クアルコム、Snapdragon全量をサムスン委託からTSMC委託へ乗り換えるかも、という話

先日、現代グループの会長が訪米していましたが、それに続いて今度はサムスンの副会長であるイ・ジェヨンさんが訪米するそうです。

サムスンテキサス州ファウンドリー工場(第2工場)を建設予定で、約170億ドルの大規模投資が予定されています。この工場建設は当然、米国の半導体支援法の支援を受ける予定と思われます。
半導体支援法では、米国内に半導体関連の工場、研究・開発、新規投資などを進める企業に対して2022~2026年まで527億ドルの財政支援と投資税額の25%の控除を受けられることになっています。
ただし、無条件ではありません。この法案には条項が設けられており、支援を受けた企業は今後10年間、中国(および懸念対象国)への新規投資が制限されることになります。制限というか、支援法による支援を受けておいて中国に投資した企業からは「支援金を回収する」ということのようです。
まあ、米国からの支援金で浮いたお金を中国に投資しようとしているようなもんですからね。

イ・ジェヨンさんの訪米はこの辺りとも無関係ではないでしょう。
他にもチップ4関連の懸案もあるはずです。
韓国半導体(特にメモリー半導体)にとって中国は最大市場です。しかし、チップ4不参加は技術格差をより広げる可能性がありますし、対中リスクからサムスン離れを加速させる恐れがあります。特に最近、クアルコムがSnapdragonの委託生産をサムスンファウンドリーからTSMCに移したのは技術格差のせいともいわれている状況で、このまま行けば「致命傷」との話も出てきています。

 



韓国経済の記事からです。

クアルコムまでTSMCに去るところ」...サムスン、このまま行けば「致命傷」[カン・ギョンジュのITカフェ]


(前略)

10日、業界によると中国情報技術(IT)専門メディアのギズモチャイナは最近、「クアルコムが今後、サムスン電子を離れ全てTSMCに任せることを望むこともあり得る」とし「TSMCが製造を担当したクアルコムのSoC(System on Chip)Snapdragon8 2世代はライバル会社である台湾メディアテックのDimensity9000シリーズを凌駕するだろう」と報じた。

これに先立ち、今年初めに発売されたSnapdragon8 1世代は全量サムスンファウンドリー4ナノ(nm)工程で作られ、該当チップはギャラクシーS22に搭載された。

(中略)

しかしクアルコムはSnapdragon8 1世代の発熱問題で困難を経験し、次のモデルであるSnapdragon8+1世代に続き、11月に発売されるSnapdragon8 2世代もTSMCに委託生産を任せた。

(中略)

クアルコムの物量をライバル会社に奪われる可能性が言及されただけでもサムスンファウンドリーに危機感が高まっているという指摘だ。Snapdragon8シリーズはクアルコムが全社的な力量を結集して作った製品で、これをサムスン電子が受注し、ファウンドリー技術力がTSMCに匹敵するほど成長したという評価を受けたりもした。自然、メディアテックとアップルを4ナノ顧客会社として確保したTSMCクアルコムと蜜月関係を固めたサムスン電子との二強構図が描かれ、サムスン電子TSMCに追いつくのは時間の問題だという希望も芽生えた。

当時、サムスン電子と手を組んだクアルコムの戦略は工程安定性に対する信頼と生産連続性に基づいた収率などを考慮した判断と解釈される。チップ改善バージョンを他のファウンドリーに任せた事例がないという点を考慮すればSnapdragon8改善バージョンもサムスンファウンドリーで量産するものと予想された。しかし現在の雰囲気は予想とは違って流れ、サムスンファウンドリーの安定性と歩留まり問題が再燃する様子だ。

実際、世界的に公信力を認められている電子機器性能測定専門サイト「ギーグベンチ(Geekbench)」でSnapdragon8+1世代を搭載したギャラクシーZフォールド4の点数はシングルコア1312点、マルチコア3996点水準を示した。これはSnapdragon8 1世代が搭載されたギャラクシーS22ウルトラのシングルコア1247点、マルチコア3461点よりはるかに高い点数だ。Snaodragon8+1世代はTSMCの4ナノ、Snapdragon8 1世代はサムスン電子の4ナノ工程で製造された。両製品が基本的に同じ設計基盤であることを勘案すれば、このような結果はサムスン電子TSMCファウンドリー技術力の差による性能格差が再び証明されたという評価だ。

(中略)

ファウンドリーは顧客会社に決まった物量を適時伝達することが最も重要だ。サムスン電子の4ナノ工程は今年上半期に収率が50%にも及ばず、クアルコムに物量を適時に供給できなかったと伝えられた。これがクアルコムの忍耐心の限界に触れたという噂が出ている。

(中略)

ギズモチャイナは「クアルコムはSnapdrqagon8 1世代の発熱および効率性問題以後、ファウンドリーをサムスン電子からTSMCに移転することに決めた」とし「現在、TSMCの4ナノはアップル、クアルコム、メディアテック製品をすべて生産し、明らかな好況を享受している」と伝えた。

(中略)

サムスン電子出身のある業界関係者は「正確な情報公開が難しいファウンドリーで、顧客社名簿は現在の技術力が分かる尺度になる」として「サムスン電子が3ナノで何かを見せることが出来なければTSMCへの偏り現象が加速化する可能性が高い」と話した。



韓国経済「"퀄컴마저 TSMC로 떠날 판"…삼성, 이대로 가면 '치명상' [강경주의 IT카페](「クアルコムまでTSMCに去るところ」...サムスン、このまま行けば「致命傷」[カン・ギョンジュのITカフェ])」より一部抜粋

サムスンは4ナノの収率が50%に満たないとされていますが、TSMCは3ナノの収率80%達成と公表しています。
サムスンの収率の低さについては以前にバンダーさんも「サムスン電子の不振」としてコラムを書いていましたね。

ところで、太字にした部分...「メディアテックとアップルを4ナノ顧客会社として確保したTSMCクアルコムと蜜月関係を固めたサムスン電子との二強構図」...これも一種の二元論なんでしょうね。
ファブレスファウンドリーを「セット」にして二陣営に分けて「敵」「味方」で考えるので、サムスンに生産委託したクアルコムは「サムスンと手を組んだ=ウリ陣営」と判断されるわけですね。
果たしてクアルコムにそんなつもりがあったかは疑問です。