イ・ジェミョン「基軸通貨国に編入される可能性」発言に「その基軸通貨じゃない」とのツッコミが殺到する話

イ・ジェミョンさんが韓国ウォンは基軸通貨になる可能性が高い、とTV討論会で発言しそこそこの議論になっています。
流れとしては国家負債の話から出てきた発言です。
基軸通貨国でもない限り国家負債比率がGDPの50〜60%を越えると厳しくなる」、「韓国はすぐに基軸通貨国になる可能性が非常に高い。それだけ経済水準が高い」とし、国債発行力に余力があることを匂わせたわけです。

しかし、ごく一部の擁護派を除いて殆どのメディア、専門家が「それは違う」との見解を示しました。イ・ジェミョンさんの言う「基軸通貨」はその「基軸通貨」ではない、と。

 



ニュース1の記事からです。

イ「基軸通貨国になる」発言に...専門家たち「いつかは可能な話」


イ・ジェミョン共に民主党大統領候補の「基軸通貨国」発言をめぐり政界の攻防が加熱している。民主党全国経済人連合会(全経連)の資料を根拠に基軸通貨編入の可能性を提起したという意見であり、野党は経済知識が足りないとして攻勢を続けている。

こうした現象は「基軸通貨国」に対する基準点が大きく異なることに起因する。イ候補と民主党は国際通貨機構(IMF)の特別引き出し権(SDR)通貨バスケットに含まれることを基軸通貨国の根拠にしている反面、野党と大多数の専門家はSDR編入基軸通貨国になるということを別個に見るべきと指摘する。

イ候補は21日に開かれた20代大統領選挙TV討論でアン・チョルス国民の力候補が「基軸通貨国と非基軸通貨国の違いを知っているか」と尋ねると「当然知っている。われわれも基軸通貨国に編入される可能性が非常に高いといわれるほど経済体力はしっかりしている」と答えた。

(中略)

基軸通貨は国際間決済や金融取引の基本となる通貨だ。米ドルのように通貨信頼性が高く、流通量が充分なケースだ。基軸通貨を発行する基軸通貨国は国家負債が多くても発券力を動員できるが、基軸通貨国でなければ多くの国家負債に耐え切れず危機に直面しかねない。

基軸通貨」を区分する明確な基準はない。通常、通貨発効国の軍事力と外交的影響力が高くなければならず、国家信用度と物価も安定的な水準が求められる。世界的に「安全資産」と見なして国際取引が活発に行われてこそ多数の国債を発行しても大きな危機に見舞われることがないからだ。
そのような意味で大半の専門家らはウォンが基軸通貨の地位を持つのは遠いと口を揃えている。

民主党選対委員広報団はイ候補の発言について「基軸通貨国に編入される可能性は全国経済人連合会が13日に配布した報道資料を引用したもの」と明らかにした。全経連は該当資料で韓国経済の存在感や輸出規模の条件、外国為替市場でのウォン取り引きの割合の持続的な増加などを根拠にSDR通貨バスケットへの組み込みを推進すべきだと主張した。

SDRは基軸通貨に対する交換券で必要に応じて加盟国間協約に基づきSDRバスケットの5通貨(米ドル、ユーロ、人民元、日本円、英国ポンド)と交換が可能だ。

(中略)

しかしSDR通貨バスケットに組み込まれることを「基軸通貨」と理解するには無理があるという意見だ。なによりウォンの国債決済比重が現在20位にも達していないため記事クツカとして機能できない水準という指摘だ。
該当資料を作成した全経連関係者も「全経連資料で言及した基軸通貨と、イ候補が言った基軸通貨の意味は脈略上全く違う」と述べた。

この関係者は「基軸通貨に対する意味は様々だが、狭く見ればドルのみ認めるべきだという声もあり、広く見ればドル、ユーロ、円まで含まれるという声もある」とし「そのうちSDR編入基軸通貨と見る見方もあるが、これは名目上の基軸通貨に近い意味だ」と述べた。

彼は「最近、韓国経済の財政健全性の問題が続き、通貨危機に見舞われる可能性があるという指摘が相次いだ」とし「こうした状況でSDRに組み込めば海外の韓国経済に対する見方が改善され、地位が上がる可能性があるため積極的に推進すべきだという意見だった」と説明した。

イ候補は依然として国債発行と拡張財政のための余力があるという根拠で「基軸通貨国」に言及したが、いざイ候補が引用した全経連は正反対の論理でSDR編入を主張したのだ。



ニュース1「李 "기축통화국 된다" 발언에…전문가들 "먼훗날 가능한 얘기"(イ「基軸通貨国になる」発言に...専門家たち「いつかは可能な話」)」より一部抜粋

基軸通貨国と非基軸通貨国の違いを尋ねられたイ・ジェミョンさんはその違いを説明するのではなく「当然知っている」とし、「基軸通貨国に編入される可能性が高いほど経済体力はしっかりしている」との見解を示したわけですが、これはSDR通貨バスケットと基軸通貨の違いを「知らない」と白状したようなものです。

記事中でも説明されているように、厳密な意味での基軸通貨(ハードカレンシー)は「米ドル」のみです。為替通貨は米ドルに対しての価値で計算できるようになっています。(例えば、ドル円=115円、ユーロドル=1.1300なら、115×1.1300でユーロ円=129.95円。ここに手数料を加味して銀行や両替所のレートが出される)

広義の意味での基軸通貨(ハードカレンシー)は国際決済として使えるか、という部分になります。これは米ドル以外での決済に双方が同意することで成立します。そのためには充分な国際流通量が必要です。
そうでないと交換が出来ないからです。「いつでもどこでも必要な時に安定的な価値で交換が可能」、この要件をウォンが満たす必要があります。ウォンが使われているのは0.2%くらいですから現状では難しいでしょうね。

イさんの主張は真逆と言っていますけれど全経連も大概です。SDR通貨バスケットに編入されれば韓国経済のイメージアップ、とか考えていたわけですから。

ソース記事には無いのですが、この時(TV討論会)アン・チョルスさんが「韓国も基軸通貨国になれる可能性はあるが、今現在はそうじゃない。財政運営は慎重で保守的であるべき」と言ったそうです。基軸通貨国じゃないのに基軸通貨国になる前提での皮算用は危険ということです。一番最もですね。