VOAによる韓国次期政権への提言(安保)の話

昨日の記事に関連して、VOAが韓国の次期政権に向けた提言です。
主に安保に関する内容となっており、日米韓3カ国協調についても言及されているため間接・直接共に日本にも関係してくる内容でしょう。

 



VOAの記事からです。

[韓国20代大統領選挙特集]2.韓国次期政府に伝えるワシントン専門家の提言...「韓国は包括的同盟の役割を担当すべき」


(前略)

バイデン政府に入り米韓同盟の重要性が韓半島を越え国際的に拡大している中、ワシントンでは次期韓国政府の役割に期待が集まっています。
米韓同盟は伝統的に北韓問題に焦点を合わせてきたが、ロシアと中国が強圧的行動に出ている状況で民主主義の国際秩序守護において同盟である韓国の役割がより重要になっているのです。

(中略)

米国のこのような期待にもかかわらず韓国政府は先月24日、ロシアがウクライナに突然侵攻した際に直ちに米国主導の国際制裁に積極的に参加しなかったことは誤りだと、エバンズ·リビア元国務副次官補(東アジア太平洋担当)は指摘しました。
リビア前副次官補が1日、VOAとの電話インタビューで、「当初、韓国政府高官らはこれは彼らの問題ではなく、介入すれば韓国とロシアの関係にプラスにならないという見解を示そうとした」とし「それは非常に大きな間違いだった」と述べました。

(中略)

韓国外交部と大統領府は先月24日、ロシアのウクライナ侵攻と関連して「独自の制裁を考慮していない」とし「国際社会の制裁に参加すること自体にも大きな意味がある」と明らかにしました。
その後、28日にロシアへの戦略物資の輸出遮断、1日にロシア銀行との取引中止、国際金融通信網(SWIFT)排除などの金融制裁を発表しました。

(中略)

ロシアのウクライナ侵攻後、米国の民主主義の国際秩序守護の意志が一層明確に表れる中で、インド太平洋地域の懸案においても韓国の立場が期待されていると専門家たちは指摘します。
文在寅政府は米中間の「戦略的曖昧性」を追求し「安美経中」つまり「安保は米国、経済は中国」という戦略を立てました。

イ·スヒョク駐米韓国大使は「韓国は米国と中国の間で選択を強要されている国ではなく、自ら選択できる国だ」と述べました。

ヘリテージ財団のブルース·クリンナー先任研究員はVOAに、米国は韓国に中国と米国の間で選択を強要しているのではなく、民主主義国家にふさわしい行動をしろということだと述べました。
クリンナー研究員は「われわれが浮き彫りにしようとしているのは、韓国が民主主義国家であり、自由民主主義と自由市場秩序、人権、法治主義の原則を信じるならば、中国、ロシア、北韓などがそのような価値を攻撃した場合、報復を甘受してでも立ち向かわなければならないということだ」と主張しました。

(中略)

続いて「韓国は中国の強圧的行動、最近ではロシアの強圧的行動に対し傍観者的立場を取った」と指摘しました。
専門家たちは韓国が中国と米国の間で戦略的曖昧性を取る背景に、中国の経済報復など強圧外交があると分析しています。

(中略)

ブルース·ベネットランド研究所の研究員は「次期韓国政府は、中国の経済的影響力から脱するために努力しなければならない」と指摘しました。

(中略)

続いて「韓国政府が対中脆弱性を減らそうとしなかった点は驚くべきだ」とし、中国との貿易量を減らし、韓国企業の中国進出を勧奨しないなどの措置を提案しました。

(中略)

ワシントンでは次期韓国政府は米国との協力に集中しなければならないという指摘も出ています。文在寅政府が、対北韓政策で米国政府との足並みが乱れていたことを憂慮するためです。
米国の北韓問題に対する優先順位は非核化ですが、文在寅大統領は南北和解と韓半島平和の定着に焦点を合わせてきたということです。

(中略)

スナイダー局長は「同盟関係で一方が自国の利益を非常に狭く規定し、相手を排除する場合、同盟に困難が生じる」と指摘しました。

(中略)

スナイダー局長はまた「バイデン政府が次期韓国政府と日本政府から、韓日両国間の異見を解決するための相互間の強力な努力を見てほしい」と述べました。
バイデン政府が発足当初から「日米韓三角協力」を強調してきた中で、先月発表したインド・太平洋戦略でも「日米協力の拡大」が具体的な行動計画の一つに挙げられています。
スナイダー局長は、バイデン政府が米·韓·日の三角調整を北東アジアの「安保設計」の重要な要素と考えていると述べました。

(中略)

一方、国家安全保障会議北韓担当局長を務めたアンソニー·ルジエロ民主主義守護財団上級研究員は「次期韓国政府は、北韓に対して制裁解除を推進してはならない」と指摘しました。
ルジエロ研究員は「北韓は交渉初期に恩恵を受けた後、約束を守らず希望する時点まで相応の行動を遅らせることを我々は過去に見た」と指摘しました。

(中略)

また文在寅政府高官らが繰り返し開城工業団地再開と金剛山観光推進に言及したのに対しルジエロ研究員は「国連制裁違反」とし「次期政府は北韓が禁止されたプログラムに使える硬貨を調達するのではなく他のアプローチを取るべきだ」と述べました。



VOA「[한국 20대 대선 특집] 2. 한국 차기 정부에 전하는 워싱턴 전문가 제언…“한국, 포괄적 동맹 역할 담당해야”([韓国20代大統領選挙特集]2.韓国次期政府に伝えるワシントン専門家の提言...「韓国は包括的同盟の役割を担当すべき)」」より一部抜粋

韓国が米中との間で「戦略的曖昧性」を維持するのは米中ともに依存しているからであり、特に中国には経済依存をしているためです。
それは前々から指摘されているので今更、と思われるかもしれませんが、しかし前提として韓国は「自由民主主義陣営」の国家です。にも関わらず、中国への経済依存を減らす選択(発想)が出てこないは不思議です。
それどころか同じ「自由民主主義陣営」の日本への素材・設備依存が高いことを問題視して「国産化」の必要性を主張しているのが韓国社会です。本当に不思議です。

 

余談ですが、記事内でウクライナ事態に対する韓国の対応への言及がありましたので付け加えておきますと、2日にウクライナのアンドリー・エールマック大統領秘書官がニューヨークタイムズ寄せた寄稿文で各国からの支援に対する感謝を伝えました。(こちら※要ログイン or 要無料アカウント作成)
中には米・欧州各国・オーストラリア・日本の国名は確認できます。(「We are thankful to our American and European friends, to democracies worldwide including Australia and Japan, ...」:我々は感謝しています、米国と欧州の友人、豪州と日本を含む世界中の民主主義国家 ...)
韓国はありません。「世界中の民主主義国家」に入っていると言えば入っていますけれど、積極的でなければ、初動を誤れば、制裁参加による不利益を同じように被るのに感謝されない、というなんともショッパイ思いをしなくてはいけなくなります。
確か、湾岸戦争の時の日本がそんな感じなんでしたっけ?何もそんなところまで日本をベンチマークしなくても良いでしょうに。