差別語も場所によって変わるもの、という話

「Ailien(エイリアン)」という英単語を聞いて、何を思い浮かべますか?
恐らく、日本人のほとんどが「宇宙人」を思い浮かべるのではないでしょうか?

語源はラテン語の「Alius(アリウス)」で、「その他*1」の意味があります。「見知らぬ人」や「外国人」「よそに属する人」という意味合いで使われていたようです。
本来は「宇宙人」ではなく「外国人」を指す普通の単語ってことですね。


ただ、英語を母語としない日本人にとっては「Ailien」というと、どうしても地球外生命体を連想してしまうため、差別的な表現と取られることがほとんどです。

お隣の韓国でも似たようなものらしく、外国人登録証の英字表記「Ailien Registration Card」を「Residence Card」と変更することになったそうです。


ニューシスの記事からです。

外国人登録証「エイリアン」表記を取り除く...54年ぶりに変更


(前略)

1966年に初めて発行された外国人居住許可証(Alien Residence Permit)以降、外国人登録証の英字の外国人は「エイリアン」と表記されてきた。「エイリアン」には「外国人、異邦人」の意味が含まれており、これまでに排他的な五感がある、という指摘を受けてきた。

今年5月に発足した第1期法務部「社会統合移民者メンター団」も、この言葉が外国人に対して排他的な認識を植え付ける恐れがあるため改善を提案し、法務部はこれを積極的に反映することにした。外国人登録証の最初の発行以来54年ぶりだ。

(中略)

法務部は今年、施行規則の改正を完了し、来年1月から発行される外国人登録証には、新しい英字表記が使用されるように推進する予定である。

(後略)

ニューシス「외국인등록증 '에일리언' 표기 없앤다..54년만에 변경(外国人登録証「エイリアン」表記を取り除く...54年ぶりに変更)」より一部抜粋


ちなみに日本は現在、外国人登録証ではなく在留カードに変わっています。在留カードの英字表記は「Residence Card」です。
日本だけでなく、中国や欧州ではこの表記が一般的です。


では、「Ailien(エイリアン)」という表記が差別的なのか、というとそうとも言い切れません。
米国では政府が公式に「アメリカ合衆国の市民・国民ではない人」を指す時に「Ailien」を使います。(外国人登録番号=Ailien Registration Numberなどなど)


差別語かどうかは、それぞれの地域で社会的にその単語がどう使われているか、どう受け止められているか、という部分も絡んでくるんだなぁ、と感じた次第です。

日本では映画とともに「エイリアン=地球外生命体」という意味で一般に広がったために、この言葉は人を指すには不適切に聞こえちゃうんですよね。
恐らく、韓国や中国などの非英語圏でも同じなんでしょう。

一方で米国では、ある意味本来の「その他の人」の意味で使われているので、差別ではなく必要な区別の感覚なんでしょうね。


*1:プログラミング言語ではお馴染みの条件分岐文if..elseのelseも同じ語源。