中国にシェアを取られたから日本に負けた(?)話

日本経済新聞は毎年、主要商品・サービスシェア調査を集計し発表しています。日本は56品目中7品目で世界シェア1位を確保しました。これは昨年と同じですが、日経の分析では「いずれも成熟産業で大きな伸びは期待できない」とのこと。「医薬やIT関連の成長分野での存在感は薄い」と厳しい評価となっています。

逆に大きく伸びているのが中国です。15品目で世界シェア1位を獲得し、米国(18品目)と3品目差にまで迫っています。昨年は12品目(中国)と24品目(米国)と2倍の差があったことを考えると逆転するのも時間の問題という気がします。

一方で韓国は中国に奪われる形で逆にシェアを落としています。残ったのは見事に「サムスン」だけです。
今年、韓国と中国は国交正常化30周年を迎えました。韓国はその間、韓中貿易においてずっと黒字でした。しかし今年5月に初めて赤字になって以降、8月まで4ヶ月赤字です。9月に一旦黒字化したものの10月に再び赤字。11月も赤字の可能性が高い状態です。
韓中貿易の韓国赤字を一時的な現象と見る向きもあるのですが、中国が韓国との競合産業で着実にシェアを伸ばしている現状は、韓中貿易構造および韓中製造業の構造そのものが大きく変化した証左のように思えます。

 



韓国経済新聞の記事からです。

韓国、中国に「世界一位品目」奪われたが結局...日本にまた押された[チョン・ヨンヒョの日本産業分析]


世界市場で最も愛される「メイド・イン・コリア」製品がスマートフォン半導体など5つに留まった。日本は7品目で世界1位を輩出した。世界1位の品目保有国の順位が米国と中国、日本、韓国と連なる構図が2年間続いた。韓国は主要市場であるハイテク市場で中国にシェアを奪われており、当分3位奪還は難しい見通しだ。

23日、日本経済新聞が56品目の世界市場占有率を調査し毎年発表する「2021年主要商品・サービス占有調査」で韓国はスマートフォンDRAM有機発光ダイオード(OLED)パネル、NANDフラッシュ半導体、超薄型テレビなど5品目で1位に上がった。5品目ともサムスン電子の製品だ。

日本は自動車、バイク、デジタルカメラ、レーザー複合機、イメージ(CMOS)センサ、携帯電話用リチウムイオンバッテリー、偏光板など7分野で世界1位を維持した。

2020年の調査で韓国は7品目で1位を占め日本と3位タイに上がった。しかし昨年、大型液晶パネル(LGディスプレイ)と造船(現代重工業)で中国のBOEとCSSCに1位を奪われ4位に落ちた。

昨年、日本を抜いて初めて2位に上がった中国は米国との格差をさらに縮めた。米国と中国の世界市場1位品目はそれぞれ18品目と15品目で格差が3品目まで縮まった。70項目を調査した昨年は米国の1位品目が24品目、中国は12品目で2倍の差があった。

中国は電気自動車と車両用バッテリー、リチウムイオンバッテリー用絶縁体などハイテク製品を中心に13品目でシェアを拡大した。56の調査対象のうち、中国企業が上位5位圏に入った品目が32に達した。中国に市場を奪われている韓国が、当分日本に追いつくのは難しいだろうという見方が出ている理由だ。

韓国企業はスマートウォッチ(サムスン電子2位)、タブレット端末機(サムスン電子2位)、大型液晶パネル(LGディスプレー2位)、携帯用リチウムイオン電池(サムスンSDI2位)、イメージセンサーサムスン電子2位)、車両用リチウムイオンバッテリー(LGエネルギーソリューション2位)、偏光板(サムスンSDI3位)で3位以内に入った。

しかし1位の中国や米国企業との格差はますます広がっている。一時、サムスン電子LG電子が世界市場を席巻した洗濯機、家庭用エアコン、冷蔵庫などの家電製品はいずれも中国に市場を奪われ3位にも入らなかった。

(中略)

韓国が1位の5品目も安心できない状況だ。スマートフォン市場でサムスン電子(20.0%)とアップル(17.3%)の格差は2.7%ポイントまで縮まった。ただ、サムスン電子(42.7%)とSKハイニックス(28.6%)のシェア合計が71.3に達するDRAMサムスン電子(60.1%)とLGディスプレー(22.1%)のシェアが82.2%に達するOLEDは1位を堅く守った。

(後略)



韓国経済新聞「한국, 中에 '세계 1위 품목' 뺏기더니 결국…일본에 또 밀렸다 [정영효의 일본산업 분석](韓国、中国に「世界一位品目」奪われたが結局...日本にまた押された[チョン・ヨンヒョの日本産業分析])」より一部抜粋

自称「世界中で最も愛される『メイド・イン・コリア』」だそうですが、結局サムスンしかないなら「メイド・イン・サムスン」の方が適当かと。
一極集中が必ずしも悪いこととは思いませんけれども、そこの頑張り(成果)を産業全体、ひいては国全体の評価得と挿げ替えちゃダメですよね。

一極集中は結局は無理な成長を促すことですから、どこかでその歪を解消しておかないといけないんですけど韓国産業界はそれをせずにここまで来た印象です。
まあ、その余裕が無かったのだろうと思うのですが...。

しかしこの記事でおかしいのは、韓国から市場を奪っているのは「中国」なのに、追いつくのは「日本」としているところです。単純に順位にだけフォーカスすればまず「日本」に追いつくことになるかもしれませんが、韓国がやるべきことは中国から市場を奪い返すことでしょう。ならターゲットは中国でしょうに、こんなところでも「克日」精神。

タイトルにも違和感が出ています。「中国に~奪われたが結局...日本に~」と。
原文に使われている「더니」に「理由→結果」を伝える用法があるためこうなります。つまり記者の中に「中国にシェアを奪われた結果、日本に押された」との思いがあることが分かります。「日本は現状維持で変わっていない。韓国が日本に置いて行かれたわけではない。中国にシェアを奪われただけだ」と、このような思いが込められているんでしょうね。