米国務省、人権報告書で対北ビラ禁止法に言及した話

国務省北朝鮮の人権報告書を出し、組織的な人権蹂躙を批判しました。
米韓の「2+2」会議では、冒頭発言で「北の人権問題」に言及していながら共同声明では触れられませんでしたけれども、国務省の人権報告書でこの件が取り上げられるのは毎年のことで取り立てて珍しいことでもありません。

しかし、同じく出された韓国の人権報告書内では対北ビラ禁止法と韓国統一部が行った複数の北の人権関連団体に対する監査について触れているそうです。この二つはセットで考えた方が良さそうです。


VOAの記事からです。

国務省人権報告書「北韓の組織的人権蹂躙、コロナ統制で住民生活が悪化」...対北ビラ問題にも言及


(前略)

米国務性は「2020北韓人権報告書」で北韓の人権蹂躙の実態を厳しく批判しました。

VOAが確保した報告書によると、国務省北韓が様々な人権問題を抱えているとし、強制失踪と拷問、恣意的拘禁、政治犯収容所、非独立的な司法省、私生活侵害、強制労働など23の人権蹂躙の実態を指摘しました。
特に北韓政権の人権蹂躙が組織的に行われているという点に注目しました。

今回の報告書は2019年の状況を記した昨年の報告書と、内容面においては大きな違いはありませんでした。
ただ、新型コロナウィルス事態後、北韓の国境閉鎖措置が人権問題に及ぼす影響についての部分が追加されました。

(中略)

また、国連北韓人権状況特別報告者の10月の報告書を基に、新型コロナウィルス貿易措置により、外交官や国際機関などが北韓内での活動を続けることが不可能になり、これにより北韓の人権状況に関して得られる情報が減少している点も問題として指摘しました。

(中略)

その他報告書は具体的な人権蹂躙についても説明しています。
例えば、北韓政権または要員が恣意的で不法な殺人を犯したという報告があり、政府レベルの捜査制度は設けられていないという指摘です。

また、一般住民の場合、国境を超えて捕まった場合、現場で射殺されるか公に処刑され、政治犯収容所の看守は脱走を試みる収容者を射殺するよう命令されるという内容が含まれています。

更に、韓国に定着した脱北者が中国国境地域を訪問し、北韓によって拉致されるケースや、北韓に拉致された韓国軍捕虜、日本人拉致被害者問題なども取り上げました。
報告書は韓国の非政府機構の資料を引用し、朝鮮戦争後、2万人の民間人が北韓によって拉致され、このうち一部は死亡したと伝えました。

(中略)

このような中、国務省は韓国の人権状況を盛り込んだ報告書に脱北者の対北韓人権活動についての内容を盛り込み、注目を集めました。
国務省は「2020韓国人権報告書」で一部の人権団体は韓国政府が北韓に焦点を当て、一部の非政府組織の活動を制限したと発表しました。

それとともに、韓国統一部が昨年7月、北韓に向けてビラを散布する脱北者主導の二つの非政府組織である「自由北韓運動連合」と「クンセム」の設立を取り消したことも報告書に盛り込まれています。

報告書は25の北韓人権関連団体が統一部の監査を受けたという内容に言及し、統一部は日常的な手続きだと説明した一方、一部では北韓人権活動団体に対する抑圧と見ていると紹介しました。
国務省のポーター主席報道官は同日、電話会見で北韓と韓国の人権報告書に関するVOAの質問に、北韓への情報流入の重要性を強調しました。

(後略)

VOA「미 국무부 인권보고서 "북한 조직적 인권유린, 코로나 통제로 주민 삶 악화"…대북전단 문제도 언급(米国務省人権報告書「北韓の組織的人権蹂躙、コロナ統制で住民生活が悪化」...対北ビラ問題にも言及)」より一部抜粋


VOAは米議会から出資を受けている国営放送です。
基本的に米国の戦略的利益のための放送であり、それは対応している言語を見れば分かるかと思いますが、主に「民主化」を必要としている国・地域向けとなっています。

ですから本来、「韓国語」対応は韓国向けではなく北朝鮮向けなのですけれど、(特に)最近の北朝鮮絡みのものは韓国へのメッセージも多分に含まれていそうです。
「北の人権問題」という議題においては韓国は「北の共犯者」と判断されている可能性もあります。