対北政策と対日政策、国家間の合意におけるムン前政権のダブルスタンダートの話

北軍事合意の4周年を記念した討論会があったそうです。確か板門店宣言は4月だったはずです。なんだか中途半端な時期に開催ですね。

それはともかく、そこに寄せられたムンさんの祝辞に「板門店宣言履行」を促し、「信頼は約束の履行から始まる」というような内容が含まれていたそうです。
日本との国家間の約束である日韓慰安婦合意を事実上破棄した「おまいう」状態に、朝鮮日報系列の月刊誌「月刊朝鮮」が突っ込みをいれていましたので紹介します。

とはいえ記事はムン前政権を批判することが目的と思われます。それに日本とのアレやコレを「題材」として使っているに過ぎません。

 



月刊朝鮮の記事からです。

パク・クネ政府の「韓日慰安婦合意」事実上破棄したムン・ジェイン、ユン・ソンニョル政府には「板門店宣言履行せよ」


ムン・ジェイン前大統領は9月19日に開かれる9・19軍事合意4周年記念世討論会の祝辞で「対話が無ければ平和もない。すべての対話の出発点は信頼」とし「信頼は南北間で合意した約束を守ることから始まる」と主張した。

ムン前大統領は自信がキム・ジョンウンと出した平壌共同宣言に対して「反目と対立、敵対の歴史を終わらせるという意志を込めて戦争のない韓半島の始まりを万国に知らせ、南北軍事合意書を付属合意書として採択し、空と地、海のいずれにおいても軍事的危険を画期的に低くする実践的措置を合意した」とし「南と北が初めて非核化法案に合意し非核化に向かう実質的ロードマップを提示した」と強弁した。北韓が核放棄の意思がないことを繰り返し宣言し、最近、核先制攻撃を法制化までした現実に徹底的に背を向けたのだ。

(中略)

ムン前大統領のこのような主張はもう一つの「ネロナンブル*1」に過ぎない。ムン全大統領自身はパク・クネ政権時代の韓日慰安婦合意を破棄したためだ。

ムン・ジェイン前大統領は就任翌日の2017年5月11日、当時の安部総理と初めて電話通話をした。当時の安部総理が「未来志向的な韓日関係構築のための基盤として着実に履行することを期待する」としてパク・クネ政権時代の韓日慰安婦合意を遵守することを注文すると、ムン前大統領は「韓国国民の大多数が情緒的に慰安婦合意を受け入れられないのが現実」と反論した。振り返ってみればこのとき既にムン・ジェイン前大統領は韓日慰安婦合意を覆す可能性を示唆したわけだ。

同年の光復説の祝辞でムン前大統領は「韓日関係の障害は過去史そのものではなく、歴史問題に対する日本政府の認識の浮き沈みにあるため」とし「日本軍慰安婦と強制徴用など韓日間の歴史問題解決には人類の普遍的価値と国民的合意に基づいた被害者の名誉回復と補償、真実究明と再発防止の約束という国際社会の原則がある」と主張した。これは既存の韓日慰安婦合意と関連して新しい基準を提示したものだ。

2017年12月、ムン・ジェイン政権外交部は「韓日慰安婦合意検討タスクフォース(TF)」調査結果というものを発表した。2年前の慰安婦合意は「パク・クネ政権時代、外交部積弊」で断罪された。ムン前大統領はこれと関連し「2015年の韓日両国政府間の慰安婦交渉は手続き的にも内容的にも重大な欠陥があったことが確認された」、「政府間の公式約束という負担にもかかわらず、私は大統領として国民と共にこの合意で井安津問題が解決できないという点を改めて明確に明らかにする」と主張した。

翌1月4日、慰安婦のおばあさんらと会った席でムン・ジェイ前大統領はさらに進んだ。この席で彼は「おばあさんらの意見も聞かずにおばあさんらの意思に反する合意をしたことについて申し訳なく大統領としてお詫び申し上げます。この合意は真実と正義の原則に反するだけでなく政府がおばあさんたちの意見を聞かず一方的にに推進した内容と手続きも誤った」と述べた。

(中略)

同年、新年の記者会見でもムン前大統領は「この政府が要求条件のやり取りをしながら被害者を排除して問題解決を図ろうとしたこと自体が間違ったやり方」とし「日本について慰安婦問題の真実と正義に立脚した解決を促すもの」と主張した。その一方で「既存の合意を破棄して再交渉を要求できるものではない」と付け加えた。

(中略)

韓日慰安婦合意が事実上破棄される渦中だった2018年10月には最高裁の徴用工の判決が出た。ムン・ジェイン政府は「司法部判決」として避けて通ろうとしたが日本はこれを1965年の韓日基本条約と請求権協定(一方締約国及びその国民の財産、権利及び利益について本協定の署名日に他方締約国の管轄下にあることに対する措置と一方締約国及びsの国民に他方締約国及びその国民に対するあたゆる請求権として同一日以前に発生した事由に起因するものに関していかなる主張もできないものとする)を覆すものとみなした。駐日大使を務めた元外務部長官は日本側の関係者と会った席で「韓国はそれでも国と言えるのか?」との言葉を聞いて顔が赤くなったという。

ムン・ジェイン政権はこのようにパク・クネ政権時代の韓日慰安婦合意を事実上破棄し、さらに遡って韓日関係の根幹となる1965年の韓日基本条約と請求権協定を大きく傷つけた。そのムン・ジェイン前大統領が自身が北韓と結んだ合意はユン・ソンニョル政府も遵守しなければならないと強弁しているのだ。

ムン・ジェイン前大統領は慰安婦合意を事実上覆す根拠の一つとして「国民情緒」「国民の同意」を掲げた。ムン・ジェインキム・ジョンウンの9・19軍事同意書も韓国国民の情緒上受け入れがたいものであり、国民の同意を得られななかったのだ。北韓核兵器先制攻撃を法制化した現在、9・19軍事同意は「手続き的にも内容的にも重大な欠陥があった」ことが確認された。ムン・ジェイン政権時代の対北合意の問題点を点検し、指摘し、正すことはユン・ソンニョル大統領の権利であり義務ある。



月刊朝鮮「박근혜 정부의 '한일위안부 합의' 사실상 파기한 문재인, 윤석열 정부에게는 "판문점선언-평양 선언 이행하라"(パク・クネ政府の「韓日慰安婦合意」事実上破棄したムン・ジェイン、ユン・ソンニョル政府には「板門店宣言履行せよ」)」より一部抜粋

ムンさんのダブルスタンダート具合は実によくまとまっていると思います。

ただ、上にも書いたようにこれはあくまでムン政権を批判し、ユン政権の対北政策を擁護するためのものです。その目的で書かれたものなので「国民情緒」や「国民の同意」を根拠にユン政権が「同じこと」をするのは当然だ、という着地になります。
安易に国家間の約束を反故にするべきではなく、すなわち慰安婦合意は履行されるべきで日韓基本条約は尊重されるべきだ、にはなりません。ムン政権の対日外交は間違いだった、にはなりません。

「対日問題」「対日外交」は左でも右でも韓国にとって政権を批判するための「題材」としてこれほど便利なものはないのでしょう。



*1:自分がやればロマンス、他人がやれば不倫。二重規範ダブルスタンダードの意味。