韓国、8月の経常収支が大幅な赤字転落、外貨流動性確保に支障が出る可能性...スワップは?な話

韓国の8月の経常収支が30億5000万ドルの大幅な赤字となりました。さらに財政収支も赤字となっており、経常収支と財政収支の「双子の赤字」状態です。

外国人投資家に配当が支払われる4月以外で経常収支が赤字になるのは2012年1月以来だそうです。
それほど珍しい=異常事態ということで市場へ動揺が広がりやすくなっています。

韓国銀行は9月には黒字化するとの見通しを示しています。しかし、半導体の需要低下で輸出が減り、エネルギー価格は高騰で輸入は嵩んでいる現状、年末までは不安定な状態が続くのではないかとの見通しがあります。あわせて外貨流動性への懸念も示され、またぞろ「スワップ」話が取沙汰されています。
しかし韓国銀行総裁は国政監査の席で米国とのスワップの可能性について聞かれ「米連邦準備制度の決めること」とスワップ待望論をけん制するかのような発言をしました。

 



朝鮮Bizの記事からです。

韓国経済襲った「双子赤字」..「外貨流動性確保に支障が出る可能性もある」


韓国の貿易収支赤字が史上最大に増え、今年8月の経常収支も30億5000万ドルの赤字に転じた。2年4ヶ月ぶり最大の赤字だ。韓国輸出の「柱」の役割を果たしてきた半導体を中心に輸出増加傾向が折れた中でエネルギー価格が跳ね上がり輸入が大幅に増えたためだ。

韓国経済のファンダメンタル(基礎体力)と対外健全性を示す指標である経常収支が赤字を出したのは異例のことが。これまで経常収支は外国人投資家に対する配当が集中する時期である4月を除いては月基準で着実に黒字を記録してきた。

(中略)

韓国銀行が7日発表した「2022年8月国際収支(暫定)」によると、8月の経常収支は前年同月比104億9000万ドル減少した30億ドル5000万ドルの赤字と集計された。4月以降4か月ぶりに赤字転落した。赤字幅も2020年4月(-40億2000万ドル)以後、2年4ヶ月ぶりに最も大きかった。

キム・ヨンファン韓国銀行金融統計部長は8月の経常収支が赤字に転じた背景について「本源所得収支が堅実な黒字を維持したにもかかわらず、商品収支が大幅赤字を見せたうえにサービス収支が赤字転換したことに起因する」と説明した。
特に経常収支の構成要素で最も比重が大きい商品収支(輸出・輸入)は輸出を上回る輸入増加傾向が続き、44億5000万ドルの赤字を記録した。

(中略)

キム・ヨンファン部長は「輸出の場合、対輸出減少とIT景気不振で増加傾向が鈍化した反面、輸入はエネルギー価格が高い水準を継続し、原材料を中心に急増した」と話した。実際、韓国の8月の半導体輸出は7%減少したが、製品生産に必要な半導体輸入は25.4%増え、半導体製造装備輸入も13.4%増加した。

(中略)

韓国銀行調査局はこの日、別途の資料を出し「経常収支は今年8月に異例に大きかった貿易収支赤字(-94億9000万ドル)の影響で赤字を記録した」と明らかにした。それとともに「9月に入って貿易赤字が大きく縮小されたことにより、9月の経常収支は黒字を示す可能性が高い」と見通した。

季節的な要因が反映される4月を除いて経常収支が赤字を出したのは2012年1月が最後であるほど珍しいことであるだけに、韓国銀行が市場の不安感の鎮火に乗り出したものと解釈される。

(中略)

ただ、グローバル景気鈍化、ウクライナ戦争、国際原油価格と天然ガス価格推移などを巡り対外環境の不確実性が高いため、今後の経常収支も月別に変動性が大きい流れが続くだろうと展望した。

(中略)

今回、経常収支が赤字に転じ財政収支と経常収支が同時に赤字となる「双子赤字」が一時的に現実化した。経済学会と市場では「双子赤字」で韓国経済の基礎体力に対する憂慮が高まり、韓国が外貨流動性を確保するのにこんなが生じかねないと見た。米国連邦準備制度Fed)の攻撃的な金利引き上げでドル独走現象「キング・ドル」が持続する状況で経常収支悪化はドル需給不均衡を誘発しウォン安をさらに煽りかねないという指摘も出ている。

ソン・テユン延世大学経済学部教授は「経常収支赤字は韓国が今後、外貨流動性を確保するのに困難が生じかねないということを示している」として「経常収支が9月に黒字を記録するとしても、グローバル景気低迷で貿易収支悪化の流れが持続しているため経常収支も年末まで赤字圧力を受け続けるものと予想される」と話した。

(後略)



朝鮮Biz「韓 경제 덮친 '쌍둥이 적자'.."외화유동성 확보에 차질 있을 수도"(韓国経済襲った「双子赤字」..「外貨流動性確保に支障が出る可能性もある」)」より一部抜粋

今日、韓国銀行は今後も政策金利引き上げを継続していくことと、為替安定のために通貨スワップ再開のための協議を持続するとことを発表しました。

ヘラルド経済は「昨年終了した米国との韓米通貨スワップについてはグローバルレベルのドル流動性動向を注意深くモニタリングしながら韓米通貨スワップ再稼働など必要な措置を取れるよう様々な経路で連携と協議を続けている」と報じています。
ヘラルド経済だけでなく他にも数メディアが「協議を継続していく」と、韓米の協議の中で「通貨スワップは決められる」という雰囲気で報じています。

しかし、これがどうも違うようです。
今日(7日)に行われた国会企画財政員会の国政監査に出席した韓国銀行総裁のイ・チャンヨンさんは韓米通貨スワップについて「米連邦準備制度Fed)が決めること」と話しています。また、為替レートの安定化という意味では必ずしも効果があるとは見難い、とも。
以下にニューデイリーから該当部分のみ引用します。

イ総裁はチョ・ヘジン国民の力議員から韓米通貨スワップの可能性に関する質問を受けて「韓米通貨スワップは結局、米連邦準備制度の選択」とし「基本前提は国際的なドルの流動性萎縮だが、適切な時期がくればさらに深く議論するだろう」と明らかにした。

イ総裁は「通貨スワップが経済主体の心理安定に役立つのは事実だが、米ドル高が持続する為替レートを安定化させる効果が必ずあるとは言い難い」とした。

前提条件が「グローバルなドル不足」である以上、韓国の状況だけを勘案して通貨スワップが結ばれる可能性は低いと思われます。
総裁の発言からは韓国政府やメディアの「スワップさえ結べれば」的な主張との温度差を感じます。