「Welcome to Video」運営者の米国への引き渡し要求が拒否された話

2018年に閉鎖された世界最大の児童ポルノサイト「Welcome to Video」の運営者の米国への引き渡しが不許可となり釈放されました。(概要はこちら
過去の事例を見ると、韓国が犯人引き渡しを許可しなかったのは「政治犯」の場合です。ですが、今回の事件は明らかに「政治犯」には該当しません。

ではなぜか…引き渡し対象の犯人が韓国国籍者であり、既に韓国司法で裁かれた後だからです。


ニュース1の記事からです。

政治犯でもないのに…児童性犯罪ソン・ジョンオ「米国送還不発」なぜ


世界最大の児童性搾取サイト「ウェルカム・トゥ・ビデオ」(W2V)を運営したソン・ジョンオ(24)が裁判所の米国送還「不許可」決定に基づいて拘置所から開放された。

ソウル高裁刑事20部(部長判事カン・ヨンス、チョン・ムンギョン、イ・チェチャン)は6日、ソンの引き渡し審査請求事件の3回目の審問期日を開き「犯罪者を請求国(米国)へ引き渡さない」と決定した。

(中略)

法務部の関係者は「裁判所の決定を尊重し、引き渡し請求国である米国の最終的な決定内容を公式に告知するなどの追加手続きを行う予定」と明らかにした。

(中略)

最高裁によると、裁判所が犯人引き渡し審査事件の決定文を電子化した2004年から昨年までに計50件の引き渡し審査があり、「引き渡し不許可」は5件に過ぎない。その中の3件が同じ事件であることを考慮すると、実質的に引き渡しが拒否されたのは3件である。

(中略)

犯罪人道法は「引き渡し対象の犯罪が政治的性格を持った犯罪、あるいはそれに関連する犯罪の場合は犯罪人を引き渡してはならない」と規定する。

(中略)

この日のソンさんの事件は、政治的性格の事件でも、絶対的な引き渡し拒否の事由に相当する事件でもなかった。
ただし、裁判所は犯罪人引き渡し制度の趣旨「被請求国(韓国)が引き渡しをするかどうかを決定する裁量がある」と定め韓米間の犯罪人引き渡し条約の犯罪人引き渡し法任意拒絶理由の一つである「大韓民国民」である点などを考慮して「不許可」の決定を下した。

裁判所は「この事件の犯罪人を法定刑がより厳罰な米国に送って厳重な刑事処罰をすることにより正義を実現し、同じような犯罪お再発を防止しなければならない、という主張も強く提起されており、裁判所もこれらの批判と主張に共感する」とした。
ただし「検察官も認めたように、犯罪者をより現順に処罰できる場所に送ることが引き渡し制度の趣旨ではない」とし「ソンが国籍を持っている大韓民国主権国家としてソンに刑事処罰の権限をこうしすることができる」と述べた。

(後略)

ニュース1「정치범도 아닌데…아동성범죄 손정우 '美송환 불발' 왜(政治犯でもないのに…児童性犯罪ソン・ジョンオ「米国送還不発」なぜ)」より一部抜粋


米国の司法制度は、犯した罪の数毎に量刑が加算されていくので、過去には18件の犯罪を犯した当時16歳の少年に対して禁錮241年が言い渡されたことがあります。(再審請求をしていたが2018年に却下され、受刑者は112歳になるまで仮釈放も認められない。ここまでくると、正直「死刑」とどちらが残酷なのか私には分からなくなる)

この例は極端にしても、昨年、米国の司法省が公開した起訴状によると、ソンさんは9つの罪で起訴されることになっていましたから、韓国司法で裁かれるよりは厳罰になることは間違いありません。


しかし、米国で起訴されているものの中には、既に韓国司法で裁かれた内容と同種の罪も含まれており、二重処罰に相当する可能性があります。
これを無視して米国に引き渡してしまうと、韓国の司法権を自ら否定する格好になってしまうわけです。これは国家主権の放棄と同じことです。 認めるわけにはいきません。


それにしても18ヶ月の刑期や、判決直前に結婚したことで減刑(扶養家族ができたため)となるなど、被告人保護に注力しているように見えるのにはモヤモヤしたものを感じます。