福島原発処理水の海洋放流についての日韓協議体の話

福島原発の処理水海洋放流について、日韓で協議体が検討されているそうです。
韓国外交部はIAEAの検証とは別に独自に韓国の立場などを伝えるために協議体が必要、という認識を示しています。また、日本は周辺国への情報提供に積極的に応じる、という立場ですから情報共有の手段としての役割も期待されているようです。


韓国日報の記事からです。原文がすべて「汚染水(오염수)」となっているのでそのまま訳していますが、これは「処理水」のことです。

福島汚染水「容認不可」と言うけれど、韓日協議体が検討されている背景は


韓国と日本政府が日本福島第一原子力発電所の汚染水放流問題を話し合うための二国間協議体の設置を推進している。放流関連情報を得るチャンネルとして活用するという計画だが、事実上、日本の放流を前提にしているという点で 「容認不可」という政府の立場から一歩後退したのではないかという指摘が出ている。

14日、外交部の当局者によると、韓日両国は原発からの汚染水を海洋放流する過程での法的要件や検証体系、具体的な方法や危険要素を巡る情報交換のための協議体の新設を推進している。

(中略)

しかし、放流関連情報共有のための協議体は、日本の汚染水の海洋放流を既成事実化する側面がある。これに対し、日本政府の放流決定を防ぐ実行的な代案作りもなく、国民感情を意識して「反対」の立場だけを強調したのではないか、という指摘も出ている。

(後略)

韓国日報「후쿠시마 오염수 "용납 불가"라더니 한일협의체 검토하는 배경은(福島汚染水「容認不可」と言うけれど、韓日協議体が検討されている背景は)」より一部抜粋


反対のための反対だったのはその通りなんでしょうけど、この記事も「一度容認できないと言ったのになぜ協議するのか、けしからん」と言いたいのでしょうから似たりよったりというか...「反対」以外認めないってことですよね?

個人的には協議体の設立自体は前向きな話として歓迎したいです。
韓国自身も月城(ウォルソン)原発*1から多量のトリチウムを含む「水」を、日本の放流計画より高濃度で日本海側に放流しています。これは韓国の原子力安全委員会が公表しているデータなので間違いありません。

こうした部分を指摘されて困るのは韓国です。国内は反日感情を刺激することで抑えられるかもしれませんが、国際的には通じません。どこかに無難な落とし所が欲しいのは韓国の方でしょう。

とは言え、日本も妙な気遣いをせずに話が上手くまとまった暁には「韓国は散々騒いだけれど、協議体を通じて日本の真摯な態度と努力、情報開示と意思決定過程の透明性を高く評価し、ついに問題がないと納得した」と、国際社会への宣伝にフル活用してやりましょう。

*1:韓国で唯一の重水炉型の原発。重水炉は軽水炉(福島第一)よりトリチウムの排出量が多くなる。