北朝鮮、対北敵視政策撤回として米韓軍事演習の「永久中断」を要求した話

ムンさんが国連総会の基調演説で「終戦宣言」に言及した後、北朝鮮は相次いで2つの談話を発表しました。(くわしくはこちら

特に後からキム・ヨジョンさんが発表した内容は、韓国が「対北敵視政策と不公平な二重基準の撤回を用意すれば南北関係の回復と発展のための議論を行う用意がある」というような内容で、一部のメディアは「2018年のような電撃的な南北首脳会談が開かれるかも」と、騒いでいました。キム・ヨジョンさんが提示している前提条件(対北敵視政策と二重基準撤回)を考えればそれほど簡単な話では無さそうなのに。

そして本日、北朝鮮弾道ミサイルと思われる飛翔体を日本海に向けて発射しました。その数時間後、国連総会の一般演説で米韓軍事演習の「永久中断」を要求しました。今まで「対北敵視政策の撤回」としていたものに具体的に言及し、これを対話の前提条件の一つにしたということです。

ソウル新聞の記事からです。

北「韓米合同軍事演習の絵旧中断」主張...最初の一歩から難関


北韓が28日午前6時40分、未詳発射体を東海岸に発射した後、数時間後に米ニューヨークでキム・ソン国連駐在北韓大使が国連総会の一般討議演説を行った。キム大使の口から北韓米朝間対話に応じる条件として出たのは、これまでと同じく「米国の敵視政策廃止」だった。しかし今回は、韓米連合演習と米軍の戦略資産投入の永久中断という2つの条件を具体的に明示した。


(中略)


キム大使は27日(現地時間)、米ニューヨーク国連本部で開かれた第76回国連総会一般討議演説で「米国が本当に平和と和解を望むなら、合同軍事演習と戦略兵器投入を永久中止することから対朝鮮敵対政策放棄の第一歩を踏み出さなければならない」と明らかにした。


韓米合同演習と戦略兵器投入の永久中断を「第一歩」と表現したことから、北韓は今後、対北制裁の緩和や北韓人権に関する主張を追加で出す可能性がある。ただ、北韓が具体的な対話条件を初めて明示したという点で、対話参加の意志をほのめかしたのではないか、という分析もある。


(中略)


キム大使はこの日の演説で、米長間の葛藤の原因を「米国の対朝鮮敵対政策」とし「米政府は敵対的な意志が無いという立場を、言葉ではなく実践と行動で示さなければならない」と述べた。また「朝鮮に対する二重基準を撤回する勇断を見せれば喜んで応える用意ができている」とし「米国政府が軍事同盟のような冷戦の遺物で私たちを脅かすのは本当につまらない」としながら警告も忘れなかった。


(中略)


しかし韓米合同軍事演習の永久中断は韓米両国が事実上受け入れがたい。特に米国は「対話のための誘引策はない」という原則も堅持している。すなわち、米朝間で非核化対話が再開される可能性は今の所高くない、という分析が概ねである。


(後略)


ソウル新聞「北 ‘한미연합훈련 영구중단’ 주장… 첫걸음부터 난관(北「韓米合同軍事演習の絵旧中断」主張...最初の一歩から難関)」より一部抜粋

記事の全体的な趣旨としては「米朝会談実現の可能性は低い」です。

とはいえ、記事の途中で言及されている「対話参加の意志をほのめかしたのではないか、という分析もある」との希望的観測も紹介されており、まあ、韓国政府はこちらの立場を取るだろうな、と思われます。

しかし、相手が絶対に飲まないと分かっている条件を提示して「対話参加の意志をほのめかした」とするのには無理があるような気がします。

最初に無理な条件を提示して、徐々に条件を引き下げることで「妥協した」風を見せて相手から好条件を引き出す、というのが交渉術でしょう。

ムンさんの最大の政策優先順位は南北関係の改善と韓半島の平和増進ですから、そのためには何としても北朝鮮に対話の場に出てきてもらわなければならないわけで、ここが譲れない最低ラインになります。完全に不利ですよね。