韓国対中貿易赤字、32年ぶり3ヶ月連続という話

候補者時代は威勢のいいことを言っていたユンさん、就任直後こそ安保・経済共に明らかに「米国サイド」をアピールしていましたが、最近は特に経済面で明らかにトーンダウンしています。ともすれば「中国サイド」に舵を切った(出戻った)と見えなくもありません。
8月に韓国外交部長官が訪米したり、韓中国交正常化30周年を迎えたりと韓中関係において注目の外交イベントが待ち構えていますが、それにしても中国を気にする素振りが強いように思えて気になっていました。

で、今日出てきました。韓国の対中貿易赤字が32年ぶり3ヶ月赤字。多分、原因はコレです。
中国の経済が弱含みなのがダイレクトに影響しているというのもあるとは思いますが、チップ4を渋るのもコレが原因でしょう。

 



ソウル経済の記事からです。

中国のお陰で先進国入りした韓国...「大国崛起」にふらふら[ヤン・チョルミンの経済知ったか]


先月、貿易収支が46億9000万ドルの赤字を記録し、4ヶ月連続で貿易赤字更新を続けた。4ヶ月連続貿易収支赤字を記録するのは2008年グローバル金融危機当時以来14年ぶりだ。韓国貿易の支えとなっていた対中貿易収支も30年ぶりに3ヶ月連続赤字を記録した。グローバル景気減速への懸念の拡散や石油などのエネルギー価格の高騰を受け、今年の年間基準の貿易赤字を記録することも確実視される。過去30年間、中国という「巨人」の背に乗り先進国入りを果たした韓国経済が「チャイナ崛起」で先進国の入り口で滑りかねないという懸念が高まっている。

●14年ぶりの年基準貿易赤字は避けられない
産業通商資源部(資源部)は先月、貿易収支が46億6900万ドルを記録し、今年の累積貿易赤字規模が150億ドルに迫ると発表した。このような貿易赤字の原因として石油などエネルギー価格の急騰が第一に挙げられる。先月の原油・ガス・石炭輸入額は185億ドルで前年同期(90億ドル)比で2倍以上急騰した。これを受け、先月の全体輸入は653億6900万ドルで前年同期比21.8%増えた。

中国の都市封鎖の影響に伴う輸出減少で、対中国貿易赤字が続いている点も赤字規模を拡大する。韓国は今年5月、中国との貿易で約28年ぶりに貿易赤字を記録して以来、約30年ぶりに3ヶ月連続で貿易赤字が続いている。対中貿易で3ヶ月連続貿易赤字を記録したのは32年ぶりのことだ。この3ヶ月間、中国への累積貿易赤字規模だけで28億7000万ドルに達する。

先月の輸出は21ヶ月増加傾向を続け善戦したという評価が出ているが、随所で「赤信号」が感知される。韓国経済輸出の柱となっている半導体輸出増加率は2.1%で、2020年6月(-0.03%)以来25ヶ月ぶりに最も低い増加率を記録した。対中輸出増加率も先月2.5%下落し、2ヶ月連続マイナスを記録した。

(中略)

1日、産業通商資源部(資源部)が公開した対中国品目別輸出実績を見ると、貿易収支の悪化基調を覆すことは容易ではなさそうだ。
先月、対中国半導体輸出額は前年同期比10.9%増の39億5000万ドルを記録したが、半導体も安心できない状況だ。中国のメモリ半導体輸入額は2018年に1232億ドルから昨年1225億どるに減り、同期間メモリ半導体輸出入に伴う貿易収支赤字幅も792億ドルから463億ドルに減らした。それだけ半導体を自国内で調達しているという意味だ。

(中略)

一方、対中輸入規模は1年前に比べて急増した。対中半導体の輸入額が前年同期比25.1%増えたのをはじめ、一般機械(14.4%)、コンピュータ(6.4%)、繊維(25.6%)など中間財と完成品を問わず輸入が増加した。

中国の成長率下落で中国向け輸出規模がさらにジェル可能性もあるという展望も提起されている。先月の対中国輸出増加率はマイナス2.5%で1年前に比べて後退し4月(マイナス3.4%)と6月(マイナス0.8%)にもマイナスを記録した。今年第2四半期の中国経済成長率は0.4%に過ぎないうえ韓国銀行は中国の今年の年間経済成長率が3%半ばにとどまるだろうという報告書を出した。ここに「インド・太平洋経済フレームワーク(IPEF)」および「チップ4同盟」発足などで韓中貿易に地政学的リスクまで加わり、解決策探しはより一層難しくなっている。

専門家らは「脱中国」が現実的に容易ではないだけに、より細かい対策が必要だと口をそろえる。

(中略)

韓国開発院(KDI)国際政策大学院のイ・シウク教授は「対中交易問題は引き続き話が出てきたが、政府としても特に解決策を立てるのは容易ではない」とし「中国の輸出がうまくいってこそ韓国も輸出が増えるなど、韓中間の経済構造が密接につながっているという点を認め、関連対策を樹立しなければならない」と明らかにした。

(中略)

欧州連合EU)商工会議所の今年第2四半期の調査結果によると、欧州企業の23%が中国内の投資計画を取り消したり延期する予定だ。中国の経済成長率がますます低くなるうえ、米国とEUが友好国を中心にサプライチェーンを再編しており、中国投資断行時に地政学的リスクまで考慮しなければならないなど、危険性が高くなったためだ。

中国で工場を運営している韓国企業が感じる不安はEU企業以上だ。全国経済人連合会が昨年末に公開した調査結果によると、中国で事業を運営する韓国企業のうち86%が投資環境が10年前に比べて悪化したと評価した。彼らは「政府リスク(38.1%)」と「国内外企業間の差別(20.5%)」など中国政府の一方的産業政策の他に「米中貿易紛争深化(18.2%)」を投資環境悪化の理由に挙げた。

このような状況変化に歩調を合わせ韓国企業の中国事業撤退も相次いでいる。サムスンSDIは昨年、中国バッテリー工場2ヶ所を閉鎖し、LG電子も昨年、中国内工場2ヶ所の稼働を停止した。国内企業は米国投資を増やす方式で「脱中国」に力を入れている様子だ。

(中略)

反面、韓中企業間の協業分野は多いうえに既存投資設備などを勘案すれば「脱中国」政策の限界が明確だという指摘も出ている。サムスン電子とSKハイニックスは中国内でそれぞれ大規模なNAND型フラッシュ工場とDラム工場を運営している。イ・ジェス全経連アジア太平洋協力チーム長は「現地の話を聞いてみると、中国投資を検討した事業者も最近、米国や東南アジアなどに目を向けている」とし「ただ、中国が共産主義国家であるだけに、工場撤退の際、既存の投資資産をすべて持ち出すのは容易ではないという話も出てくるなど、関連リスクも相当なだけに中国内の事業再編は容易ではないだろう」と明らかにした。



ソウル経済「中 덕분에 선진국 문턱 다다른 韓.. '대국굴기'에 휘청[양철민의 경알못](中国のお陰で先進国入りした韓国...「大国崛起」にふらふら[ヤン・チョルミンの経済知ったか])」より一部抜粋

ちょっとクドい書かれ方ですけど、要するに「対中リスクを考えると追加投資、新規進出は二の足を踏んでいるけれども、すでに事業進出している企業はそう簡単には撤退できない」ということです。中国から撤退が難しいという問題は、数年間に日本でも散々報じられましたね。

先月、対中輸出で一番減少幅が大きかったのはディスプレイです。前年同期比で34.1%しており、昨年の世界シェアの41.5%は中国で、すでに韓国(33.2%)を抜いています。
他にも石油化学の輸出は前年同期比14.1%減少しているとのことで、まあ、石油化学半導体の対中輸出減少は中国自身の経済状態の影響かもしれませんが、対中輸出に依存している韓国経済には打撃が大きいです。
他国の経済政策には手が出せませんから一国への輸出依存がいかに危険かよくわかります。



コメント数は現時点で987件。反応は「おすすめ:65 いいね:49 感動:21 怒り:1702 悲しい:33」です。

「政権80日目のユンの業績。
 国家経済を30年前に戻す奇跡」(共感1238 非共感64)

「対中嫌悪をそそのかして...我が国の保守は保守ではない。マスコミに振り回される馬鹿な犬豚に過ぎない。ぼんやりと自分の茶碗がどこから出てくるか知らずに殴りつける」(共感699 非共感51)

「これからが始まりだ..反中すれば米国が助けてくれるのか?話にならない..ロシアのエネルギー1位の輸入国が中国なのに..いつまでイデオロギーで分けるのか..」(共感587 非共感51)

大韓民国の重大な岐路で大統領にユンを選択してしまった国民。本当に心配だ」(共感336 非共感44)

「中国の鼻息に韓国経済が揺らいでいる。
 それなのに保守たちは米国だけを望んでいる。
 昔、鄧小平が『黒猫、白猫』ネズミさえしっかり捕ればいい、と言った。
 現代では経済的な利益を得ることができれば、どんな国でも私たちの友人であり友邦である。
 どうか米国だけを見つめる視線を正そう」(共感357 非共感72)
 
「実にもどかしい記者とそのマスコミの見方だ。『おかげさまで』とは、取引はお互いに必要に応じて行うものであることも知らずに」(共感259 非共感6)

「中国のせいで韓国が先進国になったの?...韓国のせいで中国が経済大国になったんだ」(共感225 非共感46)

「中国人の官営記者が文を書いたようだね。『ソウル経済』というマスコミを前面に出して韓国国民の自尊心に傷をつけようとするのか」(共感218 非共感34)

データを提示されても情緒(口)に合わないものは条件反射的に吐き出して噛み付く、そんな反応が多い印象です。

ところで、「黒猫/白猫」が許されるのは中新興国だけだと思います。先進国には... まあ、猫なら白でも黒でも良いですけど... 自分が売る製品が「どう使われるのか」、自分が買う製品が「どう作られたのか」...ここまで含めて「利益」と考える視線が必要かと思います。とても難しいですけどね。