軍艦島について「日本は約束を守っていない」という話

明治産業遺産について保全状況報告書が出されました。「強制労働を知らせる」とした約束を守っていない、ともちろん韓国側から物言いがついています。
が、「日本が約束した」と韓国が主張する内容が「強制労働の事実を知らせる」→「犠牲者を称える」にグレードアップしたようです。
こういうことをするからどんな案件でもすぐに「後頭部を殴られた」となるんじゃないかなぁ、と思います。


聯合ニュースの記事からです。

日、世界遺産上に軍艦島報告書...韓国と協議無く歪曲変わらず


(前略)

4日、外交部によると日本政府が世界遺産に登録された近代産業施設と関連して提出した「解釈戦略履行現況報告書」が1日、世界遺産センターのホームページに掲載された。
この報告書は産業遺産全体の歴史を理解することができる「解釈戦略」を用意するよう世界遺産委員会の勧告を履行するための、日本政府のこれまでの措置などを盛り込んだ。

先に日本は、2015年の産業遺産登録の過程で韓国などの反発が続くと、1940年代にいくつかの施設で多くの韓国人が本人の意思に反して動員され過酷な条件で強制労働した事実を理解することができる措置をとる、と発表した。
犠牲者を称えるための情報センターの設置などの適切な措置を解釈戦略に盛り込むともし、このような約束は登録当時の世界遺産委員会の裁定にも含まれた。
しかし、日本は今回提出した報告書でもそのような約束を守らなかった。

(中略)

日本は産業遺産情報センターに日本の労働者と韓半島など他の国出身の労働者が同じように過酷な環境に置かれていたことを理解することができる内容の展示を行ったと説明した。
これは強制労働の事実を正しく知らせ、犠牲者を称えるための措置をするという日本の約束と距離がある。

(中略)

政府は日本が登録当時の約束を履行していないことについてユネスコ世界遺産委員会に引き続き問題を提起する計画である。
ただしユネスコの規定上、施設の保全が不十分であれば世界遺産を取り消すことは可能だが、遺産の解釈を問題視して登録を取り消すことは難しく、そのような事例もないというのがユネスコの立場と外交部当局者は説明した。

聯合ニュース「일, 세계유산위에 군함도 추가 보고..한국과 협의없고 왜곡 여전(日、世界遺産上に軍艦島報告書...韓国と協議無く歪曲変わらず)」より一部抜粋


「解釈戦略履行現況報告書」を日本語でなんというか知りませんので訳をそのまま使います。
もし内容に興味ある人が居れば、ここでpdfが公開されています。「State of Conservation Reports by States Parties(締約国による保全報告書)」の2020の欄です。参考までに。


韓国メディアではこれまで「朝鮮人が本人の意思に反して(against their will)、強制的に労働をした(forced to work)事実を歴史展示館などを通じて知らせると約束した」というのが基本の報道内容でした。
今回の記事にもそれは含まれています。ですが、それがすぐ後ろで「(強制連行された)犠牲者たちを称えると約束した」にスリ変わっています。
ちょっと飛躍しすぎですし、何より世界遺産登録時に裁定に含まれていたのなら世界遺産委員会が何かしら問題視するはずです。それが無いのであれば、韓国が「日本がやる」とした措置を都合よく解釈した結果、尾ひれ背びれがついて「約束」が独り歩きしているのではないか、と思えてなりません。
2015年の協議時点で日本と韓国の「強制労働」に対する認識がズレていたというのは明らかですし。(くわしくはこちら


世界遺産委員会に働きかけても埒が明かないと思ったのか、韓国では最近「ユネスコ世界遺産国際解釈説明センター」なるものの設立が進められています。
センターでは「世界遺産の解釈と説明のための研究を行い、国際社会にユネスコ世界文化遺産の解釈の根拠資料を提供する」としています。
ポイントは「韓国の」世界遺産ではなく全ての世界遺産が対象という点です。よその国の世界遺産であっても「韓国の」解釈を国際社会に知らせます、ということです。

このセンターの設立を法的に裏付けるために法案改正を進めた議員は「韓国の歴史を守護するための外交力を高めることができる」と記者会見で答えています。
何がしたいのか察せますよね?