徴用訴訟却下に対する韓国主要メディアの反応の話

日本企業16社を相手取った徴用訴訟が7日、却下されました。本当は10日に宣告されるはずだったのですが、なぜか前倒しされました。

今回は2018年の最高裁判決とは真逆で、徴用に関する賠償は日韓請求権協定に含まれるという判断です。ただし一審です。

この件について韓国主要メディアがどのように報じたかがまとめられていました。


メディア今日の記事からです。

強制徴用損害賠償不認定判決にハンギョレ「荒唐」朝鮮日報「必然」


7日に、日帝強占期に日本企業が「韓国労働者たちを強制動員」したという損害賠償訴訟で被害者の請求権を認められないという判断が出た。一審の裁判所判決だが、これは2018年に日本企業側に損害賠償責任があるとした最高裁の全員合議体の判決を覆したものだ。

この判決に関し、ソウル新聞は1面の記事の上段に「いったいどこの国の裁判所ですか」と書いた。 〜(中略)〜 ハンギョレは今回の判決が荒唐無稽な論理を繰り広げていると批判し、社説でも上級審で正さなければならないと書いた。

しかし今回の判決が予見されており、非常に解決が難しい事案だとして外交的解決策を模索すべきだという意見もあった。韓国日報と中央日報は外交的解決策を模索しなければならないと社説を書いた。

(中略)

主要日刊紙はこれに関する記事の大半を1面に掲載した。以下は強制動員裁判所の判決に関する主要日刊紙の記事が配置された面とそのタイトルだ。
京郷新聞8面「徴用被害者損害賠償請求『却下』...最高裁判例を覆した下級審」
国民日報1面「徴用被害者に事実上敗訴判決を下した韓国の裁判所」
東亜日報10面「『強制徴用被害、日本企業に責任問うことはできない』...3年前に最高裁とは正反対の判決」
ソウル新聞1面「最高裁の判決覆された...裁判所『強制徴用』損害賠償訴訟却下」
世界日報1面「『徴用損害賠償訴訟』敗訴...最高裁の判決が覆された」
朝鮮日報1面「徴用被害者たち一審で敗訴...キム・ヨンス最高裁判決、一審はいちいち反駁」
中央日報1面「徴用賠償、大法院判決は覆された」
ハンギョレ1面「裁判所、強制労働訴訟却下『米・日の関係毀損』荒唐無稽な理由」
韓国日報1面「慰安婦に続き食い違う強制徴用の判決...最高裁と正反対の結論」

ソウル中央地裁民事合議34部(部長キム・ヤンホ)はソン某さんら85人が日本製鉄、日産化学、三菱電機など日本企業16社を相手取り「1人当たり1億ウォンの賠償」を求めていた損害賠償請求を却下した。

裁判所は「1965年12月に発効した韓日請求権協定により被害者たちの損害賠償請求権は『完全かつ最終的に解決された請求権』に該当するとみるべきだ」とし「韓国民が日本、または日本国民に対して持つ個人請求権は請求権協定によってただちに消滅したり放棄されたとは言えないが、訴訟でこれを行使することは制限されている」と判断した。

裁判所は「請求権協定文言を正確に解釈しなければならない」とし「韓日協定当時、請求権対象に『徴用された韓国人の未収金、補償金など請求権』も確かに含まれており、両国もこれを認識した」と述べた。続いて「憲法上の国家安全保障と秩序維持、公共福利のために国内法的には法律地位にある条約に該当する請求権協定によって訴訟提起権限が制限されるべきだ」と判断した。

(中略)

ハンギョレは1面記事の見出しを「裁判所、日帝強制労働訴訟却下『日米関係毀損』という荒唐無稽な理由」とし「裁判部は日本との関係悪化は韓米同盟をも毀損するという非法理的判断まで出し批判が起きている」とし「裁判部は原告が勝訴して強制執行が行われれば日本との関係が損なわれ、『結局、韓米同盟で韓国の安保と直結したアメリカ合衆国との関係毀損に繋がる可能性がある』と主張した。これに対し民主社会のための弁護士会などは声明で『非常識的かつ非合理的判断だ』と批判した」と書いている。

(中略)

ハンギョレは社説で「最高裁判例を無視し、『荒唐無稽な論理』の強制徴用判決」でも「2018年に日本企業の賠償責任を認めた大法院全員合議体の判決と真っ向から反する上、荒唐無稽な論理で継ぎ接ぎされた異例の判決だ」と批判した。

続いて「法理的側面から見て今回の判決は大法院全員合議体の判決当時の少数意見の二番煎じ」とし「大法院がわずか3年前に確立した法理を下級審が新しくもない論理として否定したわけだ。これは法的混乱を起こし被害者の権利救済を遅延させるだけだ」と主張した。この社説は「司法部がこのように強制徴用被害者を何度も傷付け、再び法廷で挫折を抱かせるとはひどい仕打ち」とし「今回の判決は上級審で速やかに正されるべきだ」と伝えた。

(中略)

韓国日報の1面は「今回の判決は過去2018年10月大法院全員合議体が強制徴用関連で日本企業に対する損害賠償訴訟の再上告審で『原告勝訴』の判断を下したこととは真っ向から反する」とし「法曹界では『事実上、予告された判決』という分析も出ている」と伝えた。
その理由に韓国日報は「裁判長であるキム・ヤンホ部長判事は『日本軍慰安婦被害者らに対する日本政府の賠償責任』を認めた前人の裁判所判決(今年1月)を巡ってこの3月末に『国際法違反の可能性があり、日本政府から訴訟費用を回収できない』と判断を出したことがある」、「また今年4月21日、同じ裁判所の民事合意15部(部長ミン・ソンチョル)の『慰安婦被害者2次訴訟』却下の決定と脈をともにするもの」と書いた。

(中略)

一方、朝鮮日報の場合、この判決は「必然的」だとして、むしろ以前の大法院判決を批判した。

(中略)

本紙は社説で「前例のない司法混乱、選挙用の反日狩りの必然的な結果」でも「前例のない司法混乱だ。過去史を政治的に利用してきたムン・ジェイン政府と超法規的な判決をしたキム・ミョンス司法部の責任」と書いた。続いて「当時の少数意見に従った。当時の判決に問題があったと裁判所が自ら認めたものだ」とし「ムン政権はこれまで『最高裁の判決を尊重する』として問題を放置してきた。韓日外交のために与党側の国会議長まで政治的解決策を提示したが、徹底して無視した」と政府を批判した。

(中略)

続いて「みなを敗北者にしている。今回の判決は国民感情に従ったからといって、国際法を無視すれば国際社会の支持を得られないのはもちろん、韓国司法部内ですら同意を得ることができないという事実を示している」と伝えた。

このような朝鮮日報の論調は中央日報とも違った。中央日報は同日付の社説「食い違った強制徴用判決...外交的妥協により解決しなければならない」で「原告団が控訴して再び大法院の最終結論が下されるまでどれほど時間が掛かるか分からない。一つ明らかなことは司法の判断だけを待つことはできないという点」とし「政府は今からでも賢明な解決策を作り、日本との協議を経て外交的解決に積極的に乗り出さなければならない」と述べた。

(後略)

メディア今日「강제징용 손배 불인정 판결에 한겨레 "황당" 조선일보 "필연적"(強制徴用損害賠償不認定判決にハンギョレ「荒唐」朝鮮日報「必然」)」より


模範解答のような一審判決です。どうしちゃったんでしょう?

しかし、忘れてはならないのはこれが一審だということです。上級審でひっくり返される可能性は十分にあるでしょう。

また、韓国日報や中央日報の主張する「外交的解決努力」ですがコレこそが日韓請求権協定だったわけですから、生半可な解決策の提示では駄目です。蒸し返す余地がないことをきっちりガッチリ確認出来る形であることが大事です。