どんどん漢字語が分からなくなる韓国人たちの話

メディアの報道を読んでいて思うことですが、韓国は日本よりも四字熟語をよく使う印象があります。どれだったか、呉善花さんの著作で韓国人は会話の中で日本人より四字熟語を使うという趣旨のことが書かれていましたし、韓国ドラマでもよく出てくるらしいです。それだけ「漢字語」が日常会話の中に染みついているということだと思います。

この「漢字語」が特に若年層を中心に理解できない人が増えているようです。韓国の20代の会社員が会社の社内メールで使われる言葉が分からなくて「会社辞典」で調べたとの体験談の中で紹介されていた単語はすべて漢字語です。
例えば「今日」を意味する「금일(クミル)」という言葉ですが「クmイル」つまり日本語で言うと「今日(こんにち)」に相当する表現です。他にも「작일(チャギル)」は「昨日(さくじつ)」といった具合です。
韓国語では「今日」を表す場合、「오늘(オヌル)」を使います。「昨日」は「어제(オジェ)」です。「금일(こんにち)」や「작일(さくじつ)」を使うのは今やビジネス文書だけだそうです。(これも日帝残滓?)

これもある種の読解力低下(機能的文盲)の一種でしょう。本来漢字表記だったものを無理やり表音表記に変えた弊害です。
なぜなら、もしこの言葉がハングルではなく漢字で書かれていたなら、そして書き手読み手がともに漢字を理解していたのなら、こんな基本単語が分からないなんてことはあり得なかったからです。「今日」を「きょう」と読もうが「こんにち」と読もうが意味は変わらないんですから。

 



ハンギョレの記事からです。

「甚深な謝罪」も難しいのに「弊チーム」とは何?


今年始め中小企業に入社したキム某(28)さんは社内メールのやり取りの途中、不慣れな単語を見て数回検索した。「今日こんにち」が今日を指すということまでは知っていたが、「昨日さくじつ」や「明日みょうにち」はキムさんが初めて見る表現だった。キムさんは「日常的に『昨日きのう』と『明日あす』と各表現を、なぜ必ず会社の中でだけこのように使わなければならないのか理解できないが、新入社員だから上司が使う言葉に従って使っている」と話した。

最近、「甚深な謝罪」という表現を退屈な謝罪と誤解する事例が分解力論難として膨らんだ。しかし一方では昨日さくじつ明日みょうにちのように公共機関などの公文書からも退出した表現を一般企業公文書などに「会社語」として依然として使っており純化が必要だという声も出ている。

(中略)

オンラインでは若年層が不慣れなこのような表現を「会社語」と命名し、新入社員が身につけなければならない常識で「会社語辞典」という文が共有されたりもする。昨日と明日をはじめ、翌日(翌日)、次週(来週)など「時制」と関連した表現は知っておくべき1位表現だ。「送付(送る)」、「留添*1(付ける)」、「払出(出す)」などの漢字語表現もある。留添は分解すると「貼り付けあり」という重複表現で辞書的に「添付」が正しい言葉なのに業務用語としてよく使われる。上申・稟議・起案など会社報告および決済手続きなどと関連した語彙も習得対象だ。口語でよく使う「緊急に」や「早く」の代わりに業務メールなどには「至急に」という単語も新入社員たちは覚えなければならない新しい単語だ。

国立国語院は難しい漢字語を簡単な表現に整えるのが良いと勧告する。ユン・ソクジン忠南大教授(国語国文学)は「明日・昨日などは政府や公共機関でも自己努力で少なくなった表現だが、保守的な会社ほど漢字語表現をそのまま使うことを『文書の格』と勘違いするようだ」とし「(過度な漢字語乱用は)格とは関係ない固定観念なので、日常的な用語で改善する必要がある」と話した。



ハンギョレ「'심심한 사과'도 어려운데 "폐팀이 뭔말?"..난해한 '회사어 사전'(「甚深な謝罪」も難しいのに「弊チーム」とは何?)」より一部抜粋

一応、韓国では28歳で新社会人一年目というのはさほど珍しいことではありません。

「甚深な謝罪」というのは直訳しましたが、日本語だと「真摯な謝罪」と言った方が自然かなという気がしますね。
上申とか稟議とかは、漢字語云々以前に単に学生や子供には必要ない、社会人になってから業務上必要となるある種の専門用語だと思いますがねぇ...。

「弊チーム」という言葉は「弊社」の代わりに使われるそうです。
「弊社(폐사)」という文言の入ったメールを受け取った相手が「廃業(폐업)」と誤解して慌てて未収金を回収しようとしたのだとか。このことがオンラインコミュニティで話題になると「弊社」という言葉を知っているのが常識かどうかで論争にまで発展し、「弊チーム(폐팀)」という謎の言葉が爆誕したらしいです。多分、「弊社チーム」の略で「わが社の担当チーム」みたいな意味で使うんでしょう。

略語や熟語は漢字だからこそ成立するものであって、ハングルで同じようにやるとワケわからなくなると思います。純化させてハングルで書きたいなら長々と冗長に書くしかないでしょう。
ただ、ものすごく難易度は高いと思います。なにせ「弊社」を漢字語を使わずに書こうとするだけで...例えば「私たちの会社」とするのはアウトです、「会社」は漢字語ですから。だからもうここで積みですよね。「会社」の概念を簡潔に表せる韓国固有語があるのでしょうか?

コメント欄には、「むしろ2000年代生まれが漢字語がかっこいいのか、明日みょうにち昨日さくじつのような単語をたくさん使っていた。ww 50代の部長が呆れて今日、明日、昨日に変えろって言っていたけど」と、ちょっと意外なことが書かれていました。ただ、韓国で「2000年代生まれ」ってそれほど多く就職していないはずなので、今後の傾向を見るうえでのサンプルとしては参考にならないかと思います。



*1:直訳。日本語の意味とは違う。