した。
加盟国は必要なとき、あらかじめ定められた限度内で自国通貨を提供し、米国ドルを支援される。
(中略)
引き出し可能な金額は分担金の倍数で決まる。韓国の場合、分担金(384億ドル、割合16%)に引き出し倍数1を乗じて384億ドルを危機時に引き出すことができる。
改定協定は、IMF連携資金の延長回数と再支援期間の制限を廃止することでIMFプログラムとの連携性を高めた。
IMFとの共同支援が円満に行われるように、初期の段階から記入経済状況、資金需要、政策韓国の必要性について意見交換や情報共有をするようにした。
また、危機予防のための(CMIM-PL)だけでなく、危機解決のための(CMIM-SF)支援の場合にも、信用供与の条件を貸すことができるようにした。

(後略)

聯合ニュース「한국위기시 384억달러 인출..통화스와프 치앙마이 개정협정 발효(韓国の危機の時、384億ドルの引き出し。通貨スワップ、チェンマイ改定協定発効)」より一部抜粋


日本は768億ドル出資(貢献割合32%)で、このうち半分の384億ドルを上限として引き出し可能です。

中国は本土と香港で合わせて768億ドル出資(貢献割合32%)、引き出しはそれぞれ別口で、本土が342億ドル、香港が63億ドルを上限に引き出し可能です。

韓国は384億ドル出資(貢献割合16%)で、まるまる全額引き出し可能です。

ASEAN諸国はインドネシア、タイ、マレーシア、シンガポール、フィリピンの5カ国は一律91.04億ドル出資で、2.5倍の227.6億ドルが引き出し上限になります。
その他のベトナムカンボジアミャンマーブルネイラオスは出資額の5倍が引き出し上限になっています。


さて、ここまでで分かるように、この取り決めは地域内で比較的経済優位にある国が、経済的に脆弱な国をフォローするための仕組みです。日中の引き出し額が出資額より少ないのはそのためです。

ただし、CMIMには最大の弱点があります。
それは IMF支援プログラム発動なしで引き出し可能な額は引き出し上限額の30%まで ということです。100%引き出すには漏れなくIMF支援プログラムの発動が必要になります。
そこで日本は、一部のASEAN諸国と個別に二国間通貨スワップを結ぶことで安全網を強化しています。


次にコンディショナリティについて。
コンディショナリティとは、「制約条件」です。「これこれこうします」という経済・財政政策の遂行を約束してお金を借りる、その条件のことを言います。
CMIMは単にお金を貸すだけではなく、政策提言をします。

そう、その辺りはIMFと同じです。
CMIMも乗り出して来てアレコレ口出しをするのです。

で、この時のCMIMからの提言と、その後、IMF支援プログラムを受け入れることになった場合の提言との一貫性が無いとマズイので、CMIMとIMFの間で早期に情報共有が行えるような仕組みが作られたのが今回の改訂の大きなところです。