「和合」は思想の統一ではない、という話

李承晩・元大統領は、日本の立場から見れば決して親日の人ではありません。何せ、李承晩ラインを勝手に引いて竹島の領有権を主張し、「ラインを超えていた」という理由で公海上でも日本の漁船を拿捕していますから。


一方で韓国では「親日派」扱いされることがあります。

これは、李承晩が「反共産主義者」であり、「反共に執心するあまり、親日派の処分が疎かになった」という見方があるためです。

また、「反日種族主義」の著者をはじめ、多くの保守論客が李承晩支持派であることから、李承晩を叩けばこれらを一網打尽に「親日派」認定できる、という利点があります。


聯合ニュースの記事からです。

光復会長「李承晩、親日派と結託。清算できなかった歴史続いている」


キム・ウォンスン光復会長は光復節の15日、李承晩元大統領が親日派と結託して、私たちの社会が親日清算を果たしていないと主張した。


(中略)


彼は「李承晩は反民族行為特別調査委員会を暴力的に解体して、親日派と結託した」と李承晩元大統領を肩書なしで呼び、批判した。

続いて「大韓民国は民族反逆者を正しく清算していない唯一の国となり、清算していない歴史が今も続いている」としながら、代表的な例として親日行跡が明らかになった音楽家、安盆泰が作曲した歌がまだ国家として使われていると指摘した。


(中略)


また、国立顕忠院に親日兵士をはじめとする反民族人士69人が埋葬されているとして、彼らの墓の改葬を骨子とする国立墓地法改正案が国会を通過しなければならないと主張した。


(中略)


最後に、キム解消は「親日未精算は韓国社会の基礎疾患であり、反省のない民族反逆者を抱え込むことは、国民和合ではない」とし「親日清算は、国民の命令」と強調した。


(後略)


聯合ニュース「광복회장 "이승만, 친일파와 결탁..청산 못한 역사 계속돼"(光復会長「李承晩、親日派と結託。清算できなかった歴史続いている」)」より一部抜粋



反民族処罰法は1948年に李承晩政権によって施行されたもので、同法に基づいて反民族行為特別調査委員会というものを設置しています。

ところが、1949年に警察幹部が親日派の経歴ありとして逮捕されると、ソウルにあったこの委員会の事務所を警察に包囲させ、解散させてしまいました。

これが「暴力的に解体して親日派と結託した」とされる部分です。


しかし、逮捕された警察幹部ら(身内)を守るためだったとすると、「法より情」という、実に韓国人らしい行動だったと思うのですけれど、いかがでしょう?


「歴史を清算」という考え方は、韓国的というか、儒教的というか...絶対的な「正しい姿」があることが前提とされたものだと思います。


民族反逆者とは何でしょうか?

韓国が「こうだ」とする考えに全面的に賛成しない人のことではないでしょうか?

客観的・合理的に判断すれば間違っている、あるいは批判されるべきことでも、「民族」を前面に出して称賛しなければならないとする思想(精神論)です。


私は「和合」は思想の統一(均一化)によってなるものではないと思います。

思想の多様性を失った社会は「和合」したのではなく「教化」されたのです。

そうした社会は、一つの流れにそのまま流されていってしまいます。

そうなると自分ではもう途中で止まれません。止まることは「間違い」を認めることになりますが、統一された思想の「間違い」を認めることは、国そのものが「間違っている」ことを認めることになるからです。

日本は既に一度、その危うさを経験しています。75年前の今日、流れの行き付く先を見たのです。