半導体は韓国の輸出のおよそ19%を占める主力製品ですが2ヶ月連続で不振が続いています。
韓国の統計庁が発表した動向調査によると8月の半導体生産量は前月比-14.2%と大きく落ち込んだとのことです。前年同月比だと-1.7%と微減ですが、それでも前年同月比マイナスになるのは4年7か月ぶりとなります。
さらにNANDの先行きも悪く、市況調査会社の見立てだと第4四半期には20%程度の価格下落が起こるかも、とのことです。
DRAMもNANDもメモリ半導体に分類され、サムスンの主力製品です。売り上げの7割がメモリ半導体だというサムスン、こうなってくると厳しいです。システム半導体のシェア拡大を目指して地力を付けるべくM&Aでファブレス(半導体設計会社)の獲得に動き出しています。
ヘラルド経済の記事からです。
「輸出19%を占める」半導体不振に8月の生産0.3%↓、2ヶ月連続減少...装備・投資の反騰
(前略)
統計庁が30日発表した産業活動動向によると、8月の全産業生産(季節調整・農林漁業を除く)指数は117.4(2015年=100)で、前月比0.3%減少した。電産業の生産は5月(0.7%)と6月(0.8%)増加したが、7月(-0.3%)減少に転じ、8月まで2ヶ月連続減少した。製造業生産(-1.6%)をはじめ工業生産が1.8%減少した影響だ。
特に半導体生産の減少幅が大きかった。半導体生産は前月より14.2%減少し、7月(-3.5%)に続き2ヶ月連続で後退した。
(中略)
先月の半導体の輸出は107億8000万ドルで全体(566億7000万ドル)の19%ほどを占めたが、昨年同月より7.8%減少した。これにより26ヶ月ぶりに減少した。
(後略)
ヘラルド経済「‘수출 19%차지’ 반도체 부진에 8월 생산 0.3%↓, 두 달째 감소…소비·투자 반등(「輸出19%を占める」半導体不振に8月の生産0.3%↓、2ヶ月連続減少...装備・投資の反騰)」より一部抜粋
半導体と一言で言っても韓国の主力はメモリ半導体です。世界的な半導体不足は2024年頃まで続くとの予測もありますけれど、DRAMの価格はすでに下がり始めています。特に7月頃から各社の第3四半期市況予測が厳しくなり始めました。
で、実はメモリだけではなく、NAND型フラッシュメモリ(USBメモリとかSSDに使われてるやつ)の雲行きも怪しくなってきています。
ソウル経済の記事からです。
メモリ半導体「悪化の一途」...「四半期のNAND価格は20%下落する可能性もある」[後の祭り]
(前略)
27日、業界によると台湾の市場調査機関トレンドフォースは第4四半期のNAND型フラッシュ価格が第3四半期より平均15~20%下落すると予測した。すでに第3四半期NAND型フラッシュ平均価格が第2四半期より13~18%下落するという観測が出てきた中で、第4四半期にはこれよりさらに沈滞すると見たのだ。データセンター企業がサーバ投資を躊躇う上、景気低迷と物価上昇でスマートフォン、PCなど情報技術(IT)機器に対する需要も急減したというのが下方修正の主な理由だった。特に企業、消費者向けソリッドステートドライブ(SSD)、モバイル向けNAND型フラッシュソリューションなどの価格が第4四半期以降、大きく下がるものと観測された。
トレンドフォースはさらに今年末ごろになれば、主要半導体メーカー各社がNAND型フラッシュ事業で赤字を出し始めるだろうという分析も出した。今年の第2四半期基準で世界のNAND型フラッシュメモリ市場の売り上げシェア1位はサムスン電子(33%)だった。その後をSKハイニックス(19.9%)、日本のキオクシア(15.6%)、米ウェスタンデジタル(13.2%)、米マイクロン(12.6%)などが続いた。
トレンドフォースは「NAND型フラッシュは現在供給過剰状態」として「顧客会社が在庫整理に乗り出し購買活動を大々的に減らし製造会社は価格を下げる状況」と説明した。
最近、業績状況が急速に悪化するメモリ半導体品目は単にNAND型フラッシュだけではない。トレンドフォースはこれに先立ち今月23日にDRAM価格も第4四半期に13~18%下落すると予想した。第3四半期に10~15%下落した後、追加下落するという予想だった。
(後略)
ソウル経済「메모리 반도체 ‘악화일로’…“4분기 낸드값 20% 하락할수도”[뒷북비즈](メモリ半導体「悪化の一途」...「四半期のNAND価格は20%下落する可能性もある」[後の祭り])」より一部抜粋
今でも十分安くなった印象ですが、ちょうどM.2 SSDを増設したいと思っているので更に価格が下がってくれるなら消費者としては嬉しいです。(あ、でも諸般の事情でSamsung製は買いません)
こうしたDRAM とNANDのダブルパンチから「サムスンがソフトバンクからARMを買うのでは?」という話が現実味を帯びてきています。
ソウル経済の記事からです。
非メモリーが急成長するのにメモリー中心の韓国...「偏食が続けば格差は広がる」[後の祭り]
(前略)
25日、市場調査会社のICインサイトは今年第3四半期のTSMCの半導体売上が前四半期より11%増加した202億ドルを記録するものと見通した。一方、サムスン電子の第3四半期の半導体売上は前四半期より19%減少した182億9000万どるになると予想した。この場合、TSMCがこの間のサムスン電子、インテルの二強構図を破り世界半導体売上1位の会社となることになる。サムスン電子とTSMC間の売り上げが同期間であるにも関わらず克明に分かれた最大の理由は主力事業の種類と特性だ。
サムスン電子はDRAM、NANDフラッシュなど、メモリ半導体事業がメインだ。メモリ半導体業界の営業方式は「生産後販売」だ。市場状況が悪化すれば販売量が減り、在庫が急激に増え、売り上げが縮小せざるを得ない構造だ。サムスン電子の半導体(DS)部門の売り上げのうち、メモリの割合は70%以上を占めている。
(中略)
反面、TSMCはチップ委託生産(ファウンドリー)が主要事業だ。チップ設計会社(ファブレス)の注文通り半導体を作ってくれるファウンドリー市場で世界50%以上のシェアを占めた会社だ。
ファウンドリー事業は市場変動の影響をあまり受けない。システム半導体は世界全体の半導体売上規模の50~60%を占める。メモリより製品種類が多様で特定産業の好・不況に偏らず需要が持続している。
(中略)
世界のシステム半導体の成長の勢いとは違い、国内メーカーの産業競争力は相当低迷している。韓国のシステム半導体設計市場のシェアは1%前後に過ぎない上、成長まで低迷している。国内代表半導体企業であるサムスン電子は2019年に「システム半導体2030、1位ビジョン」を掲げ、ファウンドリー事業育成に死活をかけた。ただビジョン宣言後、彼らが受け取った成績表は目を見張るほどの水準とはいえない。会社はこの3年間、シェア20%を突破したことが一度もない。その上、NVIDIA、Intelなどグローバルチップ強者と新規半導体顧客会社がTSMCとの協力を増やす傾向だ。
(中略)
サムスン電子は半導体分野のM&Aでシステム半導体事業の拡大を狙っている。特に世界最大の半導体設計資産(IP)企業である英国のARM買収可否が業界最大の関心事だ。サムスン電子のイ・ジェヨン会長は「来月、ソン・ジョンウィ・ソフトバンク会長にソウルで会えば買収提案をされるだろう」とARM買収の可能性を表した。
(後略)
ソウル経済「비메모리 급성장하는데 메모리 중심 韓…“편식 계속되면 격차 더 벌어져” [뒷북비즈](非メモリーが急成長するのにメモリー中心の韓国...「偏食が続けば格差は広がる」[後の祭り])」より一部抜粋
記事中の「ソン・ジョンウィ・ソフトバンク会長」というのはもちろん孫正義さんのことですよ。原文記事にちゃんと「손정의」と「孫正義」の韓国読みで記載されているので忠実にしておきました。
ARMはイギリスにあるファブレス(半導体設計業者)です。ARMアーキテクチャという規格のライセンスを持っています。クアルコムのSnapdragonやAppleのM1、Nintendo switchに搭載のTegra...これらもARMアーキテクチャを採用しています。古くはdocomoのFomaなどの携帯電話にも搭載されていました。現代社会に生きていてお世話になったことが無い人は居ないはずです。
で、ここを今ソフトバンクグループが持っています。しかし業績不振のソフトバンクはこの虎の子ARMをNVIDIAに売るつもりでした。ところが規制当局により却下されご破算に。
サムスンにとってはチャンスです。ファブレス部門で設計してファウンドリー部門で作れます。自社設計自社製造。
ソフトバンクにとっては渡りに船です。
ただ問題はいくつかあって、まずサムスンがそれほどの金額を出せるのか?ということ。NVIDIAとの買収契約時点で400億ドルとか言われていたような巨大な買収案件です。
これがクリアできれば「契約」まではいくかもしれません。
次にNVIDIAへの買収を却下した規制当局の判断如何です。米国、欧州、英国、中国の規制当局の承認が必要になります。
......あれ?なんか無理ゲーっぽい気配がするのは気のせいでしょうか?