【バンダーさん】「対日本訴訟に勝ったって? 事実は損害甚だしい」の話

昨日、韓国大統領候補2候補(イ・ジェミョンさん、ユン・ソクヨルさん)の政策担当者へのインタビューの中で、イさん陣営の担当者が日韓関係が今のような状況になった決定的な契機は「2019年8月、日本の韓国輸出規制とホワイトリスト除外」との認識を示す箇所がありました。
これを読んだ時、本当に「そう思っている」のか、それとも「そう思わなくてはいけない」のか、どちらだろう?と少し考えました。
いずれにしても「2019年8月」以降(あるいは時点)と併合期のことだけを結びつけて日本と話し合おうという姿勢なのであれば上手くいかないのではないか、そんな気がします。

今日はそれ(日韓関係の悪化の地点)と少し関連のある記事で、イさん陣営が契機と考える2019年より2年前の2017年8月8日に投稿された日韓関係のさらなる悪化を予想するコラムです。

 



趙甲濟ドットコムよりバンダービルドさんのコラムから「対日本訴訟に勝ったって? 事実は損害甚だしい」です。

 

対日本訴訟に勝ったって? 事実は損害甚だしい

当該日本企業が判決通り素直に賠償をしてくれれば幸いであるが、その可能性は高くない。結局、さらなる日韓関係の悪化だけが予想される状況だ。


8日*1、マスコミは一斉に<裁判所、「戦犯企業三菱、徴用被害者に1億2千の賠償」判決>のタイトルで一部の韓国人が提起した日本企業を相手取った訴訟の結果を報じた。一言で言うと今回の判決は1965年の日韓請求権協定に反した判決である。このような日本企業相手の訴訟は韓国で現在14件が進行中だ。
もし今回の判決が最終、最高裁まで確定すれば当該日本企業が素直に韓国裁判所の決定に従わない場合、理論上韓国内の当該日本企業の資産(財産)は差し押さえ手続きに突入することになる。

最近数年間、日本の韓国への直接投資が急激に縮小している原因の中で最も大きいのはこのようなやり方の訴訟のためだ。ずっとこのままだと最悪の場合、既に以前に韓国に進出している日本企業さえ本国に撤退する可能性を排除できない。撤退まではいかなくとも当該企業の追加対韓国投資はこれ以上期待できなくなる。

よく理解できないのは相手が日本であれば、ありふれた公訴時効もないということか?
尚、1944年に女学生として14歳で徴用(勤労挺身隊)され、1年も勤務していないようだが、今日の貨幣価値で1億ウォン以上の判決が出るのは妥当なのか?
さらに理解できないのは韓国ではすでにこれら(訴訟提起者)を含めた当時の該当者全体を対象に正式に受け付けを行い<国務総理傘下対日抗争期強制動員被害者調査及び国外強制動員被害者等支援会>という非常に長い名称の機構(制度)により補償を完了したことである。もちろん、このような制度があったというを知らず、これまで補償を受けられなかった人が一部にいるかもしれない。

いずれにせよ韓国政府は2010年に<対日抗争期強制動員被害者調査及び国外強制動員犠牲者支援特別法>というものを作り、1938年4月1日から1945年8月15日までの7年間、勤労したすべての韓国人に対する金銭的支援を完了した。
この期間中に勤労で死亡または行方不明になった場合、犠牲者1人当たり2000万ウォンが支給され、負傷した場合は程度によって最大2000万ウォンが支給された。老齢期や障害などで治療が必要な場合、年80万ウォンの範囲で支給されるなどの補償があった。尚、徴用された人に当時支給されていた給与(賃金)のうち、その当時さまざまな事情により支給が行われなかった部分がある場合、これを立証する資料(未収金供託金記録)を日本政府から提出を受け、当時の未収金1円を今日の2000ウォンに換算して支給した。

このような韓国政府の活動は事実上、1965年の韓日政府レベルの請求権協定に基づくものと見てほぼ差し支えない。それでは最近、日本企業を相手取って訴訟を広げる行為は事実上「過剰(重複)対応」と見る余地が大きい。もし当該日本企業が判決通り素直に賠償をしてくれれば幸いであるが、その可能性は高くない。結局、さらなる日韓関係の悪化だけが予想される状況だ。いずれにせよ当該日本企業が素直に賠償をしてくれるか否かに関わらず、このような訴訟を通じて既に韓国が国レベルで被った有形無形の損失は非常に莫大である。これ以上、貪小失大してはいけない。


参照1)韓国経済新聞、2016年10月4日付の社説

<<今年の外国人直接投資(FDI)が史上最大を記録しているという嬉しいニュースだ。
ただし日本からの投資(FDI)急減は痛恨のところだ。ヨーロッパ連合EU)、米国、中国など世界中から投資が流入しているのに対し、日本のFDIは4年目の下落傾向にある。
歴史問題を巡る政治的葛藤がついに経済交流の足を引っ張ってしまった様相を呈している。2012年、李明博大統領が独島を電撃訪問して天皇*2の謝罪を要求して醸成された緊張は今も続いている。ここに最高裁判所がいわゆる「戦犯企業」に強制徴用に対する損害賠償を命じ、日本企業のFDIは急減した。日本企業の国内財産差し押さえ可能性の問題は致命的だった。
両国間の政治的緊張は韓国資産の日本投資にも悪影響を及ぼしている。
我々の企業の日本企業買収が日本政府の反対で失敗するなどの被害事例が相次いでいる。生半可な民族感情や浅はかな政治術氏の排除は欠かせない。いつまでも「過去史」に埋もれているわけにはいかない。韓日関係改善が急がれる。>>

参照2)直近10年の日本の対韓投資実績

2007年 - 8.2億ドル
2008年 - 13.3億ドル
2009年 - 7.8億ドル
2010年 - 14.3億ドル
2011年 - 14.6億ドル
2012年 - 38.4億ドル
2013年 - 28.9億ドル
2014年 - 21.2億ドル
2015年 - 12.3億ドル
2016年 - 8.1億ドル



趙甲濟ドットコム「對日소송 이겼다고? 사실은 손해 막심이다(対日本訴訟に勝ったって? 事実は損害甚だしい)」より一部抜粋

李明博さんの竹島訪問は2012年ですから直接投資額だけを見ると影響はありません。日本企業は「政治問題は経済問題に発展させない」という約束を信用していたのでしょう。
ところが、最高裁判決の出た2017年の翌年に急減したということは信頼が揺らいだんでしょうね。

 

以下に2017年以降の日本の対韓直接投資(申告ベース)を補完しておきます。ソースは韓国作業通商資源部の公表データです。

2017年 - 18.4億ドル
2018年 - 8.7億ドル
2019年 - 14.3億ドル
2020年 - 7.2億ドル
2021年 - 12.1億ドル

2012年〜14年の3年間がズバ抜けて多かっただけで適正水準に戻った、とも取れます。

*1:2017年8月8日

*2:原文「일왕(日王)」