対北ビラ禁止法、国連の人権状況特別報告者にも不評な話

韓国の対北ビラ禁止法は14日に本会議を通過し成立しました。
これについて国連の北朝鮮人権状況特別報告者も批判的な立場を取り、見直しを勧告する考えだそうです。


イーデイリーの記事からです。

国連北人権報告官「韓国、対北ビラ禁止法を見直すべき..懲役刑過剰」


(前略)

米国自由アジア放送(RFA)によると、トマス・オヘア・キンタナ国連北韓人権特別報告官は16日(現地時間)、論評を通じて「対北ビラ散布禁止法を施行する前に関連する民主的な機関が適切な手続きによって改正案を見直すことを勧告する」と述べた。

(中略)

特に「対北ビラ禁止法は北韓住民と疎通しようとする脱北者市民社会団体の活動に厳格な制限を加えた措置だ」と批判した。また「大部分のこうした活動は世界人権宣言19条に基づき表現の自由で保護されており、南北住民はこれにより国境に関係なく情報と考えを取り交わす権利を享受する」と付け加えた。
キンタナ氏はまた今回の改正案が様々な問題を含んでいると指摘し「最大懲役3年の処罰は過剰禁止の原則を損なう可能性がある」と述べた。人権に関する行動の制限措置は最も侵害が少ないものでなければならないが、民主社会の核心である「表現の自由」を基盤に行われた活動に懲役刑の処罰は行き過ぎだという説明だ。

(中略)

一方、統一部は15日に配布した説明資料で「政府は北韓住民と実質的な人権改善に向けた市民社会と国際社会の努力を支持する」と述べた。統一部は「ただ、南北間対話と交流協力の拡大、国際社会との接触面の拡大など、正常かつ多角的なやり方がむしろ実質的な人権改善によって効果的にだという認識の下、ビラ散布などの国民の生命・安全を脅かし、南北間の緊張を高めるやり方で行われてはならない」と述べた。

イーデイリー「유엔 北인권보고관 "韓, 대북전단법 재고해야..징역형 과잉"(国連北人権報告官「韓国、対北ビラ禁止法を見直すべき..懲役刑過剰」)」より一部抜粋


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この法案について、韓国は北朝鮮に屈服したという米国側の批判はこの前紹介しました。
ちょっと見方を変えてみましょう。韓国側の真意は何なのか。

17日にソウルで「2020グローバル・インテリジェンス・サミット」が開催され、その中で「ポスト・コロナ:情報、北韓と平和」を主題に特別セッションが行われたそうです。
2021年の上半期が北朝鮮との核交渉において重要な分岐点になるだろう、という見方が示されています。

セッションに参加したキム・キジョン国家安全保障戦略研究員院長は次のようなことを言っています。

「2021年上半期はとても重要な転換点、あるいは機になるだろう」とし「2018年の状況を再現するか、再び冷戦に回帰するのかは来年の上半期がとても重要だ」と展望した。
彼は「安保を重視する一派は『核兵器なしに我々は生存できない』と信じており、それと反する一派との論争があり得る」とし「キム委員長は(安保を重視する一派とは逆の)一派になる必要がある。もし彼らの声を聞くようになれば、様々な人道主義的支援も可能だろう」と述べた。

ニュース1「한·미 전문가 "내년 상반기가 '북핵 협상'의 주요 분기점"(韓・米専門家「来年上半期が『核交渉』の主な分岐点)」より一部抜粋



つまり、韓国はキム氏に「核兵器がなくても大丈夫」と安心してもらう必要があると考えており、そのためにはイタズラに挑発を行うようなビラ散布は邪魔に見えているわけです。

なるほど一理あるように思えます。
けれど、これは恐らく望み薄な未来です。

なぜなら、北朝鮮が核に拘るのは安保であることに間違いはないでしょうが、その安保の意味するところは「キム王朝の存続」だからです。
北朝鮮が核を諦め積極的に国際交流をはかり始めたら次に要求されるのは当然「解放」です。人道支援や開発で色んな国から口出しされて資金力や知恵をつけた北朝鮮住民はキム一族を許すでしょうか?(どこかの国の機関からの工作だってあるかもしれません)
同じ民族である韓国の歴代大統領の末路に照らせば、キム一族は権力の座から引きずり降ろされて断罪される可能性の方が高いでしょう。
北朝鮮の高官たちも似たような処遇になるはずです。その程度のこと、重々承知していると思うのです。