代表団が総理に会えたのは...「日本がユン次期大統領の当選を喜んでいるから」 vs 「賠償問題で韓国が日本の主張を受け入れたから」という話

岸田さんが韓国の政策協議代表団と会いましたが、岸田さんが話した内容としては今までの日本の立場と変わりがありません。
実際の所「会いたいと言うなら会います。門戸は開いています」以外の意味があったとは個人的に思えません。

韓国メディアの報道を見ていても、なんか錯綜している感じです。
一部メディアでは「日本の雰囲気が変わった」「ユン次期大統領の当選を喜んでいる『ホンネ』が出た」というように、今後の日韓関係において日本側が積極的に問題解決に動いてくるだろうとする内容が報じられていたり、ユンさんの大統領就任式典の招待状を「渡した」と断言するような内容まであります。
大統領就任式典への招待状は出席国側が出席の意思を伝えてから準備されるもので、その前に韓国側から招待状を送ることは無いそうです。(韓国が招待国と非招待国を線引きしていては外交上摩擦が生じますからね)

しかし、別のメディアでは政策協議代表団が日韓の懸案事項について「立場を示さなかった」ことから「日本内でこれに対する懸念の声が出ている」と比較的慎重な見方を報じている記事もあります。

 



同じメディアから全く違う視点の記事を2本紹介します。
まずは「日本はユン次期大統領の当選を喜んでいる」という見方の韓国日報の記事からです。

ムン政府駐日大使には会わなかったのに...ユン当選後にガラリと変わった日本


「当選を歓迎する。心からお祝いの言葉を申し上げたい」
韓国大統領選でユン・ソクヨル候補の当選が確定した直後の3月10日、岸田文雄総理が記者団に言った言葉だ。「おめでとう」という儀礼的なあいさつを超え「歓迎する」とまで言ったことについて、ユン候補の当選を待ちわびていた「本音」が思わず出てきたのではないかという推測があった。

ユン次期大統領が派遣し、今月24日に日本を訪問した「韓日政策協議代表団」の日程を見ると、日本政府の「歓待」の意思がはっきり顕れている。代表団は訪問翌日、林芳正外相と面談はもちろん晩餐会まで行い、岸信夫防衛長官、萩生田光一経済産業長官ら内閣主要官僚に会った。27日には岸田総理に会って親書を手渡した。

(中略)

25日、日韓議員連盟と朝食会を開き、知韓派の二階俊博自民党幹事長に会った。26日には日本政界に影響力の大きい森喜朗元総理と面談した。帰国する前まで安倍晋三菅義偉ら元総理や茂木敏充自民党幹事長(元外相)らと会うという話も聞こえる。政財界の実力者と内閣が総出で訪日代表団を歓迎しているのだ。

(中略※ムン政権下で着任したカン・チャンイル駐日大使は総理にも外相にも会えなかった状況と対比し)

一方、ユン次期大統領は候補時代、積極的な韓日関係改善の意思を明らかにし、選挙キャンプ内に知日派の人物も居て日本政府側も期待が大きかったと見られる。

(中略)

26日、代表団との面談で岸田総理が「韓日関係改善はこれ上待つことは出来ない」と述べただけに、日本政府もこれまで阻止してきた対話窓口を開くものと見られる。ただ、来月10日のユン次期大統領の就任式に岸田総理が出席するかどうかについてはまだ慎重な見方が多い。岸田内閣も「徴用・日本軍慰安婦訴訟に対する解決策を出せ」という立場を固守してきたからだ。

(後略)



「文정부 주일대사는 안 만나주더니… 尹 당선 후 싹 바뀐 일본(ムン政府駐日大使には会わなかったのに...ユン当選後にガラリと変わった日本)」より一部抜粋

記事中、安倍さんと菅さんにだけ個別に「元総理・前総理」などの敬称が付いていないのは原文ママです。韓国メディアってこういう細かい所での欠礼・冷遇を意図的にやります。



 

 

次は同じ韓国日報の記事ですが、別のラジオニュースをソースにした慎重派の視点です。
前の記事で「日本はユン次期大統領の当選を喜んでいる」「日韓関係改善に動き出す」との見通しでしたが、韓国日報もさすがに何か引っかかるものを感じているのかもしれません。
例えば、総理が代表団に会ったことが対話の窓口を開けるための「譲歩」であったのなら、韓国側も何か「譲歩」を求められる、あるいはすでに求められたのではないか...みたいな。

「岸田会談が可能だったのは賠償問題で日本の認識を受け入れたため」


(前略)

イ・ヨンチェ日本恵泉女学園大学教授は27日、TBSラジオ「キム・オジュンのニュース工場」とのインタビューで「現在、政策代表団が強制徴用賠償などに対する認識が日本と一致し、日本の主張が受け入れられる部分が確認されたため岸田総理とも会ったと見なければならない」と述べた。強制徴用賠償は1965年の韓日請求権協定によって、慰安婦問題は2015年の合意によって全て解決されたというのが日本の一貫した立場だ。

イ教授はまた「日本が今回の代表団をどのように利用しているのか、世論を通じてどのように実質的に岸田政権に有利な方向性を作っているのか、大きな視点で見る必要がある」と述べた。

そのような点で、7月の参議院選挙を控えている日本政府がこの会談を外交成果として打ち出すだろうと見通した。また、新型コロナウィルス感染症(コロナ19)以降中断していた「金浦 - 羽田」路線の再開、隔離・ビザ免除を復元するという話が出たのも「日本の立場では大きな経済的効果がある」と述べた。

しかし、貿易制裁を解除するなど、それ以上の緩和策は出てこないと見ている。「強制徴用賠償判決と繋がる項目であり、強硬派の世論もあるため韓国が具体的な案を与えない限り解除するのは容易ではないだろう」という見通しだ。

同様に「慰安婦問題や強制徴用賠償問題について、韓国政府が責任を持って推進できるのか、または国内世論を統制できるのか確信が無いため今回の面談を慎重に見つめる日本国内の世論の方が多い」とイ教授は答えた。



「"기시다 회담 가능했던 건 배상 문제 日인식 수용했기 때문"(「岸田会談が可能だったおのは賠償問題で日本の認識を受け入れたため」)」より一部抜粋

外交成果って...会っただけで何も話は進んでいないんですけどね。
慎重に見つめる日本国内の世論はそこも慎重に見ていると思いますよ。
ここでアピール出来ることは外交成果では無く、韓国に対して「弱腰」を警戒されていた岸田政権が「言うことは言える」と証明することくらいじゃないでしょうか?

それでも今回の面談?面会?は「必要がなかった」と考える人の方が多そうな気がするので、選挙を見据えてのことだとしたら逆効果に思えます。