パク・ユハ教授の有罪判決を批判した論文の話

「帝国の慰安婦」という書籍を書いた朴裕河(パク・ユハ)さんは2017年10月に「虚偽の事実を通じて慰安婦の名誉を毀損した」として、罰金1千万ウォン*1の有罪判決を受けました。

この判決を批判する法律論文が今年の3月に発表されていたそうです。


正直、パクさんの主張自体には共感できない部分が多い…というか、一番根っこの部分で見解の相違があるのですが、彼女がやろうろしたことは尊重されるに足るものだと思います。

少し長い記事です。前半は主に表現の自由、学問の自由の観点から裁判所の判断を批判したもの、後半はそもそもパクさんは「強制連行」自体を否定しているわけではない、ということが書かれている部分を引用しています。


メディアウォッチの記事からです。

パク・ユハ「帝国の慰安婦控訴審の有罪判決を批判する論文が出てきた


(前略)

仁荷(インハ)大学法学専門大学院ホン・スンギ教授は、今年の3月31日付けで「『帝国の慰安婦』刑事判決の批判的分析:ソウル高等法院2017の610判決を注進に」という題の論文を「法学研究」(仁荷大学法学研究所発刊、韓国研究財団登載誌)第23集第1号に掲載した。

(中略)

ホン教授は関連控訴審判決を評価する前に議論の前提として、このような学術的、歴史的事案では何よりも学問の自由と表現の自由が守られなければならないことを強調した。
彼は「学問研究では、既存の思想及び価値観について疑問を抱いて批判を行い、既存の枠組みを改善し、新しいものを創出する努力」と「その研究資料が社会で今現在受け入れられている価値体系と矛盾したり、抵触するとしても容認されるべきである」と述べた。


(中略)

また、歴史的問題は科学的な問題とは異なり、特定の事案の真偽を明確に選別することが難しい。ホン教授は最高裁の宣告(最高裁判所1998.2.27.宣告97た19038判例等)を引用し、「(歴史的問題のように)客観的史料には限界があり、視覚を異にする当たらしい資料がもつれ合って、客観的真実可どうかを確認することが用意でない事件での有罪判決を極度に自制しなければならないだろう」とした。

ホン教授が「帝国の慰安婦」の控訴審の判断で特に問題視した部分の一つに「虚偽の事実を通じての名誉毀損」と結論を下したにも関わらず、パク教授の主張がどのように虚偽の事実なのかをきちんと説明していなかった部分である。 〜(中略)〜 

控訴裁判所は、既存の通説の慰安婦強制連行説などを客観的な事実としながらクマラスワミ報告書、マクドゥーガル報告書などの国際機関の専門家の作成レポートを決定的な証拠として提示した。

しかし、ホン教授は裁判所がただ一つの「意見」であるだけの問題のレポートに過度の証拠力を付与したものと批判した。 〜(中略)〜

これと共にホン教授は、クマラスワミ報告書の場合は、朝日新聞で最終的に誤報認定などの議論の余地が大きかった「吉田清治の強制連行証言」を主な論拠として引用した不備があることを特に言及することもした。

一方、パク・ユハ教授が慰安婦強制連行説を否定してしまったことで無条件に結論を出したのも控訴審の判断が持つ致命的な問題である。慰安婦強制連行説も、実は様々な理論があるからである。

ホン教授は「慰安婦運動を主導した研究者は、日本の植民地朝鮮の人材動員方式を(軍と官憲だけでなく、民間の雇用詐欺、人身売買まで含めて)包括的に『強制動員』と把握する」としながら、慰安婦強制連行説がもともと外縁の広い概念であることを指摘した。

ただし、慰安婦強制連行説の中で「日本軍による直接かつ物理的な慰安婦強制連行説」は根拠不足により今、学会ではこれ以上受け入れられていない。ホン教授も「訓練された帝国軍が制服を着て、朝鮮半島を突き抜けて進み、幼い少女を銃刀で脅かして慰安婦に持ち込んだという主張の説得力は疑問」と指摘した。

ホン教授は「『帝国の慰安婦』は、帝国軍による物理的な強制が慰安婦動員の「主な方式」ではなかった、という点を述べている」と述べた。つまり、パク・ユハ教授は当時の時代的状況の構造的暴力の問題に注目する他の観点の強制連行説を説いたのであって、強制連行説の全面否定論を展開したのではない、ということ。

(後略)


メディアウォッチ「박유하 ‘제국의 위안부’ 항소심 유죄 판결 비판하는 학술논문 나왔다(パク・ユハ「帝国の慰安婦」控訴審の有罪判決を批判する論文が出てきた)」より一部抜粋


パク・ユハ教授の「帝国の慰安婦」はここで要約(日本語)を読むことができます。元はフェイスブックにアップされていたものが支援サイトに公式に転載されたものです。


パク・ユハ教授は「日本軍による」強制連行は否定しています。ですが、強制連行自体は否定していません。それが、記事中に書かれているように「就職詐欺」や「人身売買」を広義の意味での強制連行と捉える論理です。
先に紹介した要約の中でも、日本には「『戦争』責任以前に『植民地支配』責任として問われるべきである」となっています。

その前提のもと、パク氏は日本による「植民地支配の結果、(朝鮮人女性たちは)慰安所に送られて『地獄』のような生活をした」とし、日本政府に対して植民地支配の「贖罪」をすべき、としています。


「民間の雇用詐欺」「人身売買」といった、当時の朝鮮人身内食い 犯罪行為まで 強制動員(日本のせい)にされるのは、私にはちょっと納得いきません。植民地支配ではなく併合ですから。

こんな前提で「和解が大事」と言われても「は?」となります。そもそも、私は「和解できない、必要ない」派ですし。


*1:約870万円