「韓国はアジア太平洋地域で疎外」という話

スタンフォード大学アジア太平洋研究所のシン・ギウク所長がソウル経済とのインタビューで「韓国はアジア太平洋地域で疎外されてるから日本との関係改善に乗り出せ」といった趣旨のことを述べました。米側から見ると、アジア太平洋地域を主導している同盟国は日本、という立場です。

韓国メディアの報道では「日本は疎外されている」が米朝会談あたりをピークに盛んでしたが、後になって実はトランプさんに再三「拉致問題」を取り上げるよう安倍さんが働きかけていたことが分かっています。外側(米国)から見るとこう見えているんだよ、という警告のように思えます。

また、内容的にはムン・ジェイン政権に都合の悪いものです。今まで政権の太鼓持ちのように耳に心地よい報道ばかりしてきたメディアへの求心力低下が顕在化してきたようにも取れます。
今年4月にはソウル市長選があります。来年の大統領選の予備選挙(前哨戦)を控えて、メディアも乗り換え準備を始めているのかもしれません。


ソウル経済の記事からです。

「韓、日と葛藤するアジア太平洋地域で疎外...ムン政府、関係改善に乗り出さなければ」


シン・ギウク・スタンフォード大学社会科教授兼、アジア太平洋研究所長は17日(現地時間)、韓国が北の核問題に集中しながら日本と葛藤している間に「インド太平洋地域から阻害された」とし、バイデン行政部では韓日関係が主要イシューとなると指摘した。そして、バイデンチームが人権問題を重視し、北韓についてよく知っているため、韓国政府が焦らず徐々に接近することを求めた。

シン所長はソウル経済との電話インタビューで「ドナルド・トランプ大統領は(韓日関係に)関心がそれほどなく、クアッド(Quad)を作ったのもそうで日本の米国のインド太平洋戦略を主導的にしてきた」とし「冷静に米国の立場から見れば、安倍晋三元首相がこの地域でかなりのリーダーシップを取っただろう」と評価した。続いて「バイデン政権後、日本では米国に中国牽制のためのクアッドや日本が作った包括的・経済的環太平洋経済パートナー協定(CPTPP)を利用しろ、という話がよく出てくるだろう」とし「事実、これまで韓国はこの過程で疎外された。韓国政府は中国の立場を考慮する必要があるが、日本とオーストラリア、インドが参加したクアッドでも疎外された」と付け加えた。事実上、ムン・ジェイン政府期間中、自由民主主義諸国との連帯の輪が相対的に緩んだとの意味に取れる。

彼は「これから日本が出てくる場合、韓国がどのように立場を整理するのか、このまま疎外されるのか、方向転換するのか、このような問題がある」とし「これを考慮すると韓日関係は単に両国との関係を超えてとても重要な問題だ」と強調した。

(中略)

シン所長は「韓日関係を修復しなければならないが、ムン・ジェイン政府がどれほど重要に考えるか分からない。意志がないようだ」とし「非常に懸念される部分が韓日関係」と憂慮した。

北韓の核問題はバイデン政府の優先順位が高くないと見た。彼は「北韓問題に米国大統領が直接関心を持ったのはトランプが唯一だった」とし「バイデンは就任初期には余裕がなく、少なくとも夏にならないと具体的な立場を決められない」と説明した。またシン所長は「バイデン政府はオバマ政権の『戦略的忍耐』には戻らないだろう。 北韓の核とミサイルの能力がかなり向上し、状況が変わった」とし「バイデン政府はオバマの戦略的忍耐より積極的だが、トランプほどではない、その中間くらいになるだろう」と予想した。

ただし、バイデン政府の人権重視政策が変数になり得ると見通した。シン所長は「韓米関係で日本と共に憂慮されるのが北韓の人権問題」とし「バイデン政府は人権と民主主義的勝ちをかなり重視するが、韓国はこれまでこれを横に伸ばしてきた。対北ビラ禁止法もそうだが、韓米間には北韓人権問題をめぐる葛藤があるだけに(新政権発足後)最初の6ヶ月が重要だ」と述べた。また「(バイデンが)外交をよく知っており、うかつに米国で北韓関連の話をして逆風を受けることもある」とし「北韓問題はあまり急がずに韓米が早いうちに虚心坦懐に話を交わす必要がある」と伝えた。

ソウル経済「“韓, 日과 갈등하다 아태지역서 소외···文정부, 관계개선 나서야”(「韓、日と葛藤するアジア太平洋地域で疎外...ムン政府、関係改善に乗り出す」)」より一部抜粋


「疎外」というより「孤立」の方が合っているような気がします。日本語だと疎外「された」と、受動態になることが多く、誰かに仲間はずれにされたような印象が含まれてしまいますから。でもクアッドにしろ環太平洋パートナーシップ(CPTPP)にしろ、韓国が北や中国の顔色を見て自主的に参加を見送ったわけで、別に除け者にされたわけではありません。

バイデン新政権がオバマさん時代の「戦略的忍耐」=事実上「無視」に戻られると日本も困ります。
こちらは日本からも米国に他人事じゃないという強い危機感を持ってもらえるよう働きかけていかないとダメでしょうね。