ナイキのCMの話

最初に断っておきますと、私は件のナイキのCMを見ていません。(興味のある人は先にこちらをどうぞ)
「スポーツに打ち込む在日外国人の子どもたちが『差別』という逆境を乗り越える」というような内容らしい、ということしか知りません。

差別やイジメは世界中どこででもあるし、人間が人間である以上、絶対になくならないと思っているのでCMにそれ以上興味はありません。
というのも、差別やイジメは人の生存本能に直結するものだと感じているからです。自分の生存確率をあげるために自分たちと「違う」個体を群れから追いやるのが差別やイジメの本質だと思います。
災害や社会情勢が不安定になる(人々に余裕が無くなる)たびに差別問題が浮き上がるのはそのためです。

じゃあ、興味もないのになぜこのネタを取り上げたのかと言うと、このCMへの日本人の反発を取り上げた海外メディアの報道でゲストが立ち入るべき主題ではないと指摘している意見があったからです。
本能的なものですから差別は無くならないでしょうが、それが良いことなどとは微塵も思いません。少なくとも抗うべきです。前頭葉をフルに使って。

ただし、それは自浄作用としてであって、外から土足で持ち込んだ物差しでアレコレ言われる筋合いはありません。しかも自分たちも差別を克服していない人たちから。

このモヤモヤした感じを的確に言い表してくれたように思います。


BBCの記事からです。

日本で反発を引き起こしているナイキの多様性広告


(前略)

しかし、SNSのいくつかのコメントはナイキが差別の規模を誇張していると述べ、日本を選んだことはフェアではないと主張した。ある人はナイキ製品をボイコットすると脅した。
あるコメントは「この種の差別は日本全国どこにでもあると言わんとしているようだ」と述べた。
しかし、人種差別の問題を強調するために「未来は待っていない」というタイトルの広告について肯定的なコメントもあった。

なぜ人々は怒っているのか?
「多くの日本人は、彼らのやり方を変えるように外部から言われるのを好みません」と、日米ハーフのジャーナリスト、モーリー・ロバートソンは言った。
「しかし、外国人が日本の文化や日本のルールを深く理解していることを示せば、そうでない場合に攻撃するだろう人からも賞賛されるでしょう」

「アジアの波を乗りきる:新しい世界秩序で生き残り、繁栄する方法*1」の著者であるスティーブ・マッギネスは広告が「オウンゴール」であると信じている。
「風土病である人種差別はどの文化においてもデリケートな話題となるでしょう。しかし、ナイキは外国のブランドとして、彼らがそれを彼らのホスト*2に指摘することが適切だと考えるべきではありません。
彼らは多くの人がゲストの立ち入りを禁止すべきだと感じている主題に大雑把にスポットライトを当てています。それはナイキにとって大きなオウンゴールです」


ブランド損傷?
ナイキだけがアジアの文化や消費者の行動を理解していないことで非難を受けている西洋ブランドではない。
昨年、フランスの高級ブランドのディオールは台湾を除いた中国の地図を使用したとして批判されました。
台湾は1950年代から自治権を持っていますが北京の公式方針では台湾は中国の州です。

「経営陣はアジアのプライドとアジアの消費者による地元の文化を過小評価する可能性があるため、傲慢さと自己満足はアジアにおける西洋ブランドの最悪の敵になる可能性があります」と、アジアビジネスのブランド・アドバイザー兼作家のマーティン・ロールは述べている。

「2020年にアメリカまたはアメリカのブランドは人種差別を高く評価し、彼らが間違っていることを世界に伝えるべきでしょうか?」マッギネス氏は付け加えた。「明らかに、多くの日本人はそうすべきではないと考えています」

(後略)

BBC「Nike's diversity advert causing a backlash in Japan(日本で反発を引き起こしているナイキの多様性広告)」より一部抜粋


きっと一言で言うと「余計なお世話」なんでしょうね。

これでナイキに幻滅して買わないという人も賛同して買うという人も好きにすればいいです。大多数の日本人の購買行動は変わらないと思いますし、それで良いでしょう。


*1:原題「Surfing the Asian Wave: How to survive and thrive in the new global reality」

*2:この場合「宿主」というより「進出国」という意味合いで捉えた方が良さそう。