ベテルギウスが暗くなった理由の話

去年の10月頃から今年の2月にかけて、オリオン座の右肩のベテルギウスの光度が急激に暗くなる現象が起きていました(参考)。もともと周期的に明るさの変わる星ではありましたが、ここまで暗くなるのは初めてでした。

今回、研究グループから発表されたレポートにより、原因が塵である可能性が高くなりました。


ハーバード・スミソニアン天体物理センターの研究グループがハッブル宇宙望遠鏡などの観測データを元に発表した研究報告によると、昨年の10月から11月にかけてハッブル宇宙望遠鏡は、ベテルギウスの南半球から放出された高密度・超高温のプラズマがベテルギウスの大気中を時速30万kmという高速で外側に向かって移動している様子を捉えていました。


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研究グループは、このプラズマが冷えて塵の雲が形成された結果、地球側からベテルギウスが塵の雲の隠されてしまったため「暗く見えた」と推測しています。


また、ベテルギウスの膨張・縮小を加速したデータとも照らし合わせた結果、減光が始まると同時に膨張速度が低下し、一番暗くなったタイミングで収縮が始まっていることからも、膨張がプラズマの放出を活発にさせた可能性も指摘されています。


いずれにせよ、この現象自体と超新星爆発との関連性は低いようですけれども、ベテルギウスは現在、太陽の3000万倍という、ちょっとピンと来ないペースで質量を失い続けています。

その中でも今回のプラズマ放出は、通常の2倍に相当する質量が南半球だけで一気に放出される、という異例の事態だったことは確かなようです。