「韓国の法治は崩れつつある。国際法的視点が必要だ」という話

現政権によって韓国の法治が崩されつつある、と嘆くコラムがあったので紹介します。
崇実(スンシル)大学というところのイ・ウルヒョン法学部教授の文です。
かなり長いコラムで、いろいろ寄り道しながら進むのですが、最後は日韓基本条約に着地します。

結論部のみざっくりまとめると、

日本は国際法をよく研究している。韓国は場しのぎ的に対応している。
日韓併合時代のような法制からは脱するべき。
古い法制は捨てて未来志向になるべきだ。
徴用問題も法的に処理する問題。

こんなことが書かれています。


スカイデイリーの記事からです。

法は誰のためにあるのか


私たちの大韓民国の体制は封建体制や社会主義体制とは異なり、自由競争が原則でありその裏付けとして契約の自由と人格の対等と財産権の尊重という3つの大きな柱によって成り立っている。

ところで、今国会では法治国家で想像も出来ない不動産税法*1を通過させると、文明国では見られない法務部長官が検察総長を職務停止にした*2という記事を見て驚愕を禁じ得ない。このようなことはあり得ないことだ。
また、最高裁の判断も待たずに高捜処*3法を制定しようとする国会は時代錯誤である。何のためにこのような法案を議論しているのか、法を学んできた法科の学生として理解ができない。与野党を問わず、法体系を崩していることを知らずにいる。

(中略)

私たちの法体系は先進国のように契約自由の原則と所有権尊重の原則と自己責任の原則、この3つの原則を根幹に市民法が作られている。
この根幹を崩すことはとても間違っている。無能な政権はもっぱら特殊な事情を掲げ、このような時代錯誤的な法を制定している場合を見るに、だから駄目なのである。当然、政権は歴史的な法を制定して国民が自由に繁栄を享受して暮らせるようにしなければならないのである。

(中略)

私たちは自由市場経済の国で契約も所有も、自由競争が原則であるためには自己責任のもとに行われなければならない。ところが、これを国家がいちいち干渉して規制と制御をするのは誰のためのものなのか。このような政策は後進国でも政策的ではない。

(中略)

明らかなことは、国際水準に至っていない国が先進国となった例はない。私たちも今はOECD加盟国のプライドを持って国際的視点から法を制定し、先進化のための法制定でなくてはならず、日帝強占期の法制を脱することが出来ない法を制定してはならない。

(中略)

私たちの国際化の障害となるのは「政治の鎖国的、独断的、独善的な姿勢が問題」と見ている。新聞を見ると駐日大使内定者も「徴用問題、知恵を絞ればよくなるだろう」というけれども、これも法的に処理しなければならない。
日本は韓日協定が問題だというのに、我が国の政治家はまだ日本の属性を正しく知らない。彼らは韓日協定時点が優先的なことが法的な事とし「最高裁判所の判決は韓日協定違反」であるため、これを適切にすることを望むものである。私たちはこれもグズグズと超えていこうとするが、国際法で解決するようにしなければならない。

私たちが反省しなければならないことは、法的思考が無かった問題だ。韓日協定は、日本では法的に一段落を付けたとして日本の立場を用意したが、私たちはすべての事案が適切だったことがほとんどない。
日本は政治家が国際法なども深く研究して分析し協議に臨むのに対し、私たちは即興である。研究すること無く急いで締結してきちんとしたことがない。

(中略)

私たちは韓日協定制度に異議があれば「条約に関するウィーン条約;Vienna Convention On The Low of Treaties*4」に「条約の無効、停止に関する規定」について規定する第5部(42条〜72条)の規定を援用すれば良いと最高裁判決としたのは日本に口実を与えたので菅首相は韓国が先に整理することを要求しているのだ。

(後略)

スカイデイリー「법(法)은 누구를 위하여 있는 것인가(法は誰のためにあるのか)」より一部抜粋


全ての規制は自由競争を侵害するものだから駄目だ、というのはまた極端過ぎる気がしますけどね。
規制無き自由は混沌と同義です。
法は規制と同時に権利を保証するという側面もあるもので、社会的弱者の権利を守るための規制は一概に駄目とは言えないでしょう。


とはいえ「徴用問題も法的に処理すべき」とする考え方と根拠となる日韓基本条約の捉え方は理に適っていると思います。

「法的に処理する」というのは、一定の基準に沿って一貫性のある対応が必要、という意味でありますから、韓国人が大事にしている「情」とは相性が悪いかもしれませんね。「情」に絆されると一貫性がなくなってしまいますから。


*1:8月に国会を通過した改正法案によると、3戸以上、あるいは対象地域に2戸以上の住宅を所有している人に対し、現行は0.6〜3.2%で適用されている不動産税を1.2〜6.0%まで引き上げる。

*2:職務停止になったユン・ソクヨル検察総長は、ムン政権が進める検察改革の大きな障害だった。
 職務停止命令を出したチュ・ミエ法務部長官は兵役中の息子さんが電話で休暇延長を申請したとして問題になっており、検察が捜査した。(職務停止命令との関連性は不明)

*3:高位公職者犯罪捜査処。組織自体は既に出来上がっていて、実際に機能させるために法案が必要。
 裁判官、検事、警察などに対して捜査、起訴する権限を持っている機関で、司法を事実上「検閲」する機関という指摘がある。

*4:記事の原文ママ。ただし、恐らくスペルミス。正しくは「Vienna Convention On The Law of Treaties」。