まだまだ広がる「対北ビラ禁止法」への批判の話

対北ビラ禁止法について韓国では「諸外国から批判されている」というスタンスでの報道が主です。
今までは主に米国や英国からの伝聞形式の声でしたが、ハリス駐韓大使が直接カン・チャンイル駐日大使内定者に伝えた懸念や日本の朝日新聞のコラムまで取り上げられるようになっています。
表現の自由に関する懸念ですからメディアとしては無関心では居られないのでしょうけれども、外国メディアや外国の要人の「口」を借りる形でしか物が言えない雰囲気が既に出来上がっているのでしょうか?


中央日報の記事からです。

【単独】ハリス「対北ビラ禁止」「5・18処罰法」に懸念表明

ハリー・ハリス駐韓米国大使が最近、カン・チャンイル駐日大使内定者と非公開面談し、韓国の通称「対北ビラ禁止法(南北関係発展法改正案)」と「5・18歪曲処罰法」について「表現の自由の侵害」と憂慮を表明したことが確認された。

(中略)

ある外交消息筋は「この席でハリス大使が先に対北ビラ禁止法と光州関連法(5・18歪曲処罰法)の話を持ち出して人権と表現の自由(侵害)問題がないか尋ねた」とし「関連法に関心が高いようだった」と伝えた。
ハリス大使がこの席で対北ビラ禁止法や5・18歪曲処罰法などについて露骨に評価したわけではないが、これを取り上げたというだけで米国内の雰囲気を反映したのではないかという解釈が出ている。

(中略)

対北ビラ禁止法と5・18歪曲処罰法が国会本会議を通過した後、国内外では韓国内の表現の自由が委縮する恐れがある、という問題提起が続いた。民主主義と人権を強調してきたバイデン新政権が発足すれば韓米葛藤の元になるという指摘も出た。

(中略)

一方、ハリス大使はカン氏と会った席で「中国に関連し、韓国は中国と米国の間でどのようにしていくのか」と尋ねたという。カン内定者がまず韓日米の三角協力の重要性を強調し、米国が一方の肩を持たずに中立に立ってほしいと言うと、直ちにハリス大使が韓国の対中国への立場について聞いたというのだ。
これに対しカン内定者は「私は駐日大使内定者なので、中国について深く考えたことがない」と言うとハリス大使は「政治的答弁じゃないか」と冗談を言ったという。

(後略)

中央日報「[단독]해리스, '대북전단금지''5.18처벌법' 콕 집어 우려 표명(【単独】ハリス「対北ビラ禁止」「5・18処罰法」に懸念表明<)」より一部抜粋


5・18処罰法とは、1980年5月に起こった光州事件(5・18民主化運動)について「憲法秩序破壊罪と人道に対する罪に対抗して市民が展開した民主化運動」と定義し、討論・講演・出版・街頭演説などにおいて「異論」を唱えることを罰する法案です。懲役5年以下または罰金5千万ウォン以下に処されます。

直接は関係ないのですが対中政策に関する部分もちょっと抜き出してみました。
ハリスさんは非常に分かりやすいメッセージを送っていますね。「日米韓関係で米国に中立に立ってほしいなら、韓国は中国ではなく米国サイドに立つべきだ」と。
カンさんは「政治的に」回答を避けましたが逆に考えれば「韓国は米国サイド」と明言できない状態だ、ということの証左でありますし、カンさんの器はその程度ということでもあります。
今後、日米韓関係を考えるときにカンさんに配慮したとしても米中関係における韓国の立場は米国にとってプラスに働かないと見抜かれたかもしれません。



次に朝鮮日報の記事からです。

日進歩メディアも「対北ビラ禁止法」批判の社説

米国と英国で「対北ビラ禁止法」に対する批判世論が高まる中、日本の朝日新聞も21日付の社説を通じてムン・ジェイン政権が「独善的な手法を改めねばならない」と批判した。

日本の進歩勢力を代弁する朝日新聞はこの日「自由の原則を守らなければならない」という社説で対北ビラ禁止について「北朝鮮の不合理な要求に屈服し、市民の権利に制限を加えるような措置は再考しなければならない」と主張した。

(中略)

朝日新聞は「北朝鮮は今年6月、ビラ散布を理由に南北共同連絡事務所を爆破したが、これは口実に過ぎない」と伝えた。「(対南)交渉戦術の一環として挑発を断行したに過ぎないとみられる」と指摘した。

朝日新聞はユン・ソクリョル検事総長の懲戒も取り上げ、高級公職者犯罪捜査処の新設も批判した。社説は「(最近の韓国社会の)対立の根はムン政権が推進する検察改革」とし「高位公職者の不正を操作する独立機構の新設ではなく、検察の権限を大幅に縮小する構想を立て、(関連)法改正も野党の反発の中で通過した」と述べた。続いて「政府・与党に有利な操作を要求しているという懸念は拭えず、司法府の独立を脅かす可能性もある」と指摘した。

(中略)

朝日新聞の同社説は70 - 80年から韓国の民主化運動を支援してきた日本のリベラル(進歩)勢力がムン・ジェイン政権に対して失望していることを代弁するという評価だ。朝日新聞慰安婦問題を日本の影響力のあるメディアの中ではじめて提起し、韓日ワールドカップ共同開催などを主張し、韓日和解に向けて努力してきた。2017年5月のムン・ジェイン政権発足当時は期待感を見せていたが、最近は韓国の政権勢力が韓日関係に無関心だ、とし数回にわたって批判してきた。

朝鮮日報「日 진보매체도 '대북 전단 금지법' 비판 사설(日進歩メディアも「対北ビラ禁止法」批判の社説)」より一部抜粋


リンク先の朝鮮日報の記事に朝日の社説の全文が写真で載っています。(著作権とか大丈夫なんでしょうか?)
その表現と比べると訳の方はニュアンスが少し違っているかもしれません。これは日本語原文→韓国語訳記事→再度日本語訳の過程で微妙に変化してしまった部分になります。