韓国の家計負債のリスク分析、そもそも統計データが不足しているという話

米国が今月も0.75%の利上げを決定し、韓国も追随する可能性が示唆されています。
そうなるとますます各負債への影響が大きくなるのですが、どうも韓国ではリスク分析のための統計データが不足しているようです。
実際に統計庁で世帯負債、給与所得、不動産資産などをもとに世帯負債のリスク分析を行っているのですが、そこで研究員として携わっている人の話によると、給与所得はともかくとして不動産やその他金融資産による収入を含めた全所得データが無いため全体所得の実態が分からない、とのことです。
各メディアが「大変だ」と騒ぐ割に、全体の数字はボンヤリしたまま「個人」の実例の数字だけやたら具体的にフューチャーした記事が多いのはそうした事情だったんですね。
また、ユン政権の経済・金融政策が止まっているように見えるのも、そもそも実態が把握できていないがために対策を講じられる所まで行っていないだけだった、と。間に合うんでしょうか?

 



東亜日報の記事からです。

家計負債の危険、所得の把握無しに管理できない


11月、米国連邦公開市場委員会FOMC)でジェローム・パウエル米連邦準備制度Fed連邦準備制度)議長はインフレ圧力に対応するために基準金利をより積極的に引き上げることを示唆した。米国の金利引き上げ強化基調によって、11月の金融通貨委員会で史上初めて2回連続で基準金利を0.5%ポイント引き上げる可能性が高い。

(中略)

市場の貸出金利は基準金利引き上げの強度とその持続期間に大きな影響を受ける。実際、9月までは都市銀行の年末貸出金利の上段は8%に達すると予想した。しかし金利引き上げ基調が強化されると、年末貸出金利上段は9%に達し、来年には10%水準まで上がるという展望が広がっている。お金を借りた借主にとって未だかつてない速度で金利が上がっている状況だ。

(中略)

脆弱借主の問題はさらに深刻だ。金利が引き上げられるほど脆弱借主らは貸出自体を返済しにくくなり、これに伴い信用不良者になる可能性が高くなる。このような償還不可状態を憂慮した金融界が脆弱借主に対する貸し出しを中断すれば、彼らは結局、超高金利社債市場に押し出されることになる。また、家計から融資を返済するために不動産を売却し始めれば、一触即発の危機にある不動産市場で価格急落を引き起こす恐れがある。これにともなう不動産担保価値の下落および追加的な不良は金融システムの崩壊、ひいては経済危機状況に繋がりかねない。

現在、家計負債は1年の国内総生産とほぼ同じ水準の1900兆ウォンに迫った。特に国内の家計負債は変動金利型貸し出しが70~80%を占めており、家計負債が経済危機を触発する雷管として作用するのではないか、という憂慮が広がっている。家計負債においては不動産担保貸出比重が高く危険が小さいという意見もあるが、価格が急落している現在の不動産市場の状況を見ると安心できない。特に「ヨンクル*1」して住宅を購入した青年層やコロナ期間に困難を経験した自営業者に対する憂慮が深刻だ。

このように家計負債の危険性が日増しに高まっているが、この問題に対する危険性分析は不十分なのが実情だ。現在、38万世帯ほdが非常に危険と推算されるが、これもやはり現時点での断片的な総負債償還比率(DTI)、総負債元利金償還比率(DSR)基準による推算値だ。金利が急激に変化する時点では景気収縮強度別シナリオによる世帯別負債不良危険を測定するストレステストのようなミクロ健全性分析が切実だ。

このような必要性に応じて現在統計庁で世帯負債と勤労所得、不動産保有などを基準に国民全体の世帯負債水準危険性分析を遂行しており、筆者も研究員として研究に参加している。しかし統計庁と関連機関の多くの努力にもかかわらず、機関間の協力の困難、短い標本期間などにより分析遂行に困難がある。最も深刻な問題は総合所得関連資料がないという点だ。特に不動産市場の比重が高い国内資産構造上、不動産賃貸所得やその他の金融資産による所得資料が確保されてこそ、個別世帯の正確な所得の流れを知ることができ、世帯別負債危険性の測定が可能だ。総合所得資料のある国税庁の積極的な協力が必要だ。

(後略)



東亜日報「(家計負債の危険、所得の把握無しに管理できない)」より一部抜粋

たとえ給与所得の半分がローン支払いに消えていたとしても、他に不動産や金融資産を持っていてそこからの収入が別途あるのなら脆弱世帯とは言えない可能性があります。そうした実態の把握には国税庁の持っている納税記録にアクセスできる必要がある、と。
著者の言うことは最もです。しかし、メディアで散々大騒ぎしてますが統計庁という政府機関でも実態の把握が出来ていないどころかそもそも分析に必要なデータが無い状態だというのですから驚きです。

確かにコンスタントにデータが蓄積されていない印象は前からありました。たまに韓国の統計データを覗きに行くんですけど突然統計が取られなくなっている項目があったり、不定期集計だったり、内容が変わっていたりするんですよね。 多分、利用実績が少ないデータを取っておく「意味」が無いから、と適当になるんだと思います。結果を重視(優先)する韓国らしいと言えばらしいでしょうか?



*1:魂を売ってでも借金して