「現金化=請求権協定違反」という「現金化マジック」に惑わされるな、という主張の話

徴用訴訟の差し押さえ資産現金化へのGoがまだ出ていない状態ですが、韓国メディアのオピニオンに「日本の『現金化マジック』は『神話』であり『プロパガンダ』である。問題の原点は現金化ではなく最高裁判所判決だ。覆せない」との主張がありましたのでご紹介します。

 



韓国日報の記事からです。

日本発「現金化マジック」から脱しなければならない


韓日葛藤の火種である徴用「現金化」が大詰めを迎えている。8月19日、最高裁は三菱が特許権特別現金化命令に従わずに提起した再抗告事件で「審理不続行」可否を判断しなかった。もちろん、これは現金化という時限爆弾の除去を意味するものではない。いわば政府に被害者グループとの対話、日本との外交努力で解決を図る時間の猶予を与えたのだ。

(中略)

ムン・ジェイン政府は「竹槍歌」を叫び日本側を圧迫したが後には徴用裁判に伴う強制執行に「困惑する」と告白したりもした。ユン・ソンニョル大統領は日本との関係回復に向けた積極的な歩みに乗り出し過去史問題は普遍的価値と規範の基づいて未来志向的に解決していく方針を明らかにした。

(中略)

これは徴用被害者に対する代位弁済などを通じて最高裁判決趣旨を履行するものの、日本との摩擦を最小化する解決策を講じるという意味に解釈される。

(中略)

しかし被害者グループが要求する日本企業の参加と謝罪は日本政府の態度と世論を考慮すると非常に難しい。日本が要求する韓国政府の決断による徴用問題の国内処理も三権分立国民感情を考慮すると不可能に近いのが現実だ。

徴用問題を原点から考えてみれば、いつの間にか私たちは日本発の「現金化マジック」にかかっているのかもしれない。現金化されれば韓日関係が破綻するというのは「神話」であり「プロパガンダ」であって外交の現実ではない。最高裁判決が下された以上、日本企業の賠償を防ぐ道はない。さらに被害者の同意が得られない限り強制執行の留保にも限度がある。当初から政府が裁判所の判決結果を覆す介入という法治主義韓国では不可能だ。

したがって私たちは「現金化マジック」から果敢に脱し、現金化に備えた緻密な対日外交危機管理プログラムを稼働する必要がある。日本政府には最高裁判決が下された以上、これを覆すことは不可能だという点を納得させ、日本企業に発生した「損失」は基金造成等を通じて「返済」することを約束すればいいだろう。これを機に政府は現金化は決して請求権協定の形骸化ではなく、今後も対日植民地賠償を請求する意志がないことを明らかにして欲しい。徴用被害者問題は国民を守ることができなかったことから始まった問題であるため、政府が国家報勲のレベルで解決していかなければならない課題であり、究極的には特別法を整備して扱っていかなければならない。

日本も現金化=請求権協定違反=報復という「マジック」から抜け出し、徴用裁判の結果を謙虚に受け入れ韓国政府の未来志向的過去史政策に応えることが望ましい。日本がもし報復に乗り出すなら関係悪化の悪循環は必然的であり関係回復に熱心なユン政府の善意に冷水を浴びせる結果を招くだろう。考えてみれば問題の原点は現金化ではなく最高裁判所判決だ。日本企業の立場からみれば海外投資の司法リスク発生であるわけだ。最高裁の判決にも関わらず韓国政府がそれを覆すことが出来たり覆さなければならないとかんがえるなら、韓国の法治主義、民主主義に対する無理解に他ならない。



韓国日報「일본발 '현금화 매직'에서 벗어나야(日本発「現金化マジック」から脱しなければならない)」より一部抜粋

何を言っているかわかりますでしょうか?結果だけを見るなら「韓国最高裁の司法判断に従え」です。
ただ、そこに至るまでの筋道を見ると「日本はとりあえず韓国の司法判断に従い賠償金を支払い、その後、基金などを通じて日本側にそれを補填する」という奇っ怪な論を展開しています。

つまり、このオピニオンの著者が一番重視すべきだと考えている部分は「賠償責任」や「請求権協定で解決済み云々」などの「法的根拠」とも言える中身ではなく「韓国司法判断に日本が従った」という「見た目」だということが分かります。
それを三権分立法治主義や民主主義などのそれらしい単語で包装しているわけですが、そもそも「韓国最高裁が法としての拘束力を持つ国際条約を無視した判決を下している」という部分からは目を背けています。
そこが「現金化マジック」という言葉に集約され「現金化=請求権協定違反というトリックに惑わされてはいけない」というわけです。

しかし結局言っていることは「韓国司法で決まったことなんだから今更覆せない」でしかなく「日本が妥協してこそうまく行く」です。



ポータルではなく韓国日報のサイトにコメントが1件だけ書き込まれていました。

「韓国内で政治的に解決できないなら直ちに現金化すればいい。
 そして韓国自ら韓国で発生した問題を解決するために日本はあらゆる方法で制裁を実施するだろう。
 そうなれば韓日関係は正常な国交を維持できなくなる」

的確過ぎて思わず笑ってしまいました。
日韓基本条約を反故にするということは、国交正常化も反故にするということで、その上に成り立ってきた戦後日韓関係の土台がだるま落としの如く揺さぶられるということを、このオピニオンの著者はもっと真剣に捉えるべきではないか、そんな気がします。